ゆうこす、佐渡島庸平に聞く「やりたいことの見つけ方」

イベントの様子

仲間を巻き込みながらやりたいことを実現するには?一人ひとりの持ち味を生かしながら成果を出すには?取引先やチームと気持ちのいい関係を築くために必要なことは何だろう?ビジネスパーソンは日々、チームビルディングの課題に直面している。

Business Insider Japan(以下、BIJ)編集部は2019年10月17日、『7つの習慣 賢者のハイライト』(キングベアー出版)発売を記念し「仲間ができる『習慣』の身につけ方」をテーマにイベントを開催。

アイドルを経て「モテクリエイター」として活躍するゆうこす氏、講談社を経て、作家やクリエイターのエージェント会社・コルクを設立した佐渡島庸平氏が登壇し、ファンや企業といい関係を築くために大切にしている習慣や、シナジーを生み出し続けるチーム作りのために大切にしていることについて、BIJ統括編集長の浜田敬子をモデレーターに語り合った。

Q.モテるために、SNSへの情報発信で気をつけていることは?

ゆうこすさん

ゆうこす(菅本裕子)さん。1994年、福岡県生まれ。2012年にアイドルグループ「HKT48」を脱退後、タレント活動に挫折しニート生活を送るも、2016年に自己プロデュースを開始。「モテクリエイター」という新しい肩書きを作り自ら起業。現在はタレント、モデル、SNSアドバイザー、インフルエンサー、YouTuberとして活躍中。10~20代女性を中心に自身のInstagramやYouTubeチャンネルで紹介するコスメ等が完売するなどその影響力は絶大であり、またライブ配信中に商品を販売する"ライブコマース"におけるパイオニア的存在。

第1部のテーマは、「賢者に聞く『結果を出すための習慣』」。ゆうこす氏、佐渡島氏は、2019年10月に『7つの習慣 賢者のハイライト』(キングベアー出版)を上梓。同書は全世界3000万部、日本国内220万部の売り上げを誇るビジネス書の金字塔、スティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣』(キングベアー出版)を、時代をリードする7人の賢者が読みながら書き込んだメモや言葉をそのまま掲載することで、その思考の足跡を読者が追体験できるようにしたもの。ゆうこす氏は「第4の習慣 Win-Winを考える」、佐渡島氏は「VTUBERドラゴン桜 桜木建二先生」として「第6の習慣 シナジーを創り出す」をそれぞれ担当した。

まず、ゆうこす氏が登壇し、「ゆうこす流・ファンや企業に“モテ”続けるための習慣」について語った。モテクリエイターと名乗りSNSで情報を発信し、同世代女性のインフルエンサーとして活躍しているゆうこす氏。「物心ついたときから、ずっと恋愛のことしか考えてない。男女問わず愛されたいという思いが強かった」と語り、「自分と同じような女の子たちの背中を押せたら」と発信を始めたという。発信の上で気をつけていることは、『7つの習慣』における第4の習慣でもある「Win-Winを考える」ことだ。

クライアントさんと私のWin-Winだけでなく、Win-Win-Win、ファンのみんなも喜んでほしい。SNSをやっていると、24時間365日、フルタイムでカスタマーサービスをしているような感覚。ファンのことを考えない時間がないんです」

Q.モテるためのセルフブランディングで大切にしていることは?

ゆうこすさん

「物心ついたときから、男女問わず愛されたいという思いが強かった」と話すゆうこす氏。ファンと企業、そして自分自身の3者が幸せになる方向を考え続けている。

そんなゆうこす氏は、ライトなファンに対してはYouTube、もう少しゆうこすを知りたいという人にはInstagramとTwitter、コアなファンに向けては生配信……というように、ブログとSNSを細かく使い分け、それぞれの視聴者、ファンの気持ちを考えて発信を行っているという。

こうしたインフルエンサーとしてのきめ細やかな仕事において、Win-Win-Winを狙うことはもちろんベストだ。だが、勝ち負けにこだわりすぎたり、相手に媚びて「Lose-Win=相手の幸せのために自分が負ける」を選ぶのは違う。ゆうこす氏は時には潔く「No Deal=取引しない」を選択することもあると語る。

「私が今、楽しくお仕事ができているのは、最初からこのNo Dealの感覚があったからだと思っています。Instagramを始めてフォロワーが1万人を超えてくると、『商品を紹介すれば5万円』といった誘いが増えるんです。でも、自分とクライアント、ファンのことを考えて、誰か一人でもWinでない場合はお断りしました。でも、そのときにオファーを無視するとか、ただ『嫌だから』とは言いたくない。

