セラノス(Theranos)創設者兼CEOのエリザベス・ホームズ。2015年10月21日にカリフォルニア州のモンタージュホテルで開催されたウォール・ストリート・ジャーナル デジタル・ライブでの講演。
Mike Blake/Reuters
- 2010年代は、企業の不正行為から不慮の事故に至るまで、ハイテク業界を揺るがしたスキャンダルがあふれていた。
- シリコンバレーに集中している権力と資本は、過去10年間で急増しており、権力の濫用も報告されている。
- フェイスブック、アップル、グーグルなどの大手テクノロジー企業は、自社に対する人々の信頼を揺るがす事件に対処しなければならなかった。今日、人々はかつてないほどビッグテクノロジーに懐疑的になっている。
2010年代は、情報テクノロジー産業が活況を呈したこともあり、そのスキャンダルによって揺れ動いた。ハイテク企業は、アメリカそして世界の政治および社会問題の中心になってきており、過去10年間には権力の乱用、ベンチャービジネスの失敗、悲惨なガジェットの発売などが見られた。
最も強力なハイテク企業の一部であるフェイスブック、アップル、グーグルは、スキャンダルが頻発した。しかし、いくつかのスタートアップ企業なども同じように悪名を轟かせた。 そして、内部告発者エドワード・スノーデン(Edward Snowden)からNSAのスパイ活動の暴露があった。
2010年から現在までのテック界のスキャンダルを紹介する。
2010年:中国の工場の残酷な労働条件下で、iPhone、iPad、ヒューレット・パッカードのコンピューターを製造していた労働者14人が自殺した
Reuters/Bobby Yip/Files
中国深圳のフォックスコン(Foxconn:鴻海科技集団)の工場では、2010年に少なくとも14人の従業員が自殺した。
アップル、任天堂、ヒューレット・パッカード(HP)などの顧客向けに製品を製造しているフォックスコンは、従業員が過酷な労働条件の下で長時間の時間外労働を強いられることや、軽微な違反行為で従業員の賃金を差し押さえる経営陣がいたことなどをウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。
この会社は、高層階から飛び降りる労働者を捕まえるためにセーフティーネットを設置し、自殺しないことに同意する契約書に署名するよう求めていたという。
アップルやHPなどの顧客は、自殺を受けて労働環境を改善するようフォックスコンに要請すると述べた。また、中国は労働者の残業時間を制限する新しい法律を2012年に施行した。
2013年:エドワード・スノーデンは、アメリカ国家安全保障局(NSA)がグーグルとYahoo!のサーバーに密かにアクセスしたことを示す機密文書をリークした
ニューヨークのロイターでの記者会見でビデオを介して話すエドワード・スノーデン。
Reuters
アメリカ史上最も有名な内部告発者、エドワード・スノーデン(Edward Snowden)は、アメリカ国家安全保障局(NSA)がグーグルとