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「バチェラー3」に婚活世代が熱狂。これは“選ばれなかった女性たち”の物語だ

バチェラー

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はるか昔のこと、「月曜日はOLが街から消える」といわれたテレビドラマがあったらしい。

OLはもはや死語なので、今なら「金曜日はバチェ女でネットが荒れる」だろうか。それほどSNSを騒がせている番組が、『バチェラー・ジャパン シーズン3』だ。

社会派ドキュメンタリーの婚活番組

『バチェラー・ジャパン』とは、アマゾンプライム・ビデオで配信しているリアリティショーだ。20人の女性が、たったひとりの理想の独身男性(バチェラー)を奪い合うという“婚活サバイバル”のコンセプトを銘打ち、今回でシーズン3を迎えている。

筆者も生粋のバチェラーファンで、シーズン1も2も放送の後には毎週、職場の同僚と「バチェラー談義」で盛り上がっていた。その筆者が断言するが、今シーズンは歴代最高傑作 ── いや、番組としての格が違う、と言ってもいいだろう。バチェラー3は、社会派ドキュメンタリーなのだ。

「バチェラー」のGoogleトレンドの結果。

「バチェラー」のGoogleトレンドの結果。2017年と2018年に放送されたシーズン1・2を超え、シーズン3は大きな話題を集めていることがわかる。

出典:Google トレンド

そもそもバチェラーの醍醐味とは、“婚活サバイバル”の名の通り、プライベートジェットや花火などを使った豪華絢爛なデートや、どの女性が選ばれるか?というドキドキ感、そして、裏側でのオンナ同士のドロドロとした争いだった。

今回、そういった演出はほとんどないか、あっても目立たない。結婚に向けてガチ、そしてリアル ── それがバチェラー3のまず大きな特徴だ。

のっけから婚約指輪を持参して現れた3代目バチェラー・友永真也氏は、好みのタイプをハッキリと宣言。彼の具体的な希望にそぐわない女性は、バッサバッサと切り捨てられていく。

そこには「バチェラー、だまされないで!」と言いたくなるような男女の駆け引きはほとんど存在しない。終盤戦になるにつれ女性同士のケンカも影をひそめ、3人にまで絞り込まれた今は、もはや静かなバトルロワイヤルの様相を呈している。

テーマは「カミングアウト」

10月25日に配信される最終回は「衝撃の結末」という宣伝文句が使われているが……。

動画:Amazon Prime Video JP - アマゾンプライムビデオ

とはいえ、バチェラーが毎回「ローズセレモニー」で気に入った女性にバラを渡し、ローズを渡されなかった女性は去る、という構成自体は、シーズン1も2も変わらない。

バチェラー3が一線を画すのは、その内容の重苦しさだ。今シーズンでは、女性たちのさまざまな「カミングアウト」が重点的にフォーカスされ、それを女性がいつ・どう明かすか、さらにバチェラーがその告白にどう対応するか、が大きな見せ場になっている。

その最たる例が、エピソード6で田尻夏樹さん(30)が明かした「バツイチで11歳の子持ち」告白だろう。この他にも、0歳で父親に捨てられたという濱崎麻莉亜さん(22)や、グアムで無差別殺人事件に巻き込まれ、親戚を亡くした野原遥さん(28)などのトラウマを抱える女性たちが現れる。

カミングアウトで印象的なエピソードが、大阪・北新地の元ホステス、水田あゆみさん(30)によるものだ。妹がうつになったことが結果として両親の離婚を招いた、と告白した水田さんに対し、バチェラーが「家族のために自分を犠牲にしたから(ホステスになった)」と発言したのだ。

この発言にTwitterでは「ホステスを下に見ている」「視野が狭すぎる」と、バチェラーへのバッシングが起こった。水田さん本人も、以下のようにツイートしている。

「『家族のために自分を犠牲に』という言葉にすごく違和感。私はこのような認識はしておりません。大切な家族のために、可能な限り力を添えることは幸せなことです。」

結婚を考える人に、自分の過去やアイデンティティをどう告白するか」は、バチェラー3を形作る重要な裏テーマだ。そしてSNSでのバチェラー批判を受けて考えずにはいられないのは、自分がバチェラーだったらどうするか、カミングアウト対応の“正解”とはなにか ── という問いかけなのだ。

女性の生き方や価値観にも言及

「婚約者へのカミングアウト」というテーマは、必然的に女性の描かれ方をも変える。

キラキラな婚活デートに、ドロドロのオンナのケンカというコンセプトゆえ、バチェラーはつねに「中身が薄っぺらい」という批判にさらされてきた。

こうした批判を受けてか、シーズン1と2では主に「どうバチェラーを振り向かせるか」にのみ終始していた女性たちも、シーズン3では自らの生き方や価値観にも言及するようになっている。

先述のシングルマザー・田尻さんは、母親としての自らの複雑な葛藤をこう語る。

「(子どもがいることは)友永さん(バチェラー)じゃなくて私ががんばることだから。彼氏に、母の顔を見せる必要はないと思ってて……

「(子どもに会うことが)楽しみって言ってくれて、嬉しいと同時に不安」

また、山梨のぶどう農家娘という岩間恵さん(25)は、神戸に一緒に住んでほしいというバチェラーに対し、こう抵抗してみせる。

「なんでそんなに神戸にこだわるの?家族も友達もここ(山梨)にいるし、不安はある。今すぐに行けという感じだったら、今すぐには行けない」

岩間さんの言葉は「女性が男性の元に“嫁ぐ”」という伝統的な家族観へのアンチテーゼだ ── というのは、言い過ぎかもしれない。

しかし少なくともバチェラー3は、岩間さんをはじめとする女性たちが「結婚に何を望むか」を丁寧に描く。それは逆説的に「現代の婚活女性たちが、結婚について何に抵抗を感じているのか」を反映しているのだ。

“選ばれなかった女性たち”の物語

冒頭で言及した「金曜日はバチェ女でネットが荒れる」についても言及しておこう。

複雑な家庭事情、そのカミングアウト。ほとんどの女性たちはその後に、ローズセレモニーで“退場”を告げられる。運命のバラはたった1本だ。

だからこそ、バチェラー3では今までになく、SNSでの議論が紛糾している。バチェラーの言動にも、回を追うごとに賛否両論の嵐が吹き荒れる。

「水田さんのせきらら家庭事情が涙なしでは居られなかった。お父さんが僕がもっと支えられたらよかったんやけどって言った時に咄嗟に『そんなことないよ』って言った辺り涙腺崩壊した。絶対幸せになってほしい。真也じゃない。はっきりした。真也じゃない、岩間さんに譲っとこ。#バチェラー3

なぜ私たちは、バチェラー3をこんなにも前のめりになって見てしまうのか?

それは、誰もがどこかで、傷を負いながら「選ばれたい」と努力し、けれどもうまくいかなかった ── そんな経験をしたことがあるからだ。だから私たちは、バチェラーで切り捨てられる女性たちを、他人事とは思えない。

『バチェラー3』は、結婚する女性の物語ではない、これは“選ばれなかった”女性たちの物語なのだ ── そう気づいた時、ふと合点がいった。

最終回は、10月25日(金)に放映される。

(文・西山里緒)

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