日本女性の受診率が低い理由、20代の多数派は「めんどうだから」。同世代が行動を変えるカギを考えてみた

日本人女性の健康診断の受診率は男性に比べて約10%低く、30代女性では半数近くが受診していないことが、厚生労働省の調査で明らかになっている。

長寿大国の日本だが、健康診断や人間ドックの受診率が低いことは社会課題。中でもなぜ、女性の受診率は低いのだろうか?

国際的に見ても日本の受診率は低い

国際的にみた子宮頸がん、乳がん検診の割合

諸外国では乳がん・子宮頸がんは国策として対策型検診が行われているため、高い受診率となっている。

出典:厚生労働省「がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン」ウェブサイト

2016年の厚生労働省の国民生活基礎調査によると、健康診断や人間ドックを受診していない人の割合は、20〜60代の中で30代女性が最も高く、43.8%が未受診だった。30代男性の未受診率25.1%に比べると、20%近くの開きがある。20代女性も39.5%が未受診で、2番目に低い値となった。

20〜30代女性の受診は、乳がん・子宮頸がんの早期発見につながることからも重要だ。しかし受診率がなかなか上がらないことが問題視されている。

厚労省のがん検診キャンペーンによると、欧米諸国での子宮頸がんの検診受診率は、20〜60代で75%前後。日本は同42.1%と遅れをとる(上グラフ参照)。

受診しない理由は「受ける時間がなく必要がないから」

病院の風景

病院に電話して予約するハードルは高い、20代の筆者はそう思う。

撮影:今村拓馬

ではなぜそもそも、受診をしないのか?厚労省の調査によると、人間ドックや健康診断を受けなかった理由は、20代では「めんどうだから」(25%)が最も多い。筆者の周囲から聞こえてくるのも「受ける時間がない」「必要性が感じられないから」の声。

20代の筆者自身も、自宅にがん検診のハガキが届き、母親に病院に行くように言われているがめんどうくさく、数カ月放置している。母は、若い頃に乳がんになった自らの体験を語って説得してくるが、それでも行く気になれない。

そもそも病院に電話して予約することのハードルが高い。虫歯になったり、どこか体の異変があったりしたらさすがに病院に行こうと思うが、予防のために行くというのでは、後回しになってしまう。

また、30代女性の受診率が最も低い理由として、家事や子育てが忙しくなり自分の健康をないがしろにしてしまうことが挙げられている。

都内のIT企業に勤務するミチルさん(40代、仮名)は、育児休業中に健康診断が受けられなかったそうだ。

「生後3カ月の子どもがいる状態で、前日から検診のために水を飲まないのは、授乳があるので無理と思ったんです。あと、子どもの預け先もなかったからその年は諦めました」

子育て中、女性は時間の確保が難しい。また子どもが小さいと、検診中やその前後に誰かに預ける必要もあり、どうしてもハードルが高くなるようだ。

インスタ映えの健康診断所にワンコインの "レディースドック "

Ladyknows

10月7〜11日に開催されたポップアップイベント『Ladyknows Fes 2019』。

出典:Ladyknows公式Twitter

そんな中、10月7日から11日に東京・渋谷で開催されたイベント『Ladyknows Fes 2019』の取り組みは、女性の受診に向けて背中を押してくれるものだった。

同イベントを主催したLadyknowsは、広告代理店で働く辻愛沙子さん(24)さんが2019年4月に旗揚げ。女性の健康や生き方・働き方をエンパワメントしていくプロジェクトだ。『Ladyknows Fes 2019』では、乳がん・子宮頸がん検診をワンコインで受診できる“レディースドック”や、インスタ映えする健康診断所などが話題を呼んだ。

同世代が手がける、楽しくて行きたくなるようなこの健康診断所は、若年女性の健康や未来に貢献したい思いが前面に立ち、強い共感を呼ぶものだった。SNSを通じた効果的な情報発信のおかげもあって、「女性の健康」という素通りしてしまいそうなテーマを、グッと身近に引き寄せる力があった。

これから診断率をあげるのは私たちだ

女性

撮影:今村拓馬

普段、ふつうに暮らしていたら、健康診断について思いを馳せることはそんなにない。おっくうさや忙しさがどうしても勝ってしまい、後回しになりがちだ。

だからこそ、社会問題として意識したときも、国が上から指示する方法では、この流れはなかなか変えられないように思う。鍵になるのは、同世代を通じて情報が伝わり、そこに共感が生まれることではないか。

Ladyknowsの取り組みのように、同世代のインフルエンサーたちがこうした社会問題に目を向け、啓蒙する動きは、共感を呼ぶことで少しずつみんなの意識を変えていくはずだ。

(文・三田理紗子)

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