バイリンガル人材の需要は、2010年から2015年の間で2倍に。
Courtesy of Jaromir Chalabala/EyeEm/Getty Images
※この記事は2019年11月7日初出です。
2017年のNew American Economy(NAE)のレポートによると、2010〜2015年の間に、バイリンガル人材の需要は2倍以上となり、これまでになく多くの企業が複数言語を話せる人材を求めている。
ますますグローバル化するビジネス環境のなかで、短期間で新たな言語を習得できる人が必要とされるのは当然だ。
トリニティ・ワシントン大学非常勤講師レオナルド・ダ・バロスは、2014年に同大学のウェブサイトのブログにこう書いた。
「新しいクライアントや企業と、その人たちの母語を使って直接コミュニケーションできることは、持続的で安定したビジネス関係を築くための最初のステップとなる。だからこそ、マルチリンガルの人は誰でも自動的に、仕事や昇格の競争で同僚たちよりも優位に立てるのです」
でもそれは決して簡単なことではない。目下の仕事のことで頭がパンパンになっていたらなおさら、新たな言語を早く習得するのは難しい。
学習ソフトウェア会社Ceregoが発表した、2019年度のThis Is How We Learn Reportによると、一つのコースをマスターするのには、56日間でおよそ15.5時間の学習が必要となる。しかも、私たちが読んだり聞いたりしたことの86%はほんの数日で記憶から消えてしまうそうだ。
Insiderは外国語を記録的な速さで習得した6人に、その方法を聞いた。
キーワードやキーフレーズを集中して練習する
30年以上の経験を持つ広報のプロであるバリー・M・シュワルツはカードゲームのLingoを使用した。
Courtesy of Barry M. Schwartz
Schwartz Public Relationsの社長で30年以上の経験を持つ広報のプロであるバリー・M・シュワルツは、ひんぱんに海外に行く。
「仕事をする上で出張は欠かせません。私の場合はヨーロッパ、南アメリカ、アジアによく行きますね」と語る彼だが、以前は多くの人と同じように、短期間で外国語を流暢に話せるようになるのは非常に難しいと思っていた。
そこで、急に流暢になることを目指すのではなく、実行可能な学習方法として、数は少なくても旅行に必要なキーフレーズを学ぶことが「最も有益」だと考えた。
「そうすれば現地での移動がもっと楽になるし、現地のクライアントやメディアや出会う人たちに好印象を与えることができるんですよ」
シュワルツが使用したのは、Lingoというカードゲームの教材だ。Lingoのウェブサイトには「わかりやすく、簡単に学べる発音付き」の54個の最も重要な単語の翻訳を提供すると書いてある。
シュワルツは、Lingoは「ちゃんと言語を学ぶ方法」ではないと認めながらも、ビジネス業界の人が仕事でコミュニケーションが取れるくらいのスピーキング力をつけるには十分価値があると強調する。
最もよく使われる動詞とその活用を学ぶ
言語学習用ポスターを販売するベンチャーを立ち上げたジョシュ・パルマー。
Courtesy of Josh Palmer
言語学習に情熱をそそぐジョシュ・パルマーは、高校の時にフランス語を学び、大学卒業後は2年間北京で働きながら中国語を学び(その間に国立台湾大学でMBAを取得)、その後スペインに留学してフルタイムの学生としてスペイン語を習得した。
去年パーマーは、言語習得をより早く、より簡単にできるポスターを販売するLanguagePosters.comを立ち上げた。
起業時はスペイン語、フランス語、イタリア語のポスターのみを販売していたが、今では20カ国以上で、8言語のポスターを10種類販売している。最新のポスターは、力試しができるように、不規則動詞の活用が見えなくなるデコーダー眼鏡付きだ。
このビジネスは、もっと早く、もっと効率よく言語を習得したいというパルマー自身の願望から生まれた。ちょうどスペイン語を学ぶためにバルセロナに引っ越したばかりだったパルマーは、スペイン語をもっと早く覚えるための教材を探していたが、「小学2年生レベルに向けて作られたもの」しか見つけられなかったという。