『こうしたらどうか』と別の提案をしたり、それでも納得がいかなかったらなぜ受けたくなかったのか理由を明確に伝えるように努力してきたので、私の“モテ”というハッシュタグはより強いものとしてブレなかったし、相手に対してより誠実になったのかなと思います」

『7つの習慣』では、人間関係には6つのパラダイムがあるという。「Win-Win」「Win-Lose」「Lose-Win」「Lose-Lose」「Win」そして「Win-Win」をさらに一歩進めた「Win-Win or No Deal」だ。「No Deal」とは「取引しない」ということ。ゆうこす氏は関係者の「Win-Win」を徹底的に考え実現しようとするからこそ、実現しないときには「取引しない」ことも選べるのだろう。

アイドルを引退したときは稼ぎがゼロだったというゆうこす氏。その頃は「お金がのどから手が出るほどほしかった」というが、自分のゴールをしっかり設定し「仕事をする相手のWin」を考えていたからこそ「No Deal」を選べた。ゆうこすさんは話す。

“モテ”は成熟と言い切れる。(7つの習慣では) 成熟とは相手の気持ちを考えつつ、自分の気持ちも言える人のこと。それって難しいですよね。こうすれば好かれるかなと相手の気持ちばかり考えていたら、自分は辛い。私は成熟するための練習をここ5年間ほど、SNSでしていたのだと思う。自分の気持ちを相手に届けるためのSNS。そうでなかったらただの独り言bot。SNSを細分化して分析し、『こういう人に届けたい』と思いながら、多くの人と触れ合えたことが成熟のための練習になったんだろうな」

Q.自走できるチームを作るために、リーダーは何をすればいい?

佐渡島庸平さん

佐渡島庸平(株式会社コルク 代表取締役)さん。2002年講談社入社。週刊モーニング編集部にて、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年講談社退社後、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。従来の出版流通の形の先にあるインターネット時代のエンターテインメントのモデル構築を目指している。

次に「コルク代表佐渡島庸平に聞く、シナジーを生み出し続ける習慣」として佐渡島氏が登壇した。佐渡島氏は今回の新刊で『7つの習慣』の「第6の習慣:シナジーを創り出す」について読み解いている。ここでいうシナジーとは「全体の合計は、個々の部分の総和よりも大きくなる」ということ。組織なら、個人プレーではなく、チームで動くからこそ想像もつかないものが生まれるという状態を指す。佐渡島氏はこれをどう実践しているのか。

佐渡島氏は講談社の漫画雑誌編集者として10年ほど勤務したのち、会社を設立した。

「会社を作ったときには『世の中を変えたい』と思ったわけですけど、それまでマネジメント経験がほぼなかったため、相変わらずプレーヤーとして振る舞っていた」

講談社で編集者として働いていた頃の仕事相手は、実績ある作家や漫画家、デザイナーばかり。佐渡島氏の言わんとすることを汲み取って、さらにそのアイデアに磨きをかけてボールが返ってきた。だが、起業後は状況が変わる。

「僕が言う目標に対していろんな人が手伝ってくれたわけだけど、シナジーが生み出せない。ただ僕が『やりたいことはこれだ』と言い続けているだけで、あとは『みんながよきに動いてくれよ』と言っている状態 で、そのことに僕自身が気付けていませんでした」

他の革新的なスタートアップと比べて成長率が低い、仲間たちの才能を生かしきれていない。そうした課題に対し、佐渡島氏はどのように向き合ったのか。

「チームづくりについて考えていた時、大先輩の経営者に『マネジメントってどうすればいいんですか』と質問したんです。すると、『お前はマネジメントするな、リーダーになれ』と言われました。3年くらい前のことで、当時は意味があまりわかってなかった。でも今、僕は代表取締役として方向性を示し、別の人に社内メンバーのマネジメントを任せています」

佐渡島氏は自分自身を「こだわりが強い」と分析する。社員に求める要求は、作家への連絡の仕方からSNSの使い方に至るまで、非常にレベルが高い。当初はそうした細かなところまで気付く集団を作りたいという思いがあったのだという。その上で、社員には「フラットに接していいよ」と言っていたが、会社組織において社員から見ればトップはトップ。コミュニケーションのずれが生じていた。

「『時間の使い方が間違っている』と提言されて、僕は社員に対して細かく言う時間をつくることはやめました。僕が細かく言うと、みんなの『自分たちで調整してみよう』という気持ちがくじかれる。リーダーは細かいことを言うのではなく、背中を見せる仕事。執行役員に対しては今もいろいろと言っていますが、それをメンバーに伝えるかどうかは執行役員に任せています

