「飛行機でなく電車移動を」捨て身の呼びかけする航空会社。欧州では「飛び恥」という動きも

「飛行機の代わりに電車で移動することはできませんか」

KLMオランダ航空の“捨て身”の呼びかけが、世界で注目を集めている。同社のCEOは「弱肉強食。絶え間なく前進しないと業界から消えてしまう」と、その覚悟を語った。「飛び恥」という言葉が浸透するヨーロッパで、一体何が起きているのか。

航空会社の100周年広告に世界が驚いた理由

KLM

KLMオランダ航空の「Fly Responsibly(責任ある飛行)」意見広告の1シーン。

出典:KLMオランダ航空YouTubeチャンネル

2019年10月に100周年を迎えるKLMオランダ航空。同社が6月に出した意見広告は、驚くべき内容だった。

世界各国をKLMの飛行機で旅しているかのような場面が次々と映し出されるが、実際はスタジオ内のミニチュアのセットですべて撮影されていることが、ラストで明らかになる。

KLM

出典:KLMオランダ航空YouTubeチャンネル

そして、

「いつも直接顔を合わせて話をすることは必要ですか?」

「飛行機の代わりに電車で移動することはできませんか」

とビデオ通話などを利用した会議や、鉄道での移動など、「飛行機を使わない」よう呼びかけるのだ。

減便、バイオ燃料、すべてを主翼に納めた新機体

Flying-V

開発中の「Flying-V」。客室や貨物室、燃料タンクの全てを主翼に納めた独特の形状だ。

出典:デルフト工科大学ホームページ

これはKLMオランダ航空が次の100年に向かって打ち出した「Fly Responsibly(責任ある飛行)」計画の一貫だ。目的はCO2排出量を削減することで、以下の3つの活動などを進めていく。

1. 高速鉄道という代替案

500キロ以下の路線は、フライト以外の移動方法も視野に入れて路線計画を構築していく。

2020年3月からは、現在週5便を運航しているアムステルダムーブリュッセル間を1便減便し、オランダ最大級の国際空港、アムステルダム・スキポール空港の高速鉄道「タリス」と提携。チケットの購入や乗り継ぎをサポートしていくという。

2. バイオ燃料の利用促進

同社はヨーロッパの航空会社として唯一、大陸間の定期便(ロサンゼルスーアムステルダム間) でバイオ燃料を使用している。路線を拡大するためには「まだまだバイオ燃料が足りない」(同社CEO)として、アメリカ・ロサンゼルスのバイオ燃料プラントに続き、 オランダ国内のバイオ燃料プラントへの投資を決定した。

3. 少ない燃料で飛行できる新機体の導入

燃料効率の高い次世代型長距離旅客機「Flying-V」の研究開発をする国内の工科大学をサポート。同機は客室や貨物室、燃料タンクの全てを主翼に納めるという独特の形状により空気抵抗を少なくし、燃料を通常の2割減らすことができる。飛行は2040年から50年を予定。

次世代のことを第一に考える責任がある

KLM

KLMオランダ航空のピーター・エルバース社長。10月10日の記者会見にて。

撮影:竹下郁子

KLMオランダ航空のピーター・エルバース社長は10月10日に来日し記者会見を開き、路線を縮小して鉄道の利用を推奨するという方針について、覚悟を語った。

「私たちの提案は大胆過ぎるように思えるかもしれません。しかし大企業には将来の世代のことを第一に考える責任があるのです。私たちはすでに顧客1人あたり17%のCO2削減に成功しています。でもこれは十分ではない。

私たちが減便する予定のアムステルダムーブリュッセル間は東京ー大阪間よりも短い距離ですが、鉄道網が十分ではありません。飛行を縮小するためにも、ヨーロッパでの高速鉄道の整備をさらに訴えかけていこうと思っています」(ピーター・エルバース社長)

エールフランス-KLMは2019年ダウ・ジョーンズ持続可能性指標でトップに選ばれている。トップ3に選定されるのは15年連続だ。

スウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥンベリさんがアメリカ・ニューヨークの国連本部で開かれる気候サミットに出席するため、約5000キロを2週間かけて炭素排出量ゼロのヨットで移動したことは大きな話題になった。

ヨーロッパでは環境への影響から、飛行機を利用することは恥だとする「飛び恥(FLYgskam(フリュグスカム)」という言葉も生まれており、飛行機より鉄道を利用しよう、とする動きもある。

国際業界団体の航空輸送アクショングループ(ATAG)の調査によると、航空業界が排出する二酸化炭素量は2017年時点で8億5900万トンと、二酸化炭素排出量全体の約2%を占めていた。

サステナビリティで就職人気企業に

KLM

KLMオランダ航空の「Fly Responsibly(責任ある飛行)」意見広告の1シーン。環境と次世代を守ることなく、次の100年は望めない。

出典:KLMオランダ航空YouTubeチャンネル

「Fly Responsibly(責任ある飛行)」計画を発表して以降、同社には世界中から好意的な反応が来ているという。環境面だけでない「二次的な効果」もあったそうだ。

「若い人と話をすると、就職する企業を選ぶとき、収入と同じくらいサステナビリティを大切にしていると感じます。実際、このプログラムが注目を集めたことで、多くの学生が私たちと共に働きたいと言ってくれました。人材難のヨーロッパにおいて、「Fly Responsibly(責任ある飛行)」計画は採用の面でも効果があったのです」(ピーター・エルバース社長)

航空会社が次の100年も飛び続けるためには、環境と次世代に向けての取り組みが必須だ。他の航空会社の取り組みにも、期待したい。

(文・竹下郁子

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