REUTERS/Brendan McDermid/File Photo
※この記事は2019年11月14日初出です。
GSに就職するのは難関だが、不可能ではない。
中間管理職のポジションに応募する100万人のなかで飛び抜けられるかどうかは、十分な準備ができているかどうかにかかっている。GSが求める特性や、インタビューで聞かれる質問、気をつけるべきよくある落とし穴に関する情報が多ければ多いほど、就職のチャンスは高くなる。
Business Insiderはウォールストリートのリクルーターたちとのカンファレンス・コールを開催。ウォール街の人材エキスパート3人が参加した。
リクルーターたちは、GSの中間管理職志望者が書類審査とインタビューを切り抜けるためのアドバイスを、実例を挙げながら話してくれた。
なぜ熟練した技術と同時に対人能力が必要とされるのか。なぜGSの面接官たちは履歴書を1行1行分析するのか。なぜ自らのキャリアにおいて、いまGSで働くことが必ずしも最適解ではないとすぐにでも気づいたほうがいいのか。
ウォール街の人材エキスパートたちの経歴
シャーナ・リーボウィッツ(Shana Lebowitz、Business Insider記者、以下S):ゴールドマン・サックスに就職する秘訣について、こうして3人のエキスパートにお集まりいただき、お話を伺えることをうれしく思います。
エリカ・ケスウィン(Erica Keswin、以下E)さんは、ワークプレイス・ストラテジストで、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスの元エグゼクティブ・コーチ。エグゼクティブ・スカウトを専門とするグローバル企業ラッセル・レイノルズのエグゼクティブ・ディレクターでもあります。
リンダ・クライズマン(Linda Kreitzman、以下L)さんは、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスの金融工学プログラム修士過程の創設に携わり、現在もエグゼクティブ・ディレクター(事務局長)とアシスタント・ディーン(学部長補佐)を務めておられます。これまで何百人もの学生を、ゴールドマン・サックスなどの大手投資銀行に送り出してきました。
オリバー・ロルフ(Oliver Rolfe、以下O)さんは、ロンドンに本拠を置くエグゼクティブ・スカウト会社スパルタン・インターナショナルの創業者兼CEOです。
GSの書類選考と面接において、最も注意すべきことについてお聞きしていきます。投資銀行の管理職ポジションを目指す人たちにとっては、最高のアドバイスとなるでしょう。
リクルーター(転職エージェント)との関係を築く
米金融大手ゴールドマン・サックスの43階建て本社ビル。
Spencer Platt/Getty Images
S:まず最初に、GSに足を踏み入れるために何をしたらいいのかを伺いたいと思います。エリカさんのご専門ですよね。ポジションに空きがあるかどうかは、一般的な求人サイトなどで見つけることができるんでしょうか?
E:そうですね、見つけることができます。素晴らしい求人サイトがありますし、(ビジネス特化型SNSの)LinkedInもありますよね。求人情報を得るためのテクノロジーはたくさんあります。でも私の経験からすると、それだけでは不十分。もちろん、履歴書を送れないというわけではありませんけどね。
私の経験上、積み上げられた履歴書の山に埋もれている自分の履歴書を一番上に持っていくためには、自分のネットワークをあたることが重要です。
まずはGSで働いている知り合いがいないか探してください。その人がもしかすると社内の誰かにあなたの履歴書に目を光らせておいてとか、ちょっと多めにTLC(=Tender Loving Careの略、優遇を意味する)をよろしくね、とか伝えてくれるかもしれないからです。
S:自分のネットワークを利用するということですね。リクルーター(日本の転職エージェントに相当)と一緒に探すというのはどうでしょう?役に立つと思いますか?
E:私はいつも、リクルーターたちとの関係を築くようにアドバイスしています。いろんなリクルーターがいますから。
企業がスカウト会社のリクルーターと専任契約を結んで人材を探すケースはよくあるし、実際に就職させた場合にのみ報酬を受け取る一般媒介のリクルーターもいます。リクルーターを活用する場合は、その両方のタイプにあたるよう勧めています。
ちなみに、リクルーターと良い関係を築くには、彼らの役に立とうとすることや、思いやりをもって付き合うことが大切です。
ラッセル・レイノルズで働いていたときは、よく人に電話をして「このポジションに合う人を探してるんだけど」と聞いていました。その人自身は探しているポジションには適していなくても、情報源として必要なんです。
もちろん、「少しだけなら話せるよ。そうだな、Business Insiderのシャーナに電話してみるといいよ。役に立つ話が聞けるはずだから」と言ってくれる人ばかりではなく、「ごめん、いま時間がないの」と電話を切られることもありますが。
いずれにせよ、リクルーターから電話をもらったら、少しでも協力してあげることです。良い関係を築いていくことができるから。
S:へえ、そうなんですね。リクルーターからの電話は無視しちゃいけませんね。リンダさん、何か付け加えることはありませんか?
