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30代女性の体力が急激に低下。運動の壁は「時間」と「他人の目」

30代後半の女性のみ体力が下がっていることが、スポーツ庁の最新の調査で分かった。仕事、家事、育児……運動するための「時間の確保」が困難なのはもちろん、スポーツジムに通うことにも女性特有のハードルがあるようだ。

ジム

30代女性の体力が低下している。一方で男性は横ばいだ。この差はどこにあるのだろうか(写真はイメージです)。

GettyImages/PRImageFactory

スポーツ庁が発表した2018年度「体力・運動能力調査」結果によると、1998年から実施している新体力テストの合計点は、女子35~39歳の世代の低下傾向が目立つ(小数点以下は切り捨て)・

体力・運動能力調査

新体力テスト合計点の加齢に伴う変化を、1989年度調査の数値を100度の数値を100とて経年変化を示したグラフ。

出典:2018年度「体力・運動能力調査」(スポーツ庁)

一方、同じ世代の男性は横ばいだ。

体力・運動能力調査

男性の新体力テスト合計点の加齢に伴う変化を、1989年度調査の数値を100度の数値を100とて経年変化を示したグラフ。

出典:2018年度「体力・運動能力調査」(スポーツ庁)

体力年齢も同じだ。実年齢より体力年齢が若い割合は、女性は1998年には40%だったのが今回は26%と大幅に減少していた。これに対し同世代の男性は34%から38%と微増している。

体力・運動能力調査

成人の体力年齢と暦年齢の割合を、年度ごとに比較したグラフ。

出典:2018年度「体力・運動能力調査」(スポーツ庁)

「アレもしろコレもしろ」に疲弊

子育て

仕事に家事に育児に、さらに運動。社会の要求に女性たちは疲弊している(写真はイメージです)。

GettyImages/buena009

これについて毎日新聞は「30代女性の体力低下目立つ 社会進出で運動不足に」という見出しで記事を配信。

「30代女性の体力低下が目立っている。女性の社会進出が進み、子育てや家事と仕事の両立に追われ、運動不足に陥っている人も多いとみられる。専門家は『将来、深刻な体力不足とならないよう、今のうちに運動習慣を身につけてほしい」と話した』(2019年10月14日)

と報じた。

この報道を受けてTwitterには「あれもしろ、これもしろと言われてるように聞こえる。 体力づくりにまで気遣える環境を整えてください」「男性はほとんどが社会進出しているのに、なぜ子育てと家事の両立に追われ運動不足には陥らないのか」などの投稿が。

国立社会保障・人口問題研究所が9月に発表した「全国家庭動向調査」(2018年)によると、夫婦の平日の1日の平均家事時間は妻は263分、夫は37分。同じく育児時間は妻は532 分、夫 は86分と、それぞれ大きな差があることが分かっている。

トレーニング意欲向上の背景には切実な事情も

ビジネスパーソン

運動がしたい、そんな気持ちはあるけれど……(写真はイメージです)。

GettyImages/Santi Rodriguez

運動はしたい、でも時間がないのが現状だ。

トレーニングジムを運営するMTGが2019年9月に20歳~49 歳の首都圏に住む男女のオフィスワーカー1200 人を対象に行った調査によると、6割以上が「以前よりもトレーニングへの意欲や興味が高まっている」と答えている。

この場合のトレーニングは筋力の向上・維持や体を引き締めることを目的とした運動のことを指し、ジム通いには限らず、ランニングなども含む。トレーニングしたい理由として最も多かったのは「身体の衰えを感じているから」(46%)、次いで「健康増進が推進されているから」(39%)「太ってきたから」(38%)などの健康面への考慮が見える一方で、 「老後が不安で、なるべく長く働きたいから」(34%)と切実な声も多かった(複数回答)。

しかし、1度のトレーニングに費やす平均時間は「30分~60分未満」が32%と最も多く、約 9割が90分未満だった。

さらに58%は「トレーニングの時間をもっと短くしたい」と考えており、その理由として62%が「他にも時間を割きたいことがあるから」と答えている。

運動のネック「周囲の目」は、女性が男性の2倍

トレーニング

現在トレーニングの習慣はないが意欲が高まっている人に、始めるネックになることをたずねた。

出典:「トレーニングに関する意識調査」(MTG)

運動を妨げる要因には、男女差もある。

また「現在トレーニングの習慣はないがトレーニングへの意欲が高まっている」と答えた人に、「トレーニングを始める際にネックになること」を聞 いたところ、約7割が「時間の確保」と回答。「金銭面の負担」は47%だった(複数回答)。

さらに男女の違いもある。

「周りからの目」「運動が苦手」「どんなトレーニングをすればいいかわからない」と回答した割合は、女性の方がどれも2倍もしくはそれ以上の割合で多かった

調査を担当したMTGの担当者は言う。

「苦手意識は、子ども時代の経験に大きく左右されているのではないかと思います。『男の子は外遊び』などのジェンダーバイアスや、体育の授業で男子と比較されてつらい思いをするなどの『失敗』経験を、女性の方が多く積んでいるのではないかと。

『周りからの目』についても、女性が筋トレをするなどジムに通うことも最近は当たり前になってきましたが、今も男性に比べて周囲から『ナルシスト』などのレッテルを貼られる傾向があるのではないかという問題意識があります」

トレーニングのネックになる「周りからの目」は、男性5%に対し女性は10%だった。上記のようなレッテルの他にも、「(ジムに通うのに)メイクをするか迷う」「男性と同じ場所でトレーニングするのが気になる」「ジムでセクハラ被害にあった」など女性特有の悩みや被害もある。

時間と安全な場所の確保、そしてジェンダーバイアスの払拭……女性の体力低下の背景には、多くの社会問題が潜んでいる。

(文・竹下郁子)

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