トルクメニスタンの首都アシガバート。
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中央アジアのトルクメニスタンは、世界で最も閉ざされた、謎めいた国の1つだ。
トルクメニスタンに関する情報は厳しくコントロールされ、入国できる人の数も限られている。その人権状況が非難されることもある。報道の自由はほぼない。
だが、2006年に大統領に就任したグルバングルィ・ベルディムハメドフ(Gurbanguly Berdymukhamedov)氏は、トルクメニスタンと自身をアピールすることにものすごく熱心だ。高級車や馬に乗る自身の姿をしばしば見せている。ただ、その一方で、トルクメニスタンは経済破たんに向かっているとも言われている。
首都アシガバートは世界でも他に類を見ない都市の1つで、大理石の敷かれた道や黄金の像が並んでいる。
トルクメニスタンに関する情報は少ない。とはいえ、多少は知られている。一体どんな国なのか、写真とともに見ていこう。
中央アジアに位置するトルクメニスタンは人口600万人弱。天然ガスが豊富だ。
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だが、非常に閉ざされた国だ。トルクメニスタンへのアクセスは厳しく管理されていて、2016年には6000人しか入国が許されなかった。
2014年9月19日、韓国の仁川で開催されたアジア大会の開会式に参加するトルクメニスタンの代表選手団。
AP Photo/Lee Jin-man
Source: CNN
同じく"閉ざされた国"として知られる北朝鮮を訪れたこともある旅行者は、トルクメニスタンについて「北朝鮮より自由に歩き回れたけれど、常に見られていることは明らかだった」と話す。
カスピ海に面したトルクメンバシの町で、港のオープンを祝う人々(2018年5月2日)。
REUTERS/Marat Gurt
国のトップは、グルバングルィ・ベルディムハメドフ大統領だ。2006年から独裁体制を敷いている。国の「保護者」と呼ばれることもあり、個人崇拝の対象となっている。
国連総会でスピーチをするベルディムハメドフ大統領(2018年9月29日)。
AP Photo/Frank Franklin II
トルクメニスタンにも一応、選挙はある —— ベルディムハメドフ大統領は前回の選挙で97%の票を集めた。
2016年には首都アシガバートに、高さ69フィート(約21メートル)の馬に乗ったベルディムハメドフ大統領の金箔の像が設置された。「保護者」と呼ばれている。
Reuters/Reuters Staff
Source: Business Insider
アシガバートの中心部は、大理石を使った建物など巨大なモニュメントや建造物でいっぱいだ。大量のゴールドも使われている。
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2019年8月に開かれた「カスピ海経済フォーラム」でのPR用に作られた動画では、トルクメニスタンを伝統、自然、製造業の国として売り込もうとしていた。
CNN/Caspian Economic Forum
Source: CNN
だが、トルクメニスタンの人権状況は芳しくない。ヒューマン・ライツ・ウォッチはトルクメニスタンを「世界で最も孤立した、圧政国家の1つ」と呼び、「人々の暮らしはあらゆる面でベルディムハメドフ大統領とその仲間によってコントロールされている」と指摘する。
トルクメニスタン製のタオルやリネンを売る店(2019年4月)。
REUTERS/Mariya Gordeyeva
Source: Human Rights Watch
経済も破たんの危機に瀕している。
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イギリスのシンクタンク「外交政策センター(Foreign Policy Centre)」は2019年、トルクメニスタンの大理石好きと厳しい情報統制が現実を覆い隠していると警鐘を鳴らした。
同センターは、トルクメニスタンが現実には「長引く経済危機の中で、天然ガスが豊富であるにもかかわらず、ハイパーインフレや食料不足に直面している」という。
オランダを拠点とするトルクメニスタンに関するニュースサイトの編集者Ruslan Myatiev氏は8月、「国営の店には十分な食料がないため、人々は毎朝、小麦粉やパン、砂糖といった必需品を求めて、何時間も行列に並ばなければならない」とCNNに語った。
Source: The Foreign Policy Centre.
