フェイスブック追い込むオカシオコルテス議員にザッカーバーグがタジタジ

アレクサンドリア・オカシオーコルテス議員

10月23日、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOに対する公聴会が開かれた。追及の急先鋒となったのが、アレクサンドリア・オカシオーコルテス議員だ。

REUTERS/Erin Scott

10月23日、米下院金融サービス委員会の公聴会にFacebookのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が出席した。彼が来ると、大体荒れ模様になる。

ザッカーバーグ氏がこの日出席したのは、Facebookが発行を予定している仮想通貨「リブラ」の安全性について証言するためだった。

しかし、矢は思わぬところから飛んできた。

主役は2018年の中間選挙で最年少議員として初当選して旋風を起こしたアレクサンドリア・オカシオーコルテス議員(30、以下AOC)。彼女の「Facebookこき下ろし」ぶりが、ハイライトとなった。

若者に「AOC」と頭文字で呼ばれる人気の同議員は、進歩派の急先鋒だ。 AOCは、過去の公聴会で年配議員の「詰問」もこなしてきたザッカーバーグ氏をタジタジさせた。

その主なやりとりをお届けする。

トランプ陣営流した広告削除を拒否問題

マーク・ザッカーバーグ氏

10月のトランプ陣営による広告への対応や、仮想通貨の「リブラ」に対するG20の厳しい判断など、Facebookにとっては逆風が続く。

REUTERS/Erin Scott

AOC「2020年選挙が間近なので、政治家がお金を払って、偽情報を流すことが可能なFacebookの政治広告について、聞きます。私が、黒人が多い地域をターゲットにして、間違った投開票日を政治広告で知らせることはできますか?」

ザッカーバーグ「いえ、できません」

オカシオーコルテス氏がこの質問をしたのは、10月上旬、トランプ大統領の選挙陣営が流した、ミスリーディングな広告を削除するのを、Facebookが拒否したためだ。

広告は、トランプ氏が下院の弾劾調査を受けるきっかけとなった「ウクライナゲート」の最中に打たれ、CNNなどは掲載を拒否した。

弾劾調査では、トランプ氏が電話会談でウクライナに対し、軍事援助の再開を交換条件に、ジョー・バイデン前副大統領らを捜査するように示唆したことが明らかになっている。

バイデン氏は、2020年大統領選挙の有力民主党候補とされている。

しかしトランプ陣営の広告は、バイデン氏が、息子が関係するウクライナ企業に対する捜査をしている検察官をクビにするように要請し、その見返りにウクライナ政府に資金を約束したという内容。「陰謀論」に基づいている。

「すぐには、お答えできません」

ザッカーバーグ

Reuters/Erin Scott

AOC「でも、あなたは、Facebookでは(政治広告の)ファクトチェック(事実確認、校閲)をしないと言いました」

ザッカーバーグ「政治家だけでなく誰でも、暴力に訴えるものや、身体的危害を与えうるリスクがあった場合、私たちは、その類のコンテンツは、削除します」

AOC「では、政治広告についての基準は、あるんですね」

ザッカーバーグ「はい、個別のことについては、です。危害を与えるという重大なリスクがあった場合です」

AOC「Facebook上で、共和党員をターゲットにして、グリーン・ニュー・ディール(注:AOCが起草し、民主党が推進する環境政策)に共和党議員が賛成票を投じたと政治広告にすることができますか。私は、政治広告のバランスについて知りたいのです」

ザッカーバーグ「すぐには、お答えできません」

AOC「あなたは、私がその広告を打てるかどうか知らないんですね。(中略) 政治広告に全くファクトチェックをしないことで、何が問題になりうるかわかりますか?」

ザッカーバーグ「嘘をつくことは、よくないことだと思います。嘘が含まれた政治広告を打つのも、よくないことです」

AOC「では、あなたは、嘘を削除するのですか、しないのですか。すごく簡単なイエス、ノーの質問です」

ザッカーバーグ「人々は、どの政治家に投票するかしないかに関わらず、自分たちの目で(広告を)見るべきだと……」

AOC「では、削除しないんですね。あなたがたは、良くないことだと警告するかもしれないけど、削除はしないんですね」

「えーと……言葉を全部覚えられなくて」

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舌鋒鋭い、AOCことアレクサンドリア・オカシオーコルテス議員。

Reuters/Erin Scott

次にオカシオーコルテス氏は、ザッカーバーグ氏が自宅などで、保守派の政治家や論客、ジャーナリストを招いて、オフレコの夕食会を催していることに言及した。夕食会については、政治専門ニュースサイト「Politico(ポリティコ)」が報じた

Politicoなどによると、夕食会の目的はトランプ政権をはじめ、トランプ氏を支持する保守派からの攻撃を緩和するためだという。Facebookの社員が過去に、「トレンディング」というよく読まれている情報コーナーから、保守派のコンテンツを削除していたことが報じられたからだ。

Facebookはその後、「トレンディング」を停止した。

AOC「あなたが、極右の、陰謀論を信じている、白人至上主義などありもしない、と言っている人たちとディナーをした時、SNSは保守派に対して偏見があると言われていることについては話し合いましたか。SNSが保守派に対する偏見があると、あなたは信じていますか」

ザッカーバーグ「えー、議員、えーと、すみません、文に……質問にあった言葉を全部覚えられなくて……」

AOC「では、次の質問にします。『デーリー・コーラー』という、白人至上主義者と関係があることがきちんと書いてある(ウェブサイトの)発行者を、Facebookの公式のファクトチェック担当として任命したことについて、説明してもらえますか」

ザッカーバーグ「もちろんです。ただ、私たちは、独立系だというファクトチェッカーを任命したりしません。デーリー・コーラーは、インデペンデント・ファクトチェッキング・ネットワークという団体に認められています。その団体は、ファクトチェッカーの厳格な基準を課しています」

AOC「白人至上主義者と関係がある発行者が、ファクトチェッカーとして、厳格な基準に合っていると思うのですか」

ザッカーバーグ「……」

AOC「どうも」

オカシオーコルテス氏は持ち時間を超過することなく、ザッカーバーグにも反論させずに質問時間を終わった。

Facebookは彼女が問題視した政治広告やファクトチェックの問題のほか、「リブラ」の安全性、さらに個人情報保護に対し万全の対策を取っているかどうかについて、社会やワシントンの激しい非難を浴びている。

政治広告の扱いについて失望した若者が、Facebookのアカウントを停止する動きさえ、再燃している。

(文・津山恵子)

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