なぜ東京を離れると“働く”が変わるのか ── 五島でリモート、が転職・起業につながった

五島

「東京を離れると、“働く”は変わる」のか?

撮影:西山里緒

トーキョー育ち、トーキョー住まい。オフィスは渋谷(……から10分)。

リモートワークも田舎暮らしも興味がなくて、なんなら「働き方改革」という言葉さえ敬遠していた(ツラければ仕事やめればよくない?)。そんな筆者がなぜかこの1年で、2度もリモートワーク実験に参加することになった(編集長の思いつきの企画に付き合わされた、と言ってもよい)。

初回は鎌倉、2度目は長崎・五島。なんだかんだで、そこで会った人とは定期的に連絡を取るようになり、終わってからも遊びに行ったりしているのが自分でも不思議だ。

トーキョーから離れて仕事をすると、結局なにが変わるのか?Business Insider Japanが5月に主催したリモートワーク実験に参加した人に、聞いてみた。

「我慢して当たり前」が変わった

五島

リモートワーク実験がキャリアチェンジのきっかけになったという服部有利子さん。

提供:五島市

机の上でカタカタ仕事するだけのマーケターにはなりたくなかった。お客さんの課題も、絶対にリアルの場にあるじゃないですか」

ひとりめに聞いたのは、ITベンチャーで、バリバリとメディア運営のマネージャー業務を手がけていた服部有利子さん(30)。五島のリモートワーク実験をきっかけに転職を決めたが、リモートワーク実験に参加した当初、自分のキャリアを見つめ直すつもりはまったくなかったと打ち明ける。

そこでたまたま出会った参加者とのつながりが、服部さんを大きく動かすことになる。参加者たちは、ベンチャーで働く人やメディア関係者など、業種も職種も近しい人。「働くことに主体的な人、働く環境をより良くしたい、と強く思っている人が多かった」という。

夜を通して話すうち、自分のキャリアの“モヤモヤ”が言語化できるようになっていった。

今までは、仕事って我慢して当たり前、置かれた環境で結果を出してこそプロだ、って思っていたんです。でも(参加者は)もっと自分らしく、働きがいを生きがいとして働いていた。自分もそれを求めてもいいんじゃないかって」

東京に戻ってきた後、リファラル採用を活用して転職活動を始めようかと考えていた頃、ちょうど良いタイミングで勧められたのが、今の会社「Unipos」だ。

従業員同士が少額の給与と感謝メッセージを送りあえるサービスを展開するスタートアップ。事業内容を聞いて服部さんは「これがまさしくやりたかったことだ」と直感したという。

「東京で仕事をしていると『売り上げを達成する』という目標に振り回されて、自分でもなにをしたかったかを見失いそうでした。リモートワークは、“働く”を通じてどうやって自分の人生を豊かにするかを考える機会になったと思います」

解けない“問い”に気づいた

五島

大自然の中で内省する体験はいまのビジネスパーソンにこそ必要だ、と日高誠人さん。

撮影:西山里緒

五島でキャリアチェンジを決めたのは、服部さんだけではなかった。

「東京だと、やっぱりスケールさせる・儲けることを求められがちじゃないですか」

大手IT企業で採用プランナーとして働く日高誠人さん(42)は5月の五島リモートワークに参加した後、副業で「現地の人が案内する五島ツアー」を主催する団体を仲間と立ち上げた。

きっかけは2018年、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか〜経営における「アート」と「サイエンス」』などの著作で知られる山口周さんを中心とした五島のツアーに参加したこと。

「ツアーで見た夜空がめちゃくちゃ綺麗で……。現地では、集客とかマーケティングの相談も受けていたんです。でも山口さんのツアーに参加したことで、儲かればいいのかなとか、人がすごい増えたら本当に幸せなんだっけ?とか考えてしまって

東京では用意されたビジネス上の“問い”と“正解”。それを簡単には出せないもどかしさが、不思議と心地よかった、と日高さんは振り返る。

“離島の可能性”に大きな衝撃を受けた日高さんはその後、参加者側から運営に回り、五島のツアーを事業化。Business Insider Japanが主催した五島のリモートワーク実験でも「山口周さんと行く“ヒューマニティをみつめる旅”」と題し、ツアーを実施した。

いま日高さんは、そのツアーを企業研修にも応用できないかと考えている。

「よくある研修だったら、チャンチャンで終わり。でも、誰も強制しない、誰も正解を教えないなかで深くまで考える体験ってものすごい。それは、これからの企業や社員にも必要なことじゃないかって思うんです」

地方と東京、両方の課題解決を

五島

「(五島は)ゆるい空気が流れていてメンタルの調子を崩している人にとってすごくいい環境」と佐藤さん。

撮影:西山里緒

東京に“働くこと”の課題があるように地方も、人手不足や高齢化といった大きな課題を抱えている

リモートワークを通じてその課題をどちらも解決しようとしているのが、引きこもり当事者向けの就労支援事業を手がける、佐藤啓さんだ。

佐藤さんは、親戚が引きこもってしまった経験を持つ。さらに自身が事業を運営してきた経験から「引きこもりの方でも、環境さえ整えば力を発揮できる」という確信を持っている、という。

いま取り組んでいるのは、引きこもり当事者に「働くことの選択肢」をなるべく多く伝えること。五島でのリモートワーク実験に参加後に佐藤さんは、引きこもり当事者が数日単位から参加できる「農業体験事業」を五島で展開することを決めた。自治体とも連携し、将来的にはテレワークを通じた雇用の創出も目指す。

「五島も(もう一つの拠点がある)和歌山県田辺市も、ゆるい空気が流れていてメンタルの調子を崩している人にとってすごくいい環境。さらにそういった人たちを受け入れる土壌もある」

五島でのリモートワーク実験をきっかけにキャリアを転換したのは彼らだけではない。

取材した中では、起業・転職・副業などさまざまなやり方で、ゆるやかにキャリアを「広げていく」感覚であたらしい取り組みをはじめている人が多い印象だった。

トーキョーにいれば、そんな選択肢があることすら、見落としがちだ。

リモートワーク実験の本当の価値とは、そんな人たちのネットワークにぽんと入れてしまうことなのかなあ。全国をアクティブに飛び回る彼らのフェイスブックのタイムラインを見ながら、考えていた。

(文・西山里緒)


【締め切り間近。2泊3日からでも】次は紀伊半島でのリモートワーク実験、参加してみませんか?

五島に続いてBusiness Insider Japanのリモートワーク実験第3弾、はじめます。今回は三重県尾鷲市、奈良県下北山村、和歌山県田辺市の3カ所で実施。期間中には、「働く」や「地方」などを考えるイベントも予定しています。

  • A 三重県尾鷲市 11月11日〜11月20日 集合場所:尾鷲駅(JR紀勢本線)予定
  • B 奈良県下北山村 11月19日〜11月28日 集合場所:尾鷲駅(JR紀勢本線)予定
  • C 和歌山県田辺市 11月27日〜12月6日 集合場所:南紀白浜空港予定

ぜひ、関心のある方はお早めにご応募ください。締め切りは10月14日(月)。

詳細とお申し込みはこちらの記事をご覧ください。

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