なぜ、あなたの会社の管理職は“無能”に見えるのか?「卒業方式」「入学方式」それぞれの問題

都市の風景

撮影:今村拓馬

若手社員から見ると、世の中の中高年、特に自分の上司、管理職は無能だと感じている人が多いようです。生の声からもよくそういう言葉を聞きますし、オフィスを舞台にしたドラマなどでも、おじさん管理職などはダメな感じで描かれることも多い。

ただ、本当に無能な人が管理職になるものでしょうか。有能な人は管理職になれず(もしくは、ならず)、無能な人ばかりが管理職になるようなシステムがある、というのも現実的ではないように思います。

本当は有能な人が無能に見えてしまう、あるいは実際に無能になってしまうという何らかの原因があるのではないでしょうか。今回はそれを考えてみたいと思います。

人はどうやって「管理職」になるか

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そもそも人はどうやって管理職に、言い換えれば一人の「プレイヤー」から、「マネジャー」になるのでしょうか。

さまざまな会社においていろいろな考え方がありますが、大別すると「卒業方式」と「入学方式」というものに分けられます。

プレイヤーとしての役割を十二分に発揮した人に、プレイヤーを卒業させて次のステップでマネジャーとして処遇する方式を「卒業方式」と言います。

一方、マネジャーという役割を担うために必要な能力が備わっているとみなされた人をマネジャーに登用するという方式を「入学方式」と言います。「管理職が無能に見える問題」は、この二つの特徴から来る可能性があります。

「卒業」できても「入学」できるとは限らない

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まず、「卒業方式」で管理職を決めている会社について考えてみます。例えば、中学生の学習内容が理解できたからといって、高校の学習内容が理解できるとは限りません。ですから、高校には必ず何らかの入学試験があるわけです。高校での学習に耐えうるポテンシャルがあるかどうかを測るのです。

ところが「卒業方式」の考えで管理職登用を行なっている会社は、言わば「入学試験がなく、卒業をすればエスカレーターで高校に入れる」ようなものです。しかし、「名選手必ずしも名監督ならず」で、素晴らしい「プレイヤー」でも、素晴らしい「マネジャー」になるかはわかりません。必要能力が異なるのです。

つまり、「卒業方式」で新しく管理職に登用されたマネジャー達は、基本的に皆、これからマネジャーとしての訓練を積んでいく「初心者」です。

部下であるプレイヤー達は、先輩であり、プレイヤーとしての熟練者であった彼らを足元のおぼつかない「初心者」と見ることはなかなか難しい。「初心者」と見ることは子ども扱いするようなものであり、失礼なことだという思いもあるでしょう。

期待値が高ければ、同じことをしていても評価が低くなってしまいます。素晴らしいプレイヤーとしての先輩が昇格した。そうすればマネジャーとしても素晴らしいマネジャーであって欲しい。その思いが期待外れを生み出すのです。

「入学方式」を採用しただけでは「無能(に見える)管理職」は解決しない

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日本全体が成長していた時代は、この「卒業方式」が多かったように思います。組織が成長すればポストはどんどん増え、できるかどうかわからなくても、下のグレードの仕事ができていれば、上の仕事に登用せざるをえない。

今もIT業界など成長業界では、「卒業方式」のところが多い傾向にあります。しかし近年、成熟し停滞する企業が増えてきた日本では、そこまでのポストがない場合が多く、そのため徐々に「入学方式」が増えてきているように思います。

ポストよりも候補者が多ければ、きちんと入学試験をしてプロを厳選登用することができます。実際、40代以上の未役職者は6割を超え、「7割が課長になれない時代」と呼ばれています。

入学方式なら「無能(に見える)管理職」は出ないかというと、そう簡単ではありません。

卒業方式では評価方法は「現在の仕事ができているか」であり、業績や言動を見れば比較的正確に分かります。入学方式では「未来の仕事ができそうか」という想定の話であるため、評価の正確さが問題です。

かつ、この「入学試験問題」=「マネジャー登用要件」がおかしい企業も少なくないのです。実際、マネジャー登用基準が過去のプレイヤーとしての評価が多く、形式は入学方式でも実質は卒業方式と変わりません。

間違った要件で登用されたマネジャーは、力を発揮できないのも致し方ありません。

重要なのは「必要な能力の絞り込み」

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結局、一番重要なのは「マネジャーとは何か」を明確化することです。

自社におけるマネジャーとはどのような職務であり、その職務をこなすにはどのような知識や技能、能力が必要なのかを特定することです。

ただ、注意すべきは「明確化」が、マネジャーの要件を思いつく限り挙げてしまう「全列挙」になりがちなことです。「あったらあったでいい能力」と「絶対に必要な能力」の価値は違います。

相対的価値の低い能力の合わせ技で登用された人と、必須能力を全て備えた人では雲泥の差です。要件を明確化するにしても、優先順位をつけるべきです。

軸はいつくかありますが、最も根本的な基準は「その能力は(自社でも)育成できるのかどうか」です。

まず、「(自社でも)育成できる能力」を入学式の基準としない。

また、求めているのが「(自社では)育成できない能力」にも関わらず、それを持っていないプレイヤーを「卒業」させてマネジャーへと昇格させてしまい、身につくはずのない能力を「身につくはずだ」と求め続けることを避ける。

「能力」の育成可能性を、きちんと踏まえた基準によって昇格を決めていくことができれば、無能管理職を量産するような事態にはならないのではないでしょうか。


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(文・曽和利光)

曽和利光:京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長を歴任し、2011年に株式会社人材研究所設立。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。著書等:「コミュ障のための面接戦略」、「人事と採用のセオリー」ほか

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