パパ活を行っている約2割の女性が月収25万円以上稼いでいるという。なぜキャリア女性はパパ活にハマるのか(写真はイメージです)。
撮影:今村拓馬
若い女性が年上の男性とデート(性交渉を含む場合もある)をして、その見返りに金銭的な援助を受けることを指す、パパ活。
援助交際や売春といったイメージがつきまとうパパ活にハマる女性の中には、本業で月に30万円以上を稼ぐキャリア女性もいる。“自分一人を幸せにできるくらいは、自分の力で稼げる”女性たちがパパ活をする理由とは?
パパ活は貧困女子のためだけのもの?
「15分で1万円もらっちゃった」
都内在住、仕事は外資系企業の営業職。サトミさん(仮名、25歳)は嬉しそうにそう話す。半年に渡り、パパ活をしているサトミさんは、自然と1万円が入った財布をなでた。
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パパ活の基本的な相場は、一度のお茶もしくは食事で1万円から2万円。プラスで交通費が発生することもある。サトミさんの場合、これまで性的な関わりを持ったことはなく、一度の食事のみで最大3万円稼いだこともあるという。
「パパ活をすると、その辺の子よりも女性としてイケてるって思わせてくれる」というサトミさんの発言に対し、20代の筆者もマッチングアプリに精を出していたころを思い出した。確かに、いいね数の増加に伴い、自身の“イイ女度”が上昇していく感覚がそこにはあった。
サトミさんの手取りは月約30万円。自分一人で食べていけるくらいは、自分の力で稼いでいる「働く女性」だ。
パパ活といえば「貧困状態にある女性が生活費のためにパパに援助してもらう」というストーリーがよく報じられる。しかし、サトミさんのような「キャリア女性によるパパ活」の話を聞くと、女性たちがパパ活にハマる理由の新たな仮説を浮かび上がらせる。
パパ活女性の2割が月収25万円以上
多くの女性が利用しているパパ活アプリ。その利用者の一部は、十分に自分自身で生計を立てられる働く女性で占められているという。
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『日刊SPA!』が2019年にパパ活最大手アプリ「Paters(ペイターズ)」の女性ユーザー900人に対して行ったアンケートでは、パパ活を行っている約2割の女性が月収25万円以上稼いでいるとしている。
パパ活をする女性の中には、平均以上の収入がある人も一定の割合でいる ── データからは、そんな現状が浮かび上がってくる。
自分の力で稼ぐことができるにも関わらず、世間から白い目でみられがちなパパ活をする理由は何か。そこにはお金以外の理由があるとサトミさんはいう。
パパ活は「マーケティングの一環」
「パパからもらったお金を、お財布に入れる瞬間のデキる女感が好きなの」
若さと容姿である程度は勝負できてしまうパパ活だが、サトミさんは、本業の営業職のスキルを存分に活かし、「パパ」により気持ちよくお金を払ってもらうために働きかける。
具体的には、相手の年齢や仕事などの属性だけでなく、態度、言葉遣い、考え方、性格を踏まえ、どのような自分を見せれば、相手にとって自分が魅力的に映り、お金を出してもいいと思ってもらえるか、戦略を練る。
「相手のニーズを分析し、適切なものを提供する」マーケティングの手法を駆使し、パパがサトミさんとの時間を楽しめるよう工夫をこらす。
若さや見た目といった身体的な魅力だけでお金をもらっている女性よりも、自分は価値が高い ──。パパ活で得られる収入は、自身のマーケティングスキルに対する“値段”だ、とサトミさんは感じている。
「パパ活は、後ろ指をさされるような行為なのかもしれないけど、私の人生にプラスの影響を与えてくれるなら、別に誰に文句言われるようなことでもないと思ってる」
パパ活は、私にとっての精神安定剤
単純にお金を稼ぐという目的だけでなく、女性としての自信が得られるからという理由でパパ活するのだという。
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外資コンサルティング会社に勤めるエリナさん(仮名、25歳)の手取りは月額約32万円。定期的に会う肉体関係を持たないパパが数名存在し、関係はいずれも約1年続いている。
新卒入社当時、社内は自分よりも優秀な人ばかり。自分は何もできないお荷物だと感じることが多かった。
社内で勝っていかないといけない。でもプロジェクトは任されず、提出した資料は結局上司が全て修正する。日々“できない”自分と向き合いながら働くプレッシャーを感じていた。
成果主義の世界で戦う道を選んだエリナさんだったが、近くの席で仕事をする、一般職女性の働き方に羨ましさとやりきれない気持ちを募らせていた。
談笑しながら仕事をし、定時になったら退社。アフター5を楽しむ彼女たちの働き方はエリナさんとは真逆だった。
パパ活は友人からの勧めだった。同業他社やクライアント先に勤めるパパが多いと聞き、仕事のための勉強と好奇心からパパ活の世界に足を踏み入れた。
パパ活をする以前は、会社が自分の全てだと思っていた。しかし、パパたちから「優秀だね」「この歳で一緒にビジネスの話ができる女性がいると思わなかった。いま話題になっているニュースすら見ないという子もいて、驚いたよ」という声をかけられ、自分が見ている世界の広がりを感じたという。
「有名企業に勤めるパパと話していると、勉強にもなるし、何より自分自身が社会的にも女としてもレベルが高いんだと思えて、すごく満たされるの」
「パパと対等に話ができて、お金をもらえる」という一連の行為が、女性としての“勝利の証明”となり、エリナさんを動かしている。
「お前の価値は3000円なんだよ」
パパ活をする人たちの中には、もちろん「望まないパパ活」をしている女性たちもいる。
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もちろん、パパ活をする女性の全てが、サトミさんやエリナさんのような自活できている女性というわけではない。
前出の『日刊SPA!』の調査によると、本業の月収が20万円以下の女性の割合は約7割にものぼっていた。
実際、事務職として勤める都内在住のカレンさん(仮名、24歳)は手取り約15万円。家賃と光熱費などを払うと手元にはほとんど残らず「パパ活をしないと生活が安定しない」とため息交じりにこぼす。
カレンさんはパパ活で出会った男性に「お前の価値は3000円なんだよ」と言われて、お金を投げつけられた経験があるという。カレンさんは当時、怒りのあまりお金も受け取らないで帰った。
「でも、3000円だとしても、もらえるものはもらっておけばよかったって今は思う」
とぽつりと漏らした。カレンさんのように、生活のためにパパ活をしている女性が多いこともまた、事実だ。
リスクの先にあるものは
パパ活は単純なお小遣い稼ぎではなく、キャリア女性たちのストレスを一時的にでも癒してくれる行為なのだ。
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パパ活アプリ「Paters」は、2017年4月のサービススタート後、約2年で男女合計会員数を38万人まで伸ばしたことが『日刊SPA!』の調べで分かった。パパ活の需要は高い。
見知らぬ男性と2人きりになる状況を伴うパパ活は、性被害をはじめ、事件に巻き込まれる危険性もある。男性が女性の時間をお金で“買う”行為自体もモラル的に問題がある。
埼玉県警は2019年8月、Twitter上で「パパ活」というハッシュタグをつけて投稿されたツイートに対し、パパ活の危険性を訴えるリプライを送った。この行為は「怒涛の警告リプ」として話題を呼んだ。
それでも自分の力で稼げる彼女たちが、犯罪被害につながるリスクもあるパパ活に手を出す理由は何か。
筆者はじめ、20代の女性たちの多くは「仕事で結果を出すこと」「女性として魅力的であるべき」という、二つの価値観の間で揺れ動いている。
自らの仕事のスキルも活かせて、女性としての魅力も確認できるように感じられるパパ活は、同時に二つの価値観を満たしてくれる実感を伴うようだ。だからこそ、熾烈な競争社会にさらされながら「女性はこうあるべき」にも揺れ動く彼女たちは、リスクがあると知りながら、パパ活をやめられないのかもしれない。
(文・れんげ、編集・西山里緒)