イギリスのシンクタンク「外交政策センター」は、トルクメニスタンの「重大な人権侵害」や「強制労働の使用」にも警鐘を鳴らしていて、経済危機が「体制による抑圧をこれまでになく厳しくし、個人崇拝をこれまでになく高めている」と言う。
2007年2月、大統領に就任したベルディムハメドフ大統領。
REUTERS/Oleg Prasolov/Rossiyskaya Gazeta/Pool (TURKMENISTAN)
Source: The Foreign Policy Centre.
報道の自由を求める「国境なき記者団」は、2019年の報道の自由度ランキングで、トルクメニスタンを最下位とした。
ベルディムハメドフ大統領(パリ、2010年)。
Julien Hekimian/Getty Images
国境なき記者団は、トルクメニスタンでは「政府が全てのメディアをコントロールしていて、ごくわずかなインターネット・ユーザーが厳しく検閲されたインターネットにアクセスできるのみだ」と指摘。海外の報道機関のジャーナリストたちが「身柄を拘束され、虐待され、物理的に攻撃されるか、仕事をしないよう強制されている」という。
ベルディムハメドフ大統領がメディアに登場するときは、スポーツカーでポーズをとったり、閣議の最中に金の棒を掲げるなど、自身をアピールするようなものが多い。
Altyn Asyr
国営放送「Altyn Asyr」は2018年、大統領が閣議の最中に、他の政治家が拍手をする中、棒を掲げる様子を伝えた。
Source: iNews
ジェニファー・ロペスは、2013年にトルクメニスタンでベルディムハメドフ大統領の誕生日のために歌ったことを謝罪した。トルクメニスタンの人権状況に気付いていなかったと話した。
2019年6月、ニューヨーク。
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Source: Variety
ベルディムハメドフ大統領は2019年の夏、数週間にわたってその姿を公に見せなかったため、死亡説が流れた。大統領は、馬に乗った姿や砂漠で自動車レースをする姿を見せることで、自身が生きていることを証明した。
第1回カスピ海経済フォーラムのセッションを前に、ロシアのメドベージェフ首相と歩くベルディムハメドフ大統領(2019年8月12日)。
Sputnik/Dmitry Astakhov/Pool via REUTERS
Source: CNN
ベルディムハメドフ大統領の世界の指導者たちとの交流は、ちょっと変わっている。2017年には、ロシアのプーチン大統領に誕生日プレゼントとして犬を手渡した。
ベルディムハメドフ大統領から手渡された犬にキスをするロシアのプーチン大統領(2017年10月11日)。
REUTERS/Maxim Shemetov
Source: The Guardian
ベルディムハメドフ大統領は、トルクメニスタンの最初の大統領サパルムラト・ニヤゾフ氏の歩んだ道をたどろうとしている。
トルクメニスタン最初の大統領、サパルムラト・ニヤゾフ氏の金の像。
Valery Sharifulin\TASS via Getty Images
Source: The Telegraph
トルクメニスタンは1991年10月、ソ連からの独立を宣言。ソ連はその2カ月後に崩壊した。独立記念日は今でも、パレードや軍のデモンストレーションを実施し、盛大に祝う。
首都アシガバート。
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国がもっと開かれていれば、トルクメニスタンには間違いなく観光名所になるものがある。これは「地獄の門」と呼ばれる、40年以上燃え続けている砂漠のクレーターだ。
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Source: The Guardian
トルクメニスタンが独立したときには、人口の大部分を遊牧民が占めていた。そのため、今も馬は崇拝の対象だ。遊牧民と馬をたたえる祝日があり、1年を通じて、馬上で大胆な技を披露するショーが各地で開催されている。
首都アシガバートで開催された馬のフェスティバル(2014年4月27日)。
Dilek Mermer/Anadolu Agency/Getty Images
Sources: National Geographic, Turkmenistan State Committee for Tourism
ただ、政府の許可が得られたとしても、トルクメニスタンにアクセスするのは難しい。EUは2019年、8カ月間にわたって安全上の懸念からトルクメニスタン航空がその領空に入ることを認めなかった。制限を解除したのは、10月11日のことだ。
ベルディムハメドフ大統領を乗せてアフガニスタンのカブール国際空港に到着したトルクメニスタンの飛行機(2015年8月27日)。
AP Photo/Rahmat Gul
だが、トルクメニスタンは国際的な交通のハブになりたいと考えていて、その実現のためにアシガバート国際空港に多額の投資をしている。