「高校でフランス語の授業を取っていたので、不規則動詞の活用を覚えるのが一番厄介だということはわかっていたんです。すべての文字を発音するスペイン語だとなおさらそうだと思った。だから、暗記するためのポスターを自分で作ったんです」
とパルマーは言う。「ポスターは見た目も大事だと思っていました。そうでないとルームメイトたちがリビングに貼らせてくれませんからね」。
パルマーは動作を示す言葉である動詞は言語を話すうえで非常に重要だと話す。
「自分の周りでよく使われているモノの名前は自然に覚えます。それに、(仮に名前を忘れても)いつでも指を差して『あれ』とか『これ』とかって言うことはできる。
でも、ジェスチャーのプロでないかぎり(動詞はなかなか表現できないので)、よく使われる動詞は知っておくべき。例えば『これが欲しいです』とか『あれを持っていますか?』を何と言うのかがわかると、かなり上達しますよ」
問題集と常用語辞典を活用して基礎を固める
クライアントとコミュニケーションを取るためにスペイン語を習得した弁護士ラッセル・ナイト。
Courtesy of Russell Knight
弁護士ラッセル・ナイトは、スペイン語の学習が自分の法律家としてのキャリアに役立つと、30歳の時にすでに見越していた。2007年にシカゴ西部にある小さな事務所で法律家としてのキャリアをスタートさせたナイトは、スペイン語を早く習得しなければというプレッシャーを感じていた。
「その年は法律業界が大暴落して、キャッシュを持って事務所にやってくるのはスペイン語を話す人たちだけでした。新人弁護士には他の転職先もない状態だったので、スペイン語を早く習得する必要があったんです」
できるだけ早く言語を学ぶために、ナイトは常用語辞典を使って「昔ならではのやり方」で学ぶことにした。
「最もよく使われる単語が、使われる頻度順に掲載されている辞書です。大抵の言語は、会話の9割が500ワードあれば足りると言われています。だから、まずはじめの1000ワードを暗記したんですよ」
ナイトにとっては、クライアントとコミュニケーションをとれるようになるためには必要なことだった。
「いまでは、クライアントの3分の1がスペイン語を話す人たちです」とナイトは言う。
基礎が固まると、スペイン語をもっと巧みに使えるようになるために、文法強化に時間を費やした。
「空所を埋める問題が載っている文法問題集を買うしかないですね。面白くはないし、何時間もかかります……。でも効果は確かです」
新しい言語で即興で話せるようになるほど上達するには、頻出単語や文法をマスターするよりもずっと時間がかかるとナイトは言う。
「すぐその単語を頭の中に登録して、口からぽんぽんと出てくるようにするのは、筋肉の働きを脳に記憶させるようなものです。でも基礎を学ぶだけなら、数カ月でできますよ」
話している自分の声を録音する
英語能力トレーニング会社オーナー兼ディレクターのアンナマリー・フォウラー。
Courtesy of Annemarie Fowler
英語能力トレーニング会社Speak Confident EnglishとFluency Schoolのオーナー兼ディレクターのアンマリー・フォウラーは、フランスに赴任する外交官の夫に同行するためにフランス語を早く習得しようと、フランス語を話している自分の声を録音した。
「私は言語学習のプロです。ですからどうすれば言語を早く習得できるかわかっているべきでした。ところが、実際に自分でこのやり方を見つけるまで何年もかかりましたね」とフォウラーは言う。
学習中の言語で話している声を録音したら、「それを聞いて、分析する。(もし自分の声を聞くのが不快に感じたら、消去する)そしてもう一度繰り返す」と良いそうだ。
始め方がよくわからなければ、まずは1日のできごとを要約することから始めたらいいと彼女は言う。「職場であったことを話したり、今後交わすことがわかっている会話を練習したり、単に見たばかりの映画の内容を話すのでもいいでしょう」。
言語学習のプロであるフォウラーはこのやり方を取り入れると、流暢さや単語力、フランス語でコミュニケーションすること全般においての自信に「すぐに効果が表れ始めた」という。
彼女はいまだにこの方法を使ってフランス語能力を維持していて、言語を早く効率的に吸収したいというクライアントにも採用しているという。「第二言語を話すことが恥ずかしかったり不安だったりする人には特に役立つ方法ですね」と彼女は言う。
