木星の大赤斑と乱流が印象的なこの画像は、2019年2月12日に巨大惑星に接近したNASAのジュノー宇宙船によって撮影された。
NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Kevin M. Gill
- NASAの宇宙船と望遠鏡は、何十年もの間、太陽系の驚くべき写真を撮影してきた。
- 宇宙で撮影された最初の画像は1946年にロケットのカメラで撮影されたもので、それ以前には、天文学者は地球上の望遠鏡を使って天体の白黒画像を撮影していた。
- もしあなたが1960年代に生まれた子どもだったら、初めて月で撮影された写真を見て育っただろう。1970年代以降は、探査機が太陽系の遠く離れた惑星を訪れ、荒れ狂う大気、カラフルなリング、奇妙な衛星の写真を送ってきた。
- これまでに撮影された太陽系の写真を見てみよう。
何十年もの間、科学者たちはレンズを空に向けて宇宙の画像を撮影してきた。地球から打ち上げられた初期のロケットはカメラを宇宙に持ち込んだ。
最初のうちは、宇宙の写真は白黒で、ざらざらして、不透明だった。たとえば、宇宙で撮影された最初の写真は、33ミリの映画用カメラで撮影されたもので、アメリカの科学者たちが接収したドイツのロケットに縛り付けて、第二次世界大戦の終わりに打ち上げ、カメラは地球に落下して粉々になったが、フィルムは生き残った。
NASAとソ連が初めて月を探査し始めたときに、太陽系の初期の画像がもたらされた。1950年代と60年代に生まれた人々は、月面を歩いた最初の宇宙飛行士の象徴的な写真とともに成長した。
それ以降、ますます高度化したミッションが、より高性能なカメラを使って宇宙へと進出した。80年代の子供たちは土星と海王星の最初のクローズアップ画像を知っている。一方で、今日の子どもたちは火星の砂漠や木星の渦巻く雲など、高品質でカラフルな写真に慣れている。
ここには、あなたが生まれた頃に撮影された太陽系の写真もあるだろう。
何世紀にもわたって、人類は望遠鏡でしか太陽系を見ることができなかった。20世紀初頭、天文学者たちは惑星のぼやけた白黒画像を撮影した。この木星の写真は1906年に撮影されたものだ。
天文学者E・E・バーナード(E. E. Barnard)は、1906年にヤーキス天文台 の40インチ屈折望遠鏡でこの木星の写真を撮った。
Special Collections Research Center, University of Chicago Library
初期の撮影技術を研究していた天文学者にとって、彗星は人気のあるテーマだった。1907年、夜空を横切るこの彗星が撮影された。
1907年8月21日、ヤーキス天文台のブルース10インチ写真望遠鏡で撮影したC / 1907 L2としても知られるダニエル彗星の写真。
Special Collections Research Center, University of Chicago Library
土星と土星の輪も、1916年に望遠鏡で撮影されたこれらの画像のように、美しい。
カーネギー研究所の太陽観測所が著作権を所有する土星のステレオグラフ。
Library of Congress
日食も初期の天体写真の材料になった。1922年に撮影された皆既日食の画像では、月の後ろに太陽コロナが見える。
この写真は、1922年9月21日の皆既日食を記録するためにオーストラリアのウォラル・ダウンズへ行ったリック天文台の観測隊によって撮影された。
Special Collections Research Center, University of Chicago Library
1930年、天文学者のクライド・トンボー(Clyde Tombaugh)が、この画像を使って冥王星を発見した。トンボーは天体写真を比較する装置を作って冥王星を探した。
小さな矢印は、冥王星の背景の星に対する動きを示している。
Lowell Observatory Archives
もっと地球に近いところで言うと、太陽のプラズマを噴出している様子が1931年に撮影された。
ヤーキス天文台で撮影されたこの写真では、太陽のプロミネンスが高さ45万kmまで噴き上がっている。
Special Collections Research Center, University of Chicago Library
上空から撮影された地球の最初の写真は、ロケットからのものだった。1946年10月24日、科学者たちは33ミリの映画用カメラをドイツのV-2ロケットに取り付け、宇宙に打ち上げた。
1946年10月24日、33ミリ映画用カメラで撮影された、宇宙からの地球の最初の写真。
U.S. Army White Sands Missile Range/Johns Hopkins Applied Physics Laboratory
高度100kmに達した後、ロケットは地球に落下し、カメラは粉々になったがフィルムは生き残った。
旧ソ連は1957年、2基の人工衛星スプートニクで宇宙開発競争を開始したが、そのミッションでは写真は回収できなかった。しかし1959年、探査機 「ルナ3号」 を使って月の裏側を初めて撮影した。
1959年10月、ソ連の月探査機「ルナ3号」 が撮影した月の裏側の最初の画像。
NASA/Soviet space agency
月から地球を撮影した最初の写真は、1960年代半ばにNASAの月周回衛星が撮影したものだ。
1966年8月23日、NASAのルナ・オービター1号が撮影した月周回軌道上からの地球の最初の画像。
NASA
この月からの地球の最初の画像は、当時の技術では完全に処理できなかったため、撮影したテープは何十年も保存されていた。
有名な「地球の出」の写真は、地球に対するまったく新しい見方をもたらした。アポロ8号の宇宙飛行士ウィリアム・アンダース(William Anders)は、彼のチームが1968年に初めて月を周回した人類となったときにこの写真を撮影した。
1968年12月22日、米航空宇宙局 (NASA) の宇宙探査機アポロ8号が撮影したこの望遠写真では、月の地平線から地球が昇っている。
NASA
地球が月の地平線から昇るのを見て、宇宙飛行士たちは撮影したがった。アンダースはBBCのドキュメンタリー番組のインタビューで次のように語った。
「他の二人は私にカメラをくれと叫んでいました。私は長いレンズのついたカラーカメラを持っていた。フランク・ボーマン(Frank Borman)に白黒を渡した。ジム・ラヴェル(Jim Lovell)が何を使ったか覚えていない。そして我々は写真を撮りまくった」
1960年代の最後の年、最初の月面着陸に成功。宇宙飛行士のニール・アームストロング(Neil Armstrong)とバズ・オルドリン(Buzz Aldrin)が1969年7月20日、月面にブーツの跡を残した。
1969年7月20日、アポロ11号の宇宙飛行士、バズ・オルドリンが月着陸船の近くを歩く。
NASA/Newsmakers
月面の探査は1970年代まで続けられた。
アポロ15号のミッション中のジェームズ・B・アーウィン(James B. Irwin)宇宙飛行士と月面車。 この写真は宇宙飛行士のデイビッド・R・スコット(David R. Scott)によって撮影された。
NASA
アポロ計画は1972年に終了し、NASAはより遠くの目的地に向かった。
1972年12月13日、最後のアポロミッションで岩の陰に立っているハリソン・H・シュミット(Harrison H. Schmitt)宇宙飛行士。
NASA
NASAの探査機バイキングが、1976年に火星の軌道に入り、最初の火星の近接写真を撮った。
NASAのバイキング1号から送られてきたこのデジタル画像は、らせん状の谷で切り取られ、広い平野と大きな砂丘に囲まれている火星の氷冠を示している。
NASA/JPL/USGS
翌年、NASAはボイジャー1号と2号を打ち上げた。ボイジャーは太陽系の最も遠い範囲を探索し、最終的に星間空間に入った。1979年、ボイジャー1号は木星に近づき、ガスの巨人の画像を地球に送った。
ボイジャー1号は、1979年、木星に接近し、木星の60日以上を記録した。
NASA/JPL
科学者たちは初めて、木星の大気圏を間近に見ることができた。
ボイジャー1号のベストショットの一つは、木星の大赤斑と大きな3つの衛星を撮影したものだ。
イオは木星に重なっていて、右はエウロパ、カリストは下部の影に潜んでいる。1979年2月5日撮影。
NASA/JPL
1980年、ボイジャー1号は土星の最初の写真を撮影した。探査機が輪を持った惑星を通過するとき、その衛星を初めて撮影し、天文学者たちがこれまで知らなかった3つの衛星を発見するきっかけとなった。
土星とその2つの衛星、テティス(上)とディオネは、1980年11月3日にボイジャー1号によって、1300万kmの距離から撮影された。
NASA/JPL
これ以降、現在までに天文学者は土星を周回する82の衛星を発見した。そのうち20個は2019年に発見されている。
1986年、ボイジャー2号が天王星に到達し、水素とヘリウムの大気を持つ青い惑星を初めて撮影した。
1986年1月14日にボイジャー2号が約1200万kmの距離から撮影した天王星。
NASA/JPL
ボイジャー2号は1号の前に打ち上げられたが、1号の後に木星と土星を通過しました。2号は天王星や海王星などの最も外側の惑星への異なる経路にあったからだ。
1989年、ボイジャー2号は、太陽から遠く離れた寒い暗闇の中で海王星を訪れた。 天王星と海王星を訪れた唯一の宇宙船だ。
1989年8月31日にボイジャー2号が撮影した海王星。
NASA/JPL-Caltech/Kevin M. Gill
ボイジャー2号は海王星に近づいたとき、これまでに誰も見たことのないこの写真を撮影した。その後、2号は1号に続いて太陽系から恒星間空間へと飛び出した。
ボイジャー2号が1989年8月、約700万km離れた場所から撮影した、海王星の大暗斑とそれに付随する明るい部分を捉えた写真。
NASA/JPL
1990年代に生まれた子どもたちは、NASAの探査機ガリレオのおかげで、木星の衛星のいくつかのとても詳細な画像を見て成長した。 また、そのミッションは歴史上初めて小惑星に接近し、1993年8月28日にイダと呼ばれる宇宙の岩との2回目の小惑星の出会いから写真を返しました。
小惑星イダ(243 Ida)のこの写真は、1993年8月28日にガリレオによって3057〜3821kmの距離で撮影された5つの画像を合成したものだ。
NASA/JPL
1996年、ガリレオは、太陽系で最も活発な火山を持つイオの、この世のものとは思えないこの写真を送ってきた。この木星の衛星の最高解像度の写真だ
NASAは探査機ガリレオから送られた、1996年9月7日に撮影したカラー画像と、1996年11月6日に撮影した高解像度画像を合成し、この画像を作成した。
NASA/JPL/University of Arizona
ガリレオは、木星とその衛星の周りをほぼ8年間周回し、このようなクローズアップ写真を撮った。これは1997年のエウロパの氷で覆われた地表。ガリレオはエウロパの内部にに広大な海洋が潜んでいる可能性があることを発見した
