エコ先進地域として知られるサンフランシスコ。
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小泉進次郎環境大臣が入閣後、政府が取り組むべき主要な社会課題としても言及した「プラスチックごみ対策」。
欧米ではすでにスターバックス、ネスレ、マクドナルドなど巨大企業が使い捨てプラスチックごみ削減への取り組みを発表している。
世界でももっともエコな都市のひとつとして知られるサンフランシスコでは、2020年までにプラスチックごみをゼロにすると目標を立てて市をあげて取り組んでいる。「エコ」を売り出したスタートアップへの投資も過熱している。
2019年にはプラ製ストローが禁止に
ウミガメの鼻に突き刺さったストローを引っ張り出す動画は世界に衝撃を与え、プラ製ストロー廃止の議論を呼び起こした。
動画:Sea Turtle Biologist
カリフォルニア州・サンフランシスコは、プラスチックごみの埋め立てを原則行わず、その排出量も減少し続けている、稀有な地域だ。そもそもサンフランシスコは、1960年代からヒッピーカルチャーの発信地としてエコに関心のある人たちが集まっていた。
その流れは、2007年の市内のスーパーやコンビニでのレジ袋禁止にはじまり、2019年には飲食店でのプラスチックストロー禁止、そしてサンフランシスコ国際空港内でのペットボトル飲料水の販売の禁止といった、市をあげての取り組みにつながっている。
行政だけでなく、企業もプラスチックごみの削減に意欲的だ。お隣・シリコンバレーでは、Facebookがオフィス内での使い捨てペットボトルの販売を禁止し、給水ステーションを設置している。
テック企業が集積するサンフランシスコには、「エコテック」や「グリーンテック」とも呼ばれる、環境問題に正面から取り組む企業も増加している。そのトレンドを3つのポイントにまとめた。
1.「エシカルファッション」が流行
履き心地の良さでシリコンバレーに浸透した「allbirds」。
出典:allbirds
まずあげられるのが、エコに優しいことを売りにしたファッションブランドの台頭だ。
なかでももっとも有名なのが、タイム誌が「世界一快適なシューズ」と評価したスニーカーブランド「allbirds」だろう。同社はリサイクルしたプラスチックボトルを靴ひもに活用している。設立から数年ですでに5000万ドル(約54億円)を調達し、ユニコーン企業の仲間入りを果たした。
そのallbirdsの競合としても知られる「Rothy's」も累計4200万ドル(約45億6000万)を調達している。同社は排出されたプラスチックを使った靴を製造・販売している。配達時のボックスにもリサイクル用品が使用するなど、環境にも消費者にもやさしい取り組みが話題を呼んだ。
プラスチック容器から作られたアウターを販売するスタートアップ「everlane」。
出典:everlane
「Everlane(エバーレーン)」もプラスチックからアウターを作っている企業だ。Kleiner PerkinsやSV Angelといった、著名なベンチャーキャピタル(VC)から累計1200万ドル(約13億円)の投資を受け、シリーズDでの調達をしている。3社の共通点は、糸にされたペットボトルの素材を活用する点だ。
Everlaneは、オフィスや店舗でも使い捨てプラスチックの削減に取り組み「エコロジカルなブランド」を大々的に売り出して成功したスタートアップという点でも特徴がある。
2.「詰め替え販売」がトレンドに
サンフランシスコは街をあげて、マイボトルでの水分補給を推進している。
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プラスチック容器の代替品として注目を集めるのが、詰め替え容器での販売を行う企業だ。
もっとも有名なのは、1975年に創業した老舗スーパー「Rainbow Grocery」だろう。店自体はベジタリアン向けのオーガニックスーパーだが、ほとんどの商品が量り売りだというのが特徴だ。
サンフランシスコの対岸・バークレーには「fill good」という企業がある。
2016年に設立された同社は、すべての製品をリサイクル可能なパッケージで販売することが特徴だ。その他、ショップにはマイボトルを持ち込むことができ、その場で食器用洗剤、洗濯洗剤を補充する詰め替え型販売を行なっている。宅配もしており、空の容器を洗浄して再利用する方法を取っている。
3.「エコテック」にも投資熱
「ピザデリバリーの全自動化」を目指すZUMEは、容器の効率化・エコ化にも取り組む。
出典:ZUME
「Zume(ズーム)」はロボットを活用した宅配ピザということで注目を集め、ソフトバンクから出資も受けているピザ屋だ。こちらは累計4億2300万ドル(約460億円)も調達している。
同社は2019年6月に植物由来の包装材料を設計する「Pivot Packaging」を買収した。
南カリフォルニアに約2万平方メートルの製造工場を立ち上げ、今後はボウル、プレートカップ、トレイ、カトラリーといった他の包装材も改良し、2020年までに10億個のプラスチックと発泡スチロールの容器を廃止するという目標を立てている。
さらにNASAからも支援を受ける「Mango Materials」は、変わった方法でプラスチック問題に挑む。同社が着目したのはメタンガスを食べるバクテリアだ。このバクテリアを原材料として、環境に悪影響を与えないところまで分解ができるポリエステル繊維をつくり、その繊維で洋服や絨毯などを製造している。
衣服に使える、エコな繊維を開発する「mango materials」。
出典:Mango Materials
通常のポリエステル製の衣服だと、洗濯する時に剥がれ落ちた合成繊維の一部がマイクロプラスチックとなり、海に流れ込んでしまう。しかし「Mango Materials」が開発した手法では、ゴミが海に流れ込んだとしても生分解されるか、海洋生物によって自然分解され、蓄積することはない。
(文・datavase.io、編集・西山里緒)