NBA騒動が突きつける中国の「踏み絵」。日本企業やブランドは中国とどう向き合うか?

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NBAの試合が日本で16年ぶりに開催された。ドリブルを仕掛けるヒューストン・ロケッツのジェームズ・ハーデン。

撮影:大塚淳史

香港デモへの対応を巡り、米プロバスケットボールNBAと中国の間で発生した事態は、改めて中国とどう向き合うかを私たちに突きつけている。特に企業やブランドは、中国の巨大市場においてビジネスをする上での「踏み絵」を迫られることになる。

10月上旬は中国案件トラブルが多発

10月上旬は特に、中国から締め出しを受けたり、怒りを買ったケースが多かった。

・10月2日に中国で放送されたアメリカの人気アニメ「サウスパーク」の内容が、中国の政治犯に対する弾圧を批判。習近平国家主席をくまのプーさんになぞらえるなど、当局を刺激するものだった。7日に中国での放送中止が決まった。

・10月7日、「ティファニー」の広告画像で、モデルの女性の右目を手で覆い隠すポーズが反発を受けた。8月にあった香港デモに参加の女性が、警官の撃ったゴム弾を右目に受けて負傷したことで、一時デモ参加者たちが右目に眼帯をしたり、右目を右手で覆って負傷女性への連帯と香港警察への抗議を示した。広告にはその意図は無かったが、ティファニーは広告画像を削除した。

・10月8日、中国共産党機関紙「人民日報」(電子版)が、iPhone用の香港の地図アプリ「HKmap Live 」を香港デモを支援するアプリだと批判。10日にはAppStoreに表示されなくなってしまった。

・10月11日、アメリカの人気DJであるZEDD(ゼッド)がTwitterで「(前出のアニメ)サウスパークのツイートを『いいね』したら、中国から永久に入国禁止を受けた」と明かした。

ロケッツの年間損失は60億円

こうしたなかでひときわ大きな話題となったのがNBAだった。

10月4日、NBAヒューストン・ロケッツのダリル・モーリーGMが香港デモへの支持をTwitter上で示すと、中国で瞬く間に反発が拡大。中国バスケットボール協会はロケッツとの提携関係の見直しを発表し、中国での配信権を持つIT大手のテンセント(騰訊)は一時、NBAの試合の配信を中止した(14日から再び配信を行っている)。

さらに中国で予定されていたNBA関連イベントや、国営放送でのプレシーズンマッチの放送が中止になるなど、影響が続いた。

NBAは約30年前から中国と関わり始めた。ロケッツで活躍し、現在は中国バスケ協会の会長でもある姚明(ヤオ・ミン)氏がNBA入りした約20年前から、中国市場への投資が本格化している。ロケッツ同様、他のNBA各チームも中国でのビジネスに力を入れている。

今回の事態を受け、NBAの公式スポンサーになっていた中国企業25社中12社がスポンサーの取りやめ、または一時停止を発表。現地メディアの中新網は「ロケッツは年間4億元(現在のレートで約60億円)を損失し、NBAに至ってはさらに多いだろう」と指摘した。

ロケッツのダリルGMは、中国からの反発を受け、当該ツイートを削除。10月7日には「自分のツイートが中国のロケッツファンや友人たちを不快にさせるつもりはなかった」と投稿したが、反発はまだ収まっていない。

NBAトップは表現の自由を保証したが…

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10月8日、NBAのトップであるアダム・シルバーコミッショナーが会見。

撮影:大塚淳史

ちょうどその時期、ロケッツとトロント・ラプターズが、16年ぶりの日本でのNBAプレシーズンマッチ開催のため来日していた。NBAのトップであるアダム・シルバーコミッショナーも来日、10月8日の試合前に臨んだ記者会見では、海外メディアから厳しい質問が飛び交った。

「NBAには、表現の自由をしっかりと擁護してきた長きに渡る伝統がある。彼(ダリルGM)にはそれを行使する権利がある」と毅然と発言したことに、さらに中国側は反発した。会見翌日、上海に渡り、「この件について怒っている」と言われるヤオ・ミン氏(中国バスケットボール協会会長)との会談を行ったようだが、現時点まで詳しい内容は明かされていない。

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10月8日、プレシーズンマッチの終了後の会見に出席した、ヒューストン・ロケッツのジェームズ・ハーデン(左)とラッセル・ウェストブルック。実はウェストブルックはチャイナ服を着ていた。

撮影:大塚淳史

テンセントはNBAの試合を10月14日から配信再開したが、同日の中国外交部の定例会見で、テンセントの動きを支持するかと問われた耿爽(グン・シュアン)報道官は、「我々は各企業の具体的なビジネスに対して評論する立場にはない」と強調、「スポーツ交流は中国とアメリカの友好関係が増す。しかし、交流していく上では相互尊重が重要」と釘を刺している。

一方、せっかくシルバー氏が中国側の激しい反発を受けつつも、「言論の自由の保証」について表明したにも関わらず、10月10日に台無しにすることがあった。

さいたまアリーナでのNBAプレシーズンマッチ終了後の会見で、アメリカCNNの記者が一連の問題について、ロケッツの選手2人に質問しようとしたときのことだ。チーム広報担当が「バスケと関係ない質問をするな」と遮った。結果、言論の不自由さが際立つ結果になってしまった。

このやり取りはすぐに報道されてTwitterでも拡散し、NBAに批判が殺到。NBAはすぐさま、CNN記者に謝罪することとなった。

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10月10日、プレシーズンマッチでプレーするヒューストン・ロケッツのラッセル・ウェストブルック。

撮影:大塚淳史

中国のスポーツマネジメント会社に勤める中国人は、こう指摘する。

「NBAは中国でビジネスをするならば中国の道理に従うべきだ。各国それぞれの政治体制、思想がある。FIFA(国際サッカー連盟)はそれを理解しているから、選手や関係者に政治的な発言に対して厳しく対処している」

スラムダンク作者も標的に

この問題、日本での関心はそれほど高くないが、実は日本の企業や著名人もこれまでに巻き込まれている。日産自動車の中国での合弁会社である東風日産は10月9日、NBAへのスポンサード中止を発表している。

また、アイドルグループAKBの姉妹グループで、上海を拠点にする「AKB48 Team SH」は、10月8日に上海で行われたNBAのプレシーズンマッチに出演予定だったが直前に出演を取りやめている。共に公式声明文の中で中国への支持を表明している。

中国でも大人気のバスケ漫画・アニメ「スラムダンク」も“被害”を受けた。

作者・井上雄彦さんが4カ月前に、Twitter上で河野太郎外相(当時)など香港デモを支持するツイートに対して「いいね」を押していたことが、なぜか10月8日になって中国のSNS上で広がり、大規模ではないものの反発が発生した。

「がっかりした。泣きたい」

「これからは正規版では無く、違法コピー版を読む!」

「好きな漫画は、テニスの王子様に変える」

との声が出ていた。

中国では一度敵視されると、徹底的にたたかれ、市場から排除される。それでも巨大な市場で利益を享受したいと考える海外の企業は多い。

中国とどう折り合いを付けていくのか。中国を刺激しないように、中国の顔色をうかがいながら、忖度していく。こういった企業がますます増えていきそうだ。

(文・大塚淳史)

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