佐渡島庸平さん

「リーダーは細かいことを言うのではなく、背中を見せる仕事」。佐渡島氏は代表として方向を示し、細かいマネジメントは執行役員に任せている。

自分と社員との認識のずれに気付き、自ら軌道修正した佐渡島氏。『7つの習慣』の「第6の習慣 シナジーを創り出す」でも書かれているように「同一になること」を求めるのではなく「自分と他者の違いに価値を置く」というシナジーの本質を実践したのだともいえるだろう。現在は、シナジーを創り出すためにどのようなことを心がけているのだろうか。

基本的に、人は自分がやりたいと思わない限り絶対やらない、人の意見は聞かないものだから、鏡のような形で自分の姿が見られるようにしたい。自分で自分のことがわかるようにするために、見せないといけない数値は何だろう、何をオープン情報として見せて気付かせればいいのだろう、何をリマインドすればいいのだろう、といったことを役員のチームと話し合っています」

Q. 「やりたいこと」より「やるべきこと」を優先すべき?

浜田敬子

Business Insider Japan統括編集長の浜田敬子。

第2部は、「『結果を出すための習慣』の作り方」と題したパネルディスカッションが行われ、会場からの質問に、ゆうこす氏と佐渡島氏が答える形で行われた。

会場からは「やりたいことよりやるべきことを優先したほうがいいのか」という質問もあった。2人はやりたいこととやるべきことが重なっているが、世の中はそういう人ばかりではない。どう優先順位をつけるか、それともどう一致させるのか。これに対し、佐渡島氏は次のように語った。

難しい言い方になるかもしれないけど、やるべきことなんてほとんどない。例えば、世の中には学校のいじめやアフリカの飢餓などいろんなレベルのトラブルがありますが、どちらを優先してやるべきかということは判断できませんよね。自分で意志選択している時点で、それがやりたいことでありやるべきこと。自分のやりたいことが、周りの誰も共感しない、社会においてやるべきことではない場合、それは本当にやりたいことなのか。この先何年間もやりたいことと言い続けられるのか。それは、今一瞬やりたいことであって、長期的にやりたいことではないはず。やるべきこととやりたいことは深く考えると一致するはずだと思います

Q.そもそも、やりたいことが見つからないのですが…… 。

佐渡島さん

「やりたいことが見つからない」という質問に、佐渡島氏は堀江貴文さんを例に挙げ「堀江さんは気になったことはすぐに試す。試した後に自分の感情をもってやる・やらないを決めている」とアドバイスした。

「そもそもやりたいことが見つからない」という若い人には、こんなメッセージも。

「やりたいことがわからないという子たちは、やりたいことを職業にしないとならないと考えているのでは。お金も大事ですけど、職業にする前にやりたいことを考えてみたら、私の場合は“モテ”だった。“モテ”というゴールから、やるべきことを探しました」(ゆうこす氏)

いきなりズドンと心に刺さることは世の中に存在しない。『どうやったらやりたいことが見つかるか』というのは、『自分が楽になる魔法を教えてください』という甘えたことを言っているだけ。堀江(貴文)さんは、あんなに忙しいのに、『いいね』と思ったことは絶対に一度は試す。流される力が本当にすごいと思う。試した後に自分の感情をもってやる・やらないを決めています」(佐渡島氏)

『7つの習慣』では望む結果を得るために「第1の習慣 主体的である」「第2の習慣 終わりを思い描くことから始める」も重要だとされている。長期的なゴールを思い描き、やりたいことを自分で選択するという主体性は、やはり、ゆうこす氏、佐渡島氏という現代の賢者にも共通する習慣のようだ。


今回のイベント参加者はミレニアル世代のビジネスパーソンだけでなく、リーダー世代も多く、熱心にメモを取る姿が目立った。パネルディスカッションの後はネットワーキングの時間が設けられ、名刺交換や談笑をするなど和やかな雰囲気で場が締めくくられた。

7つの習慣

『7つの習慣』は過去の「偉人賢人」の共通点を研究し、成功するための原則を体系化したもの。『7つの習慣 賢者のハイライト』では、現代の賢者であるゆうこす氏、佐渡島氏ら7人が、これを読み解いている。

ゆうこす氏、佐渡島氏にも共通する成功の原則『7つの習慣』

『7つの習慣 賢者のハイライト』について、詳しくはこちら

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