パブ、シェア駐車場、宿泊。ラグビーW杯で表れた「熱すぎる」経済効果

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ラグビーワールドカップでは海外から多くの人々が日本を訪れた。

Issei Kato/Reuters

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会も残すところ、決勝と3位決定戦のみ。9月20日から日本各地で計48試合(決勝、3位決定戦の2試合含む)が行われた。

日本は優勝候補のアイルランドや強豪のサモア、スコットランドを破って全勝。予選グループを1位で突破し、準々決勝で南アフリカに敗れたが、日本中を熱狂させ続けた。

今回のラグビーのW杯ではさまざまな経済効果が表れている。他のスポーツの国際大会以上に会期が長く、11月2日の決勝戦まで44日間、また、予選グループだけでも約4週間に渡ったこともあり、より影響が出たと見られる。

訪日外国人が各地でビールを大量消費

分かりやすい経済効果があったのが、ビールの飲めるパブだ。W杯出場国でもあるイングランド、アイルランド、スコットランド、ウェールズといったビール消費量の多い国々からサポーターが多数来日し、日本各地のパブなどにも多く訪れていた。

英国式パブ「HUB」や「82」を全国で展開するハブは、10月7日に公表した月次速報で、9月の全店舗の売上高は前年同月比126.6%、客数同121.3%だったことを明らかにした。2019年上期(3〜8月)までの売上高が前年同期比99.8%、客数同103.6%だったことを考えると、ラグビーW杯の影響を大きく受けたと見られる。

月次速報の中で「ラグビーイベントを目的に来日する外国人に対し、前年度から継続的に実施している販売促進施策及び PR活動に加え、年初からの国内ラグビーファン拡大の取り組みなどが奏功」と分析している。

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東京・渋谷にあるスポーツ飲食店「DAZNCIRCLE(ダゾーンサークル)」には多くの客が訪れた。ビールの消費量も通常以上だったという。

提供:DAZNCIRCLE

東京・渋谷にあるスポーツ観戦が楽しめるカフェバー「DAZNCIRCLE(ダゾーンサークル)」でも、ラグビーワールドカップの試合開催時に大きな影響が出たという。

「特に日本戦は大きな盛り上がりを見せ、スコットランド戦では350人以上のファンの方が来店し、ビールの消費量も他イベントの約5倍でした」(担当者)

浜松がダブリンになった夜

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9月28日、静岡での日本対アイルランド戦の終了後、浜松駅近くの英国式パブ「THE LORD NELSON (ザロードネルソン)」には多くのアイルランド人が訪れビールを飲んでいた。

撮影:大塚淳史

記者自身、身をもって体感した。9月28日、日本の予選グループの第2戦、静岡県浜松市で行われたアイルランド戦を観戦した。試合終了後、JR浜松駅近くにある本格的な英国式パブ「THE LORD NELSON (ザロードネルソン)」に足を運ぶと、案の定、店内は緑色のユニホームを着たアイルランド人たちであふれかえっていた。

日本人は2、3人しかおらず、目の前に立っていたアイルランド人男性は、その様子を面白がってインスタグラムに「ダブリンのパブにいてるよ!」と投稿していた。

後日改めて、店長に話を伺うと、日本でのパブ商売のやり方を考えさせられ、日本人と外国人の違いを実感したという。

「まぁとにかく、店を訪れた外国の方がめちゃくちゃ飲んでくれました。一方で、改めて日本の方はビールを飲まないというか、飲めないという現実を突きつけられました。浜松にはW杯が4試合があったこともあって、アイルランド、イングランド、スコットランド、南アフリカ、オーストラリアにロシアの方とまんべんなく、多くの方が店を訪れてくれました。

そして、日本の方とはダブルスコア、トリプルスコアでビールの消費量が違いました。日本の方はこういうスポーツの試合の時、ビール1杯で2、3時間粘る。外国の方は無くなったらドンドン注文する。もともとパブとはそういうモノではあるのですが、今後の店のあり方を考えさせられる契機になりました」

