JFEエンジニアリングの大下元社長(左)、AnyTechの島本佳紀代表。
出典:AnyTech
プラント大手のJFEエンジニアリング(JFEE)は、ディープラーニング技術をベースにカメラのみで水質判定する技術を持つベンチャー、AnyTechと株式譲渡契約を締結。AnyTechを買収し、100%子会社化した。AnyTech関係者が明らかにした。買収金額は非公開。
AnyTechは2015年6月創業。現在の従業員数は約10人。従業員の半分以上がエンジニアで、大学で博士号や修士を取得してディープラーニング・画像認識・異常検知に関する研究経験があるメンバーが集まっている。
香港を拠点とするAIスタートアップに特化したアクセラレーター「Zeroth」やシリコンバレー発の大手アクセラレーター「Plug and Play Japan」など複数の支援プログラムに選抜・採択された経歴をもつ。
AnyTech公式サイトより。
AnyTech創業者の島本佳紀代表によると、事業買収に至った理由として、「AnyTechの持つセンサーを使わずに水質判定をする独自のAI技術に加えて、すでに複数の大手企業への技術提供で収益化もできていたことが評価されたのではないか」と語る。
AnyTechによると、買収後も法人格は残して活動する方針。JFEEグループ内で一定の独立性を保ちつつ、JFEEが展開する水処理やゴミ処理プラント、リサイクル、エネルギー領域といった複数の事業領域でシナジーを発揮していく見込みだ。
水質判定AI「DeepLiquid」の特徴。ディープラーニングをつかった画像認識技術を使い、泡の量、変化のスピードなどから水質の状態を判定する。センサーを使わずに、カメラ映像だけで検知を行う点が特徴。
出典:AnyTech
AnyTech独自の水質判定AI「DeepLiquid」は、従来、センサーによって判定・分析する方法が主流だった水質分析(異常検知)を、カメラ映像(動画・画像)とソフトウェアのみで処理するところに技術的な特徴がある。
AnyTechによると、水処理施設、バイオ医薬品、化粧品、飲料製造工場、自動車関連企業などにすでに技術提供をしているという。
なお、AnyTechは主要取引先として、デンソー、リクルートホールディングス、栗田工業などの名前を自社サイトで公表している。
(文・伊藤有)