武蔵小杉の台風被災で注目。タワマンは災害に弱い?知っておくべき6つのこと

タワマン1

武蔵小杉には多くのタワーマンションが立ち並ぶ。

撮影:横山耕太郎

各地に甚大な被害をもたらした台風19号。

住みたい街として人気の川崎市の武蔵小杉では、タワーマンションが停電、断水する被害が発生した。便利な土地に林立するタワーマンションは子育て世代からも根強い支持を集め、浸水被害は大きな注目の的に。Twitter上には安全に対する不安の声も上がった。購入を検討する人も、住んでいる人も、タワーマンションについて知っておくべきこととは。

1.マンションに水害対策の基準はない

台風被害茨城

茨城県では鬼怒川が氾濫した。

REUTERS/Issei Kato

地域防災に詳しい東北大学災害科学国際研究所の佐藤健教授は「建築基準法では、マンションなど建築物について、地震や風に対する基準はあるものの、洪水による浸水に関しては基準がない」と話す。

国土交通省建築指導課によると、「建築基準法は、生命を脅かすような被害を未然に防ぐための規制を定めるもの。歴史的には火災や地震による被災は甚大で、そちらの対策が進んできた側面がある。水害は地域差もあり、自治体ごとに条例を定めるなどで対策を取っている。水害が深刻化し、それに合わせて規制強化することはできるが、コストに跳ね返ってくるのも事実だ」と説明する。

2.ハザードマップ、マンションの構造を確認すべし

武蔵小杉1

武蔵小杉の浸水したマンション前には、立ち入り禁止のテープが貼られていた。

撮影:横山耕太郎

災害時に身を守るため、どんな点に注目すべきなのか。

住宅診断などを行う「さくら事務所」の会長で、不動産売買に詳しい長嶋修氏は、「東日本大震災の後、タワーマンションの耐震性は重視されるようになったが、今回の台風を通して、浸水被害の深刻さが注目されるようになった。ただ宅地建物取引業法では、災害時にどれだけ浸水する可能性があるかについて、マンションの販売業者に説明する義務はないので、自主的に情報収集する必要がある」と指摘している。

このことから長嶋氏は「タワーマンションに限らず物件を選ぶ時には、まずはハザードマップを確認し、どのくらい浸水する土地なのかを確認すること」と話す。

前出の佐藤教授は「マンションごとに給水方法など設備は異なり、強い点と弱い点がある。自分の住むマンションの構造を知っておくことが大切だ」と話す。

3.停電リスクが大きい

武蔵小杉夜景

武蔵小杉にそびえたつタワーマンション。

撮影:横山耕太郎

20階を超える高さを持つ高層タイプの建築物であるタワーマンションでは、停電した際のリスクが、低層マンションに比べて大きい。

住宅ジャーナリストの榊淳司氏は、「タワーマンションの住民にとって、高い階になればなるほどリスクがある。例えばエレベーターが止まった場合、45階に住む高齢者や病人を降ろすことは簡単ではない。(停電により)今回のように断水が続くこともあるが、給水車が来ても高層階に住んでいたら、水をもらいに行くのも大変だ」と話す。

榊氏は「高層階に魅力を感じる人は多いが、高層階に住むならば停電のリスクを理解しないといけない。タワーマンションに限ったことではないが、災害時に備えて水の備蓄は不可欠だ」と指摘した。

飲料水だけではない。断水によって困ることといえば、トイレの使用も深刻だ。

4.住民側もいざという時の備えがマスト

長野の避難所

住民が避難した長野県内の避難所。

REUTERS/Kim Kyung-Hoon

「災害時の対応については、マンションの管理会社に任せるだけでなく、住民側にも自主的な備えが必要だ」と、前出の東北大学災害科学国際研究所の佐藤教授は指摘する。

仙台市では、住民が防災活動に取り組んでいるマンションを「杜の都 防災力向上マンション」に認定する制度を設けている。マンションの住民が自主防災組織を結成し、防災訓練を実施したり、災害時の備蓄をしたりすることなどが認定の条件で、住民の防災意識を高めるのが目的の一つだという。

佐藤教授は「現役世代が多く住む都市部のマンションでは、協力して活動することは簡単ではないが、住民が主体的に備蓄や訓練を行うことが理想だ」と話した。

5.災害に強い物件を見分けるポイント

湾岸のタワマン

東京湾岸に立ち並ぶタワーマンション。

GettyImages/ fotoVoyager

前出の長嶋氏は災害に強いマンションについて、「ハザードマップの浸水予想に加えて、強い地盤に建っているかどうかを確認することも大切。また浸水の対策がなされているか、非常用の自家発電が十分に行えるかなど、災害対策に力を入れているかもポイントになるので、不動産業者に聞くのも一つの方法だ。また、情報開示に積極的なマンションは、ホームページを設けていることが多いので、ホームページも見てみてほしい」と話した。

6.人気の低下は一時的?災害を忘れない心が大切

1990年代後半から続々と建設されてきたタワーマンション。駅に近い立地から、共働き世代や子育て世代から支持されてきた。今回の台風では、浸水のリスクが注目されたが、専門家は今後も人気が続くと予想している。

前出の長嶋氏は「どんな災害でも時間と共に、忘れられていく。東日本大震災の後、タワーマンションの人気も半年ほどは低調だったが、また人気が戻った。今回の台風でタワーマンションの人気が一時的には減るかもしれないが、また元に戻るのではないか。災害を忘れずに、十分に備えてほしい」と話した。

(文・横山耕太郎)

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