特に印象的だったのが、台風19号に日本列島が襲われた時だったという。上陸する前日の10月11日、静岡でオーストラリア対ジョージアが行われた。

台風の影響で新幹線も止まり、観戦を訪れていたオーストラリア人たちが浜松にとどまっていることを知っていた店長は「彼らが気の毒だなと思い、駅周辺の店が軒並み閉まっていたのですが、開店時間を遅らせて19時から24時まで開きました」。

事前に扉の前に張り紙をして告知していたこともあり、「開店5分には彼らで満席になりました」(店長)という事態に。

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9月28日、静岡での日本対アイルランド戦の終了後、浜松駅近くの英国式パブ「THE LORD NELSON (ザロードネルソン)」には多くのアイルランド人が訪れ、店外まであふれて出ていた。

撮影:大塚淳史

また、台風19号が過ぎた10月13日、満を持した日本対スコットランド戦の際に、16時から24時まで店を開けた。当然、日本を応援する客で店内はあふれた。しかし、そのスコットランド戦の売り上げよりも、数時間だけ営業した11日の方が、圧倒的に良かったという。

「今回のラグビーW杯はいろいろな意味で外国の方との温度差を感じた。一時的な盛り上がりになっているので、(パブが)文化になってほしい。でも日本の方が飲めない、酒が弱いというのは仕方ない。

今回、外国の方がラグビーを応援するためにわざわざやってきて、湯水のごとくビールを飲んでくれた。彼らはパブにお酒を飲みに来るんですよね。そしてスポーツ観戦も楽しむ。居酒屋やバーで飲むんじゃないんですよね」(店長)

シェア駐車場や宿泊サイトから見えた経済効果

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豊田スタジアム周辺のアキッパで提供された駐車場。

提供:akippa

経済効果はビールだけではない。

シェア駐車場サービス「akippa(アキッパ)」は、大会中の利用が飛躍的に上がったという。同社のプライシング担当である田中大貴氏は、見込んでいた以上に稼働率が良かったという。

「通常時より稼働率が2倍から5倍くらいに変わりました。例えば、東京スタジアムでは、Jリーグの試合がない時(FC東京のホームスタジアム)など、通常は需要が低いので、コインパーキングより低い価格設定にしています。1日300円から500円くらいにする。それでも売れ残ったりする。

それが、サッカーの試合がある時で1500〜2500円になる。ラグビーは最初はサッカーと同じくらいかなとイメージしていたが、4000〜5000円まで上がった」

全12カ所でラグビーの試合は行われていたが、全部の試合で価格が例外なく上がったという。平均で3000円以上、日本戦の時だと6000円になった場所もあった。

「スポーツ大会やスポーツチームとの親和性が高いですね。スポーツチームとしては、試合の際には駐車場が足りなくて見に来られない人を集客したい、スタジアム周辺の交通渋滞の緩和が課題になっている。それを解決するために、アキッパへ要望があります」(田中氏)

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豊田スタジアム周辺のアキッパを介したシェア駐車場は即完売だったという。

提供:akippa

特に大きな影響が出ていたのは、愛知県の豊田スタジアム。

「一番良かった。日本対サモア戦が特にすごく、スタジアムから徒歩40分圏内の駐車場は(予約開始日の)即日完売でした。実績が2番目に良かったのも、豊田スタジアムでの南アフリカ対ナミビア戦。もともとアキッパが(サッカーJリーグの)名古屋グランパスと提携していることもあったこともあると思います」(田中氏)

宿泊施設の予約サイト「booking.com」も期間中、詳しいデータはまだ発表していないが、明らかに影響が出ていたという。

「現在開催中のラグビーのワールドカップにより、今まで訪日の割合が少なかったナミビアやアイルランド、南アフリカ、ジョージア、サモアなどからの大会期間中の予約が急増しました。世界各国からのファンが日本のさまざまな都市に宿泊し、滞在中は地元のアクティビティや文化体験など(booking.comの予約サービスである)タビナカへの積極的な参加傾向が見られています」(担当者)

開幕数カ月前までは、果たして日本で盛り上がるのか、疑問視されていた。しかし、日本は快進撃し、海外から多くのラグビーファンが訪れ、結果的に各地に熱狂の渦と良い経済効果を与えてくれたのは間違いない。

(文・大塚淳史)

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