L:私は、7〜10年程度の在籍経験をもつアルムナイ(離職者)をあたります。GSにはかなりの数のアルムナイがいるので、その人たちに直接会って、「この人物を推薦したいと思っているの。履歴書がこれ。もしよかったら、GSのリクルーターに渡していただけないかしら」と伝えるわけです。
これが第一歩で、その後はエリカさんのおっしゃる通り、ネットワークがとても重要になります。LinkedInのプロフィールをいつも更新しておくことが大切ですね。
GSが金融以外に関心をもつ人材を求める理由
ロンドンのエグゼクティブ・スカウト会社スパルタン・インターナショナルのオリバー・ロルフCEO。
Courtesy of Oliver Rolfe
S:ネットワークを利用したり、リクルーターと一緒に動いた結果、ついに面接にたどり着いたとしましょう。オリバーさん、GSの面接は少し長めだと聞きました。管理職ポジションに応募した場合、いったい何度の面接をくぐり抜けないといけないのでしょうか?
O:よく聞かれる質問なんですが、本当にケースバイケースです。面接に決まった時間というものはないんですね。ただ、GSの時間配分は他とはちょっと違っていて、そうした“GS流”を真似する会社もあります。
GSの応募者が長い面接プロセスを経験する理由はちゃんとあって、それは、プロセス(で求められるもの)が他社とは異なるからなんです。成績はもちろん重要ですが、それ以上にプラスアルファとなるもの、その人の情熱を示すような何かが必要なんです。
情熱と意欲、それが生み出す特質……実際、デービッド・ソロモンがその好例でしょう。彼はGSのCEOでありながら、一流のプロデューサーであり、DJでもある。そうしたことがあれば、面接で自らの存在を際立たせられるわけです。
具体的に言うと、面接の回数は6〜20回の間になると思います。その人の性格を理解するのが目的なので、誠実で正直であることをいかに見せられるかが要となります。
S:どのようにしたら情熱と意欲があることを示せるのでしょう?やはりDJにならなくちゃいけないんでしょうか?
O:プロとして培ってきた強みやそれまでの経験や教育とは別の方法で、自分の素晴らしさを効果的に伝えるのはどんな人にとっても大変に難しいことです。
GS社内の人事のプロは、驚くような組み合わせの「ダブルメジャー(2科目専攻)」を活用せよと言っていました。例えば、数学と演劇。数学を学ぶ頭脳と学識があるだけでなく、同時に演劇のようなものへの情熱も持ち合わせている。それくらい高いレベルで両方の要素を提示できれば、ものすごく自分を際立たせることができますよね。
S:なるほど。そんな組み合わせは思いつきもしませんでした。リンダさんのご意見はどうでしょう?
L:GSが情熱と専門知識の両方を求めているのは事実です。応募するのであれば、課外活動について何か見せられるといいですね。例えば、ボランティア活動をたくさんしたとか、多方面で活躍したとか。
確かにGSは他社とは違います。非常に徹底しています。でも、同じ金融業界の(ヘッジファンド大手である)ツーシグマやシタデルと、GSの間にはさほど違いはありません。最大20回というGSの面接はかなり多いですが、とはいえ、他社でも少なくとも6、7回はあります。
オリバーさんのくり返しになりますが、どのように自分を表現するのか、どれだけ情熱を持っていままでやってきたことを話せるのか、何年も大きな関心を持って取り組んできたことをどう活用できると考えているのか。GSはそうした点を見ているんです。
面接官とつながろうとすることが大切
ニューヨーク証券取引所(NYSE)のモニターに表示されたゴールドマン・サックスのロゴ。
REUTERS/Brendan McDermid
E:通常は、面接プロセスが始まる前に、これから会う人のリストをもらいます。当日のスケジュールはこうなります、この人とランチをして、その後この5人と面談、といった感じです。
そこでどうやって自分をアピールするかについては、3つのアプローチがあります。
1つは、持つべき技術的スキルは何か?スキルはさまざまな形で手持ちのカードとなりますよね。同じような技術を持った人が大勢いるからこそ、そうしたスキルを持っていないといけません。
2つ目に、GSのような場所で働くためには、ソフトスキル(=交渉や指導、コミュニケーションの能力)や情熱、会社の文化を向上させられるような能力を持っていると優位です。
GSでもシタデルでも、誰もが入社したくなるような、ずっと働きたいと思えるような文化を育むことに重点が置かれています。GSのような大きな会社でも、離職者を出すのは高いコストなのです。ひとたび採用できたら、できるだけ長く働き続けてもらいたい。
だから、事前にリサーチをして、GSの文化を理解し、GSとは何なのかを知る、さらにそれらと自分の価値観がどう合致するのかを示すことができたら、ものすごく大きなプラス要素になるでしょう。
そして3つ目は、これから会う人のリストを入手できたら、彼らのLinkedInのプロフィールを見て、人間的なレベルでつながれるかどうかを確認して準備することです。LinkedInのプロフィールには好きな作家や旅行先が書かれていることもありますよね。そうしたパーソナルな情報に注目して、頭の片隅に置いておけば、インタビューで役立つこともあるかもしれません。
L:あらかじめ面接官の経歴を調べておくことはとても重要ですね。それともう1つ大事なのは、行動に関する質問への準備です。これはますます重要になってきていて、GSは行動に関する質問や倫理的な質問をかなり多くするようになりましたね。
O:まさにお二人の言う通りだと思います。面接官や会社についてリサーチしておくことは重要。でも、それだけでは足りません。
どの会社にもそれぞれ独自の文化があります。その会社ならではの雰囲気、社員に通底した共通性があるものです。そして、そうした共通性が必ずしも自分にも合っているとは限りません。
皆が望んでいることがあるとしても、それが自分が望むことと合致するとは限らないのです。(たくさんの応募者が殺到する)GSでさえも、自分のキャリアにふさわしい場所ではない可能性は十分にあり得ます。タイミング的にいまではないのかもしれない。もしかすると、もう少し後なのかもしれない。
人にはそれぞれにふさわしい場所があって、それはたった一つではないと気付くのは重要なことです。学問として学ぶものではなく、感じるのです。私たち人間は感情に突き動かされ、精力的に動きまわる生きものなので、互いを知るには感じるしかありません。
だからこそ、面接のプロセスは非常に重要なんです。向かい合って座っていると、相手のエネルギーを感じますよね。そこには嘘がない。
履歴書にはどんな小さな嘘も書いてはいけない
カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスのリンダ・クライズマン。
Courtesy of Linda Kreitzman
L:ところで、面接官からの質問への対策ですが、言うまでもなく熟達している必要があります。通常、GSでは複数の面接官が、応募したポジションの業務についてさまざまな観点から聞いてきます。どのように考えて、どのように質問を分析して、どのように答えを組み立てるのか、直感力も見られていますね。
また、GSでは管理職の採用でさえも、プログラミング能力を測る「ハッカーランク(HackerRank)」(=企業側の出すプログラミング問題を解くとオファーが届く)を使うことがあります。実際、金融業界はデータサイエンスによってより複雑になっていますし、よりデータを重視するようになってきています。
それから、GSではデジタル面接プラットフォーム「ハイアービュー(HireVue)」が使われるケースが増えています。5〜7つの質問が示され、45秒の準備時間の後、2分間で質問に答える仕組みで、頭の回転の速さやコミュニケーション能力が試されます。誰しも、同僚たちと交流せずに業務をこなす人より、バランスを取れる人と仕事をしたいと思うもの。チームワークは非常に重要ですね。
最終的にGS側が知りたいのは、なぜ応募したのかということ。その部署でどんな業務を行うのかを正確に理解してもらった上で、チームワークへの向き合い方をテストし、志願者がその仕事に適しているのかを見きわめたいのです。
応募した動機を聞かれたらどうするか、私はいつも学生にこう言っています。「そうですね、ゴールドマンはゴールドマンだからです」と答えるのはやめなさいと。彼らは自分たちが一流企業であることはとっくにわかっているのだから。
ちなみに、面接官がメモを入れ替えたりして、志願者のほうを見ていないときがあります。それは意図的にそうやって、志願者がどれくらい不安になるのかを見ているのです。もちろん、不安がる人ではなくて、その反対の行動をとれる人が求められます。
S:とても面白いですね。そんなやり方で、志願者がプレッシャーに強いかどうか試されているなんて、知りませんでした。また、面接官が技術的な能力だけでなく、コミュニケーション能力やチームワークのようなソフトスキルも見ているというのは興味深いです。
面接で実際に聞かれる質問そのままでなくてかまわないのですが、具体的にこんな質問をされる、という実例をあげていただくことはできませんか。あれば、志願者が準備するのに役立つと思うんです。
E:最近すごく面白い話を聞きました。履歴書やLinkedInのプロフィールには真実のみを書くようにしようという訓話のようなエピソードです。
ある若い男性が、料理が大好きだと履歴書に書いたそうです。面接を受けることになったのですが、実は面接官のほうは、最近送られてくる履歴書にやたらと料理ネタが書かれてあるので、これはいったい何のトレンドなのかと疑問に思っていた。
そこで、その志願者に面接で「いままで調理したなかで最も複雑なレシピについて、どこでレシピや食材を手に入れて、どこで買い物をしたかなどを含め詳細に教えてください」と聞いたんだそうです。面接での質問は文字通りそれだけ。面接官はそこから45分間、その1問について面接を行うことを志願者にも伝えました。
数分後、その志願者は立ち上がって、面接官と握手をして「ありがとうございました」と言って部屋を出ていったそうです。
何が起きるかなんてわからないんです。そしてGSのような(徹底した面接を行う)会社では、履歴書のあいまいな部分を見つけ出されてしまうことが多い。履歴書に書くのなら、それが何であれ、関連するエピソードや逸話を準備しておきましょう。何に関心が向けられるかわからないので。
L:履歴書に書かれたことはすべて面接で言及されることになると、学生には伝えています。GSの面接含め、行動に関する質問の定番には、次のようなものがあります。前職でマネージャーや同僚と対立したことはあるか。自分の役割を十分に果たしていない人がいるチーム・プロジェクトに参加したことがあるか。そのときどうやって問題を解決し、どう事態に対処したか、などなど。これらはいずれも重要な質問です。
もう一つ最後に、私はいつも学生たちにこう伝えています。「十分注意しなさい。あなたたちが働こうとしているのは(多忙をきわめる)金融業界。愛する人よりも、上司や同僚と過ごす時間のほうが長くなるかもしれないんですよ」ということ。
だからこそ、行動に関する質問には素晴らしい答えを返すことが重要です。単にうまく答えるだけでなく、倫理的に正しく、チームワークができることを示せるように答えるべきです。
正しい答えを出すことより、どう考えるかが重要
ニューヨーク証券取引所(NYSE)。ゴールドマン・サックスのロゴが表示されている。
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O:お二人の指摘どおり、履歴書や職務経歴書に書いたことはすべてチェックされます。Facebookの投稿すらその対象になることがあるのです。ソーシャルメディアに何かを投稿すると、誰でもそれが見えるようになるわけで、面接で話題にあがったり、選考過程のどこかで影響が出てくる可能性はあります。
あと、話は逸れるのですが、実際に面接で出たことのある質問で、ちょっと他とは違うタイプのがあるので、ここで紹介しておきましょう。それは「この(面接をしている)建物には窓が何個あるでしょうか?」というものです。
この質問が飛び出した瞬間、多くの人の顔は完全な無表情になって、「そんなことどうやってわかるわけ?」と考えます。その瞬間こそ、プレッシャーを感じたときにあなたがどう感じ、どう反応するかを、面接官は見ているのです。
E:クイズ形式の質問ですね。他にも例えば、「ある部屋に30人います。うち2人が同じ誕生日である確率は?」というのもあります。どう考えるのかを試しているんです。
窓がいくつあるかというオリバーさんの質問には、「大きい建物だとしたら、まずは高さを推測して、奥行きがどれくらいかを見て確かめます」と答えることができます。
面接官が知りたいのは、あなたが窓の正しい数を知っているかどうかではなく、オフィスがいくつ入っているから、窓の数はいくつくらいになるだろう、といった考え方ができるかどうかなのです。
S:カンファレンスのリスナーから質問が来ています。GSの管理職に応募する場合、年齢は考慮したほうがいいのか、とのこと。
E:27歳でなければダメ、という会社はありませんよね。ただし、トレーディング部門の管理職については、ポジションに応じて制限があるかもしれません。いずれにせよ、企業が年齢で差別をすることはないと思います。最終的には、その仕事に必要な要件を満たしているのかどうかが重要です。
この質問をしてくれた方の年齢はわかりませんが、私の(UCバークレーの)金融工学プログラムには38歳の学生たちもいて、彼らはGSに就職して10年強のキャリアを積んだ後で、修士号を取得するために戻ってきました。すでに修了してGSに復帰し、現在はマネージング・ディレクターを務めています。
E:企業は年齢についてよりオープンになってきていると感じています。いまや4世代が同じ屋根の下で働いている組織もある。寿命が伸びて、働く年数も長くなってきました。
そんな時代だからこそ、「なぜ?」という質問にまた戻るわけです。なぜこの仕事がしたいのか。なぜGSで働きたいのか。なぜそれがいまなのか。身につけたスキルをどのように流用できるのか。どんな価値をもたらすことができるのか。
年齢で落とされるのが心配なら、私だったら、履歴書につけるカバーレターにその「なぜ」の質問への核心をついた答えを書いて送るでしょうね。
O:同感ですね。GSの人事はカバーレターを1枚1枚丁寧に読みます。コンピューターに入力して終わりではないんです。カバーレターを通じて他の人とは違う人、情熱を際立たせられる人は誰かを判断しています。また、会社やポジションに合うようにきちんと書かれているかも見ていますね。
公平に見ても、年齢にはさまざまな要素が含まれています。私は、年齢というよりタイミングが問題だと思っています。人には適したタイミングとふさわしい場所というものがある。もしかすると、GSで働くのはもっと後で、知識を培い、情熱が高ぶってきてからのほうがいいのかもしれないのです。
この仕事をやるには年をとり過ぎているとか、若すぎるとか本気で主張する人はいません。タイミングと、要件に合致する経験があるのかどうかが重要なんです。
E:ここまで「情熱」という言葉が何度も出てきたし、その重要性については私も同じ考えです。ただし、何よりもまず必要なのは、専門知識であることは強調しておかねばなりません。
応募要件は満たしているか。その業務を成功させるためにGSが必要としているスキルを持っているのか。管理職ポジションなら、同僚や部下たちとの関係についていつも聞かれるし、前の職場で他の人とどのように働いてきたかも問われます。
GSは長く働いてくれる人を求めている
O:管理職ポジションを狙う人にとっては、キャリアの長さが重要になってくると私は考えています。最も成功している人のキャリアを見ると、ある分野について非常に長い間勉強したり、働いたりしている。最も成功した人のなかには、1つの分野に人生をかけたと思えるような人もいますよね。
どんな企業でも、特にGSのような企業では、長期的に働いてくれる人を求めています。有限のマインドセット(発想)を持つ人より、無限のマインドセットを持つ人こそが必要なのです。
L:何年も働いて経験を積み重ねた上でGSに応募する場合は、1つのことだけをやってきた人は求められません。それは命取りになると思います。
新しいスキル、例えば機械学習のようなデータサイエンスのスキルをアップデートし続けることが、どんなレベルの仕事においてもより重要視されるこの時代、1つの仕事をするだけでなく、キャリアを通して常に学習し続けることが大切ではないでしょうか。
O:まったくその通りだと思います。学歴や専門的技術だけでなく、別の要素がほしい。そのすべてが必要です。でも、私が思うには、そのうちどれかはずっと続けていかなくてはいけない。
銀行業界に出たり入ったりするとか、派生するまったく異なる仕事に移ったりするとかは避けて、自分が重点を置く分野にこだわり続けることです。多くのシニア・バンカーたちが、そこにたどり着くまでに通ってきたキャリアパスに目を向けるとよくわかります。
そう言えば、まだメンターについて話していませんでした。
GSだけでなく、その他の多くの企業への就職を考える上で、メンターはきわめて大事な要素です。志望する業界で働いたことのあるメンター、自分よりも年上のメンター、あるいは自分が働いてみたいと思う会社で働いているメンターは、より簡単で直接的なルートを見つける助けとなります。
指導を受ける側もメンター側も、もう少しだけメンタリングに時間を費やす必要があるんじゃないかなと思いますね。
L:つまり、ネットワーキングが重要ということになりますね。
過去に採用見送りになっても、再応募は可能か
ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネス前エグゼクティブ・コーチのエリカ・ケズウィン。
Erica Keswin
S:もう1つリスナーからの質問です。過去にゴールドマンに応募したことがある場合、どうしたらいいでしょうか。当初は有望な候補者と見なされて、何度も面接を受けたものの、結局は採用されなかった。そういう人は将来また応募するべきでしょうか?そもそも応募できるのでしょうか?
E:私の経験上、応募はできます。特に前回ポジティブなフィードバックをもらった場合、最終選考の数人のなかに残っていた可能性があります。タイミングなのか、ポジションなのか、結果としてそのときは採用されなかったとしても、例えば違う部署での仕事など、他のポジションを探すのを妨げるものは何もありません。
最初に応募したときに、社員たちや会社の文化、ブランドに触れたことで、より印象が良くなったということもあるでしょう。2桁の数の社員たちに会ったのなら、どういう雰囲気なのかも実感できたはずです。
私からのアドバイスは、こんな風に前回の経験に言及することですね。「あの仕事には適任ではなかったかもしれないですが、これこれこんな理由で、私にはまだ可能性があると考えており……」と切り出して、理由を列挙するんです。GSは私が力を発揮するのにふさわしい場所で、今回新たに応募する仕事については特にそう思います。その理由はこうです、という感じで。
L:でも、注意しないといけません。GSは多くのポジションに応募する志願者を嫌うからです。1つ、あるいは2つにしぼって応募するのが重要です。
E:自分のスキルとしっかり結びつけて応募する必要がありますよね。大事なのは「ストーリー」です。同じ履歴書をあらゆるポジションに送ってはいけないし、最初はAという仕事に応募したのに、Bという仕事にも適していると思うのはなぜなのか、ハッキリとした理由付けがなくてはなりません。
L:ただし、1年に2回以上応募すると、システムが自動的に拒否するのでご注意を。
O:GSのような面接回数の多い採用システムについて指摘しておきたいのは、たくさんの面接官に会うということです。面接を何度もくり返した後で、ある面接官に不採用だと判断されたとして、もしその面接官が再応募したときにも在職していたとすると、再度面接に応じてもらえる確率はかなり低くなります。そこが難しいところです。
E:そうですね。そういうとき、優秀なリクルーターはとても率直で、他のポジションに応募するのを止めさせますね。
O:それはリクルーターの非常に有用なポイントですよね。「応募はしないほうがいい。時間のムダになる。こちらの仕事のほうが理にかなっていると思う。マネージャーたちが求めているのはこれで、この企業が求めてるのはこれ。だからこれがあなたに合っている」とハッキリ言ってくれる。
3人のエキスパートから最後にアドバイス
S:GSに応募しようとしている人たちに向けて、最後に1つずつアドバイスを伺いたいと思います。エリカさんから、いかがでしょうか?
E:しぼり込むのは難しいですね……でも、1つだけあげるなら、就職は双方向的なものだということです。
GSで働きたいという目標を立てて、もし採用されたら、その仕事が本当に自分に合っているかどうか、マネージャーと合うのか、会社の文化が合うのかを見きわめる必要があります。
一方、GSを含めた企業側にとっても、2025年までに(アメリカの)労働力の75%を占めるとされるミレニアル世代とジェネレーションZのなかから、どういう人材を集めるかは社運を左右する重要な問題です。
GSは素晴らしい会社です。でも他にもたくさん素晴らしい会社がある。会社名やブランドに目をくらませてはいけません。自身の力を最も発揮できる最適な会社はどこなのかを徹底して考えてください。
S:エリカさんは、それについて本も書かれていますよね。
E:『Bring Your Human to Work』という本です。人間やビジネス、世界にとって素晴らしい効用をもたらす職場を見つけたり、デザインしたりすることをテーマに書きました。新しい世代の人たちの間では、そうしたことがますます重要になってきています。
単純に入ってみたいとか、世界各地を転々として人生を変えたいとかの理由で入社して、後からさまざまな意味で自分にとってふさわしくない場所だったことに気づく、といった結果になってほしくありません。くり返しになりますが、就職は双方向的な取り組みであることを頭に入れておいてください。
S:ありがとうございます。リンダさん、オリバーさん、最後のメッセージを。
L:学習をやめてはいけません。新しいスキルを身につけること。ネットワーキングをやめないこと。そして自分自身を知ることです。さらに、自分だけの狭い世界のなかだけでなく、広い外の世界に何があるのかを知らないといけません。それができたとき、GSで働くことができると思います。
O:正直で誠実であることが重要です。キャリアを通じて最も大事なことだと思います。仕事が何であろうと関係なく、自分自身に正直であること、自分に嘘をつかないで誠実であること。貫き通せば、そういう人として記憶されるようになるんです。
あなたについての話が出たり、誰かがあなたについて何かを聞いたりしたときに、「あの人はいつも熱心に取り組んでいて、誠実で、時間を割いてくれた」と言われるようになるでしょう。絶対不可欠なのはそれです。