木星の衛星エウロパの薄くて冷たい地殻は、1000km離れたクレーターから噴出した氷の粒子で覆われている。水蒸気からの鉱物が表面を赤褐色に彩る。この写真は、見やすくするために色が強調されている。
NASA/JPL/University of Arizona
1999年には、太陽・太陽圏観測機(SOHO)が、太陽とそのプラズマ噴火の詳細な写真を撮影した。
1999年9月14日、SOHOの極端紫外線画像化望遠鏡(EIT)が撮影した画像には、太陽から巨大な噴出が捉えられている。
ESA/NASA/SOHO
21世紀に入ると、土星とそのリング、衛星系を探索したカッシーニのようなNASAの新しいミッションが始まった。探査機カッシーニは、2004年5月に土星に接近し、この写真を撮影した
カッシーニが近づいた時、土星は大き過ぎたので、リングの端から端までを収めるには2枚の写真が必要だった。 この写真は2つを合成したもの。
NASA/JPL/Space Science Institute
カッシーニは、2004年6月に土星の軌道に入り、これまで見たことがないような土星の輪の写真を撮影した
2004年6月21日、カッシーニが土星から640万キロメートル離れた地点で撮影した土星の輪。
NASA/JPL/Space Science Institute
カッシーニは2005年、土星を周回しながら、太陽系の中で最も奇妙な形をした衛星ハイペリオンの写真も撮影した
土星の小さな衛星ハイペリオンには表面に深いくぼみがある。2005年9月26日。
NASA/JPL/Space Science Institute
カッシーニは、2008年に土星の衛星エンケラドスのこの見事な写真を撮影した。そして表面の割れ目から水と氷のジェットが宇宙に吹き出すことを発見した
2008年10月9日、カッシーニはエンケラドスの地表から25キロメートルの地点に到達し、この驚くべきモザイク模様を撮影した。
NASA/JPL/Space Science Institute
あなたが9歳で、ここまで読んだのなら、おめでとうを言おう。2010年代には、これまでで最も素晴らしい太陽系の写真が撮影されている
2013年8月22日、ロシアのセルゲイ・リャザンスキー宇宙飛行士が国際宇宙ステーションで6時間の船外活動の途中で休憩をしている。
Johnson Space Center
ニュー・ホライズンズは、2006年に冥王星とエッジワース・カイパーベルトに向けて打ち上げられた。2015年には冥王星に接近して写真を撮影した
ニュー・ホライズンズが撮影した4枚の写真と色のデータを組み合わせて、冥王星の全体像をより鮮明にした画像。
Jet Propulsion Laboratory/NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute
木星の荒れ狂う雲は、今でもカラフルでダイナミックな写真を撮る格好の材料だ。2011年に打ち上げられたNASAの木星探査機ジュノーは、2017年に撮影されたこの写真のような画像を、2021年にミッションを終えるまで地球に送り続ける
この画像は、NASAの探査機ジュノーの撮影データを使って、2人の市民科学者が作成したものだ。上部には「真珠の首飾り」と呼ばれる白い3つの嵐が見える。
Enhanced Image by Gerald Eichstadt and Sean Doran (CC BY-NC-SA) based on images provided Courtesy of NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
2006年に火星の軌道に入った火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービターは、火星の砂漠の風景を鳥瞰図で見せてくれる。この風に吹かれた地形の写真は、2019年9月に撮影された。
マーズ・リコネッサンス・オービターが撮影したこの画像には、幅70キロメートルの衝突クレーターの内部にある堆積岩と砂が写っている。
NASA/JPL-Caltech/University of Arizona
2011年に撮影されたこの二酸化炭素の氷原のように、探査機は科学者たちが最も興味持っている場所に焦点を当てている
火星の南極近くでは、凍った二酸化炭素が一年中残るほど温度が低い。
NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona
2013年には火星の表面にできたばかりのクレーターを撮影した
2013年11月19日にNASAのマーズ・リコネッサンス・オービターが撮影。このクレーターは幅約30メートルで、大きな放射線状の地形に囲まれている。2010年7月から2012年5月の間の衝突によって形成された可能性が高い。
REUTERS/NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona
もちろん、我が家に勝るものはない。人工衛星の増加により、地球の正確で詳細な画像が提供されるようになっている。探査を太陽系全体に拡大しても、科学者たちはまだ故郷の惑星をさらに理解しようと試みている
2017年1月15日に静止気象衛星GOES-16が撮影した地球。
NOAA/NASA
[原文:The coolest photos of the solar system taken in the decade you were born]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)