ニューヨーク、タイムズスクエアのフォーエバー21旗艦店での買い物客。2010年6月。
Lily Bowers/Reuters
- ファストファッションの出現により、衣類は手の届きやすい価格となった。
- だが環境への影響は大きい。ファッション産業は、人間の活動によって排出される二酸化炭素量の10%を排出し、2番目に水を多く消費する産業であり、マイクロプラスチックで海を汚染している。
海外行きの飛行機に乗る、使い捨てプラスチック製品を使う、さらには通勤で車に乗る —— 現代生活に見られるこのような行為は、今では環境に悪影響を及ぼす原因として広く知られている。だが、衣類が与える影響については、それほど明らかにはなっていない。
世界中の消費者がより多くの衣類を購入するようになり、流行のスタイルを安価で提供するマーケットが成長することで、環境に打撃を与えている。2014年に消費者が購入した衣類は、2000年に比べて60%増加した。ファッション産業は、人間の活動によって排出される二酸化炭素量の10%を排出し、水源を干上がらせ、汚染物質を川に流し込んでいる。
その上、製造された衣類の85%は、毎年ごみとして処分される。また、衣類の種類によっては、洗濯するたびにプラスチックのかけらを海に流している。
ファストファッションが地球環境に与える深刻な影響を見てみよう。
衣類の生産量は、2000年のほぼ2倍になった。
インド南部、タミルナドゥ州ティルプルの衣類工場。2013年6月。
REUTERS/Mansi Thapliyal
2014年に消費者が購入した衣類は、2000年に比べて60%増加したが、着用する期間は半分に。
品定めするイラク人男性。バグダッド、イラク。2019年8月。
REUTERS/Khalid al-Mousily
ヨーロッパでは、ファッションブランドが毎年開催するコレクションの平均回数は、2000年は2回だったが、2011年には5回に増えた。
マックスマーラ、2020年春夏コレクション。ミラノ、イタリア。2019年9月。
AP Photo/Luca Bruno
もっと多くのコレクションを開催するブランドもある。ザラは年に24回、H&Mは12~16回も開催する。
ザラ本部の倉庫に並ぶジャケット。アルテイショ、スペイン。2018年10月。
Business Insider/Mary Hanbury
最終的には多くの衣類が捨てられる。毎秒トラック1台分の衣類が、焼却あるいは埋め立て処分されている。
ゴミ処分場。ベイルート、レバノン。2015年9月。
REUTERS/Mohamed Azakir
全体の85%の衣類が、毎年埋め立て処分される。これは、毎年シドニー湾を埋め立てられる量だ。
シドニー湾、オーストラリア。2018年11月。
REUTERS/David Gray
出典:United Nations Economic Commission for Europe (UNECE), World Resources Institute (WRI)
衣類の洗濯により、毎年50万トンのマイクロファイバーが、海に流れ出ている。これは、500億本のペットボトルに相当する。
アディダスのコマーシャルの1シーン。洗濯が終わるのを待つ男性。ポッターズ・バー、イギリス。2001年6月。
Jamie McDonald/Getty
これらのマイクロファイバーの多くはポリエステルだ。ポリエステルは衣類の60%に含まれていると推計され、製造の際には木綿製品の2~3倍の二酸化炭素を排出し、海に流れ込んでも分解されない。
ベラルーシのポリエステル製糸工場。2016年5月。
REUTERS/Vasily Fedosenko
出典:Greenpeace, WRI
国際自然保護連合(IUCN)の2017年のレポートによると、海中のマイクロプラスチック(生分解されないプラスチックの微細な粒子)の35%は、ポリエステルなどの化学繊維を洗濯したことで海に流れ込んだと推測される。
フィリピンの汚染された沿岸部で、プラスチックを集める少年。
Cheryl Ravelo/Reuters
出典:IUCN
海のプラスチック汚染は、その原因の最大31%がマイクロプラスチックによるものだと推計されている。
サンゴ礁で体を休めるアオウミガメ。ボルネオの東にあるセレベス海、シパダン島近く。2005年11月。
Reuters
出典:UCN
ファッション産業が現在の傾向を変えない限り、2050年までに「カーボンバジェット」に占めるファッション産業の割合は26%に上ると、エレン・マッカーサー財団の2017年度のレポートが指摘した。
トロントにあるカナダグースの工場。
Reuters/Mark Blinch
カーボンバジェット(炭素予算)は、地球の気温上昇を一定のレベルに抑える場合に想定される、温室効果ガスの累積排出量の上限値のこと。
ファッション産業は、世界で2番目に水を多く消費する産業だ。
断水になったインドのチェンナイで、かろうじて水の残った湖から水を汲む女性。2019年6月。
REUTERS/P. Ravikumar/File Photo
出典:UNECE
木綿のシャツを1着作るのに、約2650リットルの水が必要となる。これは、1人の人が1日に8杯の水を飲んだとして、3年半飲める量に相当する。
水を飲む男性。ブリュッセル、ベルギー。2016年7月。
REUTERS/Francois Lenoir
出典:WRI
ジーンズを1本作るのに、約7600リットルの水が必要となる。これは、1人の人が1日に8杯の水を10年は飲める量に相当する。
Shoshy Ciment/Business Insider
出典:UNEP
シャツもジーンズも、大量の水を必要とする木綿から作られている。
ブルキナファソ、ボボ・ディウラッソ近郊の木綿マーケット。2017年3月。
REUTERS/Luc Gnago
ウズベキスタンでは、木綿の栽培にあまりにも多くの水を消費したため、50年でアラル海が干からびてしまった。かつては世界で4番目に大きな湖だったが、現在では砂漠の中に小さな池がいくつかあるだけに過ぎない。
NASAが公開したアラル海の衛星写真。左は2000年8月のもので、湖の範囲が1960年代からかなり小さくなったことが分かる。右は2014年撮影のもので、過去600年間で初めて湖東部が砂漠化した様子が分かる。
NASA
ファッション産業は、水の汚染問題も引き起こしている。生地の染色は、世界で2番目に大きな水の汚染源となっている。染色の過程で汚染された水が、水路や川にそのまま流されるからだ。
工場での染色の様子。インド北東部トリプラ州の州都アガルタラ近郊。2008年4月。
REUTERS/Jayanta Dey
染色に必要な水は、1年間でオリンピックの競技用プール200万杯分だ。
近くの皮なめし工場から化学物質やゴミが廃棄され、赤く染まった池。ダッカ、バングラデシュ。2005年5月。
REUTERS/Rafiquar Rahman
出典:WRI
産業に起因する世界中の水質汚染のうち、20%はファッション産業が原因となっている。
汚染されたブリゴンガ川で泳ぐ少年。ダッカ、バングラデシュ。2009年5月。
REUTERS/Andrew Biraj (Bangladesh Environment Society)
このような状況を変えようと、染色による汚染を減らし、木綿栽培をより持続的に行うために率先して活動するアパレル企業もある。3月、国連は「持続可能なファッションのための国連アライアンス」(Alliance for Sustainable Fashion)を立ち上げた。これは、ファッション産業による悪影響を軽減するために努力する関連組織の活動をコーディネートする役割を果たす。
オーストラリア、シドニーのデパート。2014年12月。
Getty Images / Don Arnold
出典:Zero Discharge of Hazardous Chemicals, Better Cotton Initiative, UNEP