「米中摩擦すら味方につけた」ファーウェイ、1−9月期も市場驚かす好決算

Mate30

ファーウェイが9月に発表した「Mate 30/30 Pro」にはグーグルアプリが搭載されていない。

REUTERS/Michael Dalder

中国IT大手のファーウェイ(華為技術)は16日、2019年1−9月の決算を発表した。売上高は前年同期比24.4%増の6108億元(約9兆4000億円)、純利益率は8.7%だった。7−9月の売上高は2095億元(約3兆2000億円)で、売上高の伸び率は1−6月を上回った。

トランプ政権が米製品の輸出禁止措置などファーウェイ排除を加速させ、米中貿易摩擦が世界経済に影を落とす中、ファーウェイの業績の堅調さが、中国の市場関係者にも驚きを与えている。

海外逆風も中国で独り勝ち

孟晩秋CFO

2018年12月、ファーウェイ創業者の娘でもある孟晩舟副会長兼CFOの逮捕で、米中関係は一気に悪化した。

REUTERS/Lindsey Wasson

ファーウェイは通常、1−9月決算を発表しない。今回は「いじめられてもなお元気」な姿を内外に示すためにあえて発表したともみられている。

米中貿易摩擦のファーウェイへの影響は、任正非CEOをはじめとする同社幹部が「2019年後半から顕在化する」「2019、2020年は冬を迎える」と言及してきた。

事実、ファーウェイが9月に発表したスマートフォン「Mate 30/30 Pro」は規制の影響でグーグルのアプリが搭載されず、中国以外では苦戦必至と見られている。

とはいえ、2019年1−9月のファーウェイのスマホ販売台数は前年同期比26%の1億8500台。ここまででは衰えが見えないどころか、他社のシェアを奪って成長を続けている。

背景には、中国内での“一人勝ち”がある。

市場調査会社のCanalysによると、2019年4−6月期、ファーウェイは中国のスマホマーケットで4割近いシェアを獲得。前年同期は6.5ポイント差だった2位のOPPO(18.3%)を20ポイント引き離した。中国のスマホ市場は9四半期連続で縮小しているにもかかわらず、ファーウェイは出荷台数を31%増やした。Canalysはレポートで、「ファーウェイはアメリカの輸出規制を受け、中国での販売を強化し、国内ライバルからシェアを吸い取っている。米中貿易戦争さえ追い風にしている」と分析した。

スマホだけでなく5Gインフラも中国だけでなくフィリピンやマレーシアなどで契約を締結。新興国、途上国で健闘している。

独自の「ハーモニーOS」は2020年に世界5位に?

リチャード・ユー

「強気の発言」で知られる余承東氏は、独自OSをスマホに搭載することに含みを持たせている。

REUTERS/Michael Dalder

ファーウェイは8月9日、独自のハーモニー(鴻蒙)OSも発表した。同社は独自OSを、「IoTデバイス向け」と説明し、スマホ向けOSとは競争関係にないと強調しているものの、同社コンシューマー事業部の余承東(リチャード・ユー)CEOは9月、「ファーウェイはグーグルとの協業を続けたいが、もしグーグルがサービスを提供してくれないなら、来年(2020年)3月に発売するP40は、ハーモニーOSが搭載された最初のスマホになるかもしれない」と語るなど、挑戦的な態度も見せている。

米調査会社のCounterpointはこのほど、ハーモニーOSのシェア予測を発表。2019年末時点では、中国市場でのシェアも0.1%にとどまると分析したが、2020年末には中国で5%、世界で2%までシェアを広げるとの予測をまとめた。

Counterpointによると、現在のOSのシェアはアンドロイドが39%、Windowsが35%、iOSが13.87%、macOSが5.92%、Linuxが0.77%。ファーウェイが1年後に2%のシェアを獲得すれば、Linuxを抜き世界5位につけることになる。

実際、ファーウェイはハーモニーOSの開発に多額の投資を行っている。開発体制強化に向けて、10億ドルを投じる計画も明らかにしている。ハーモニーOSを使ったアプリの開発者に対して、その経費を負担するほか、アプリから得られる収入の50%から100%を還元するインセンティブなども用意している。

(文・浦上早苗)

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