また、うまく話せるようになるためには、まず練習しなければならないので、この方法は言語を早く効率よくマスターするのに役立つのだという。
「自分の声を録音するというのは、どこに住んでいても、どんなレベルであっても、スピーキングを練習する良い機会になるんです」
フォウラーがこのアプローチが効果的だと思うもう一つの理由は、自分の弱点を発見できることだ。
「どこが弱いのかを知らなければ、直すことはできません。録音した声を分析すると、知識や能力の面で何が足りないのかが見えてきます。そして、意見を言うために必要な単語や文法が自動的に出てくるようになれば、自信にもつながるし、流暢に聞こえるようにもなります」
ネイティブスピーカーとビデオチャットを
デジタル・ツールを使って言語を習得したSEOスペシャリストのブレット・ドーンズ。
Courtesy of Brett Downes
DFY LinksのSEOスペシャリスト、ブレット・ドーンズは、2014年にグアテマラで11カ月間働くために、スペイン語を短期間で上達させた。その時に何よりも役立ったのはデジタル・ツールだ。
「僕が仕事をしていたホステルの従業員は皆スペイン語しか話せませんでした」とドーンズは言う。
「グアテマラに行く前に、Duolingoというアプリをスマホにダウンロードして、毎日2時間、3カ月間使い続けました」
彼はそれにプラスして、スカイプで教師と話す1時間のレッスンを1週間に3回受けられるスペイン語のオンラインレッスンに登録した。
「アプリは単語や活用変化や形式的なことを覚えるのに役立ちました。またスカイプで誰かと話すことで、スペイン語で実際に人と交流したり理解したりするのを学べましたね」
ドーンズはまた、仕事が始まる前の1カ月間、スペイン語を話す家族のもとでホームステイしたことで、さらに言語により深く精通することができたという。
「無理やりスペイン語しか使えない環境を作ったんです。でもそうしたことで本当にスペイン語を理解できたと思いますね。それからスタッフやお客さんと長い会話ができるようになったし、同時に仕事で必要なメールや文書を読み書きしたり理解したりできるようになったんです」
ドーンズはいまでもグアテマラのスペイン語学校でリモートで働いていて、週に1度ではあるが言語能力を維持するためにスカイプレッスンを続けている。
オーディオ・テキストを聞いて、常に話すこと
音声モバイルアプリTalk Travelの創設者ソーラブ・ジンダルはオーディオ・テキストを活用。
Courtesy of Saurabh Jindal
音声モバイルアプリTalk Travelの創設者ソーラブ・ジンダルは言語学習のマスターだ。
現在はパリ在住のジンダルは、「日常生活だけでなく職場においても役立つから」という理由でフランス語を学習している。その前はチリに1年住んでいて、同じ理由でスペイン語を学んでいた。
「ひんぱんに旅をするので、基礎は抑えようと思っています。少なくても新しい言語の単語をいくつか覚えて、現地のコミュニティーに溶け込んだり、コミュニケーションをとるきっかけになればと思っています」とジンダルは言う。
彼にとって、新しい言語を「モノにする」ための最短の近道は、ポール・ノーブルの『Next Steps in Fremch』や『Learn Spanish』のようなオーディオ・テキストを使うことだ。
「1日にとにかくたくさん聞きます。音楽の代わりに聞くことだってありますよ」
オーディオ・テキストは、アクセントを理解する力をつけるのに最も役立ったという。「初めは何を話しているのか聞き解くのがつらかったんですが、いつもオーディオ・テキストを聞いていたら、話されている言葉を理解する能力が強化されましたね」と彼は言う。
それから、外国語を話す人たちがいる「実際の環境」に身を置くこともまた役に立つという。
「その人たちの言語で会話をする環境に無理やり自分を置くことで、その言語で考えたり、単語を使うようになります。言語学習は一にも二にも練習です。私はいかにブロークンでも、話せる時にはいつでも話そうとしましたよ。でも徐々にうまくなってきて、いまではそこそこのレベルで話すことができるようになりました」
[原文:The best way to teach yourself a new language fast, from 6 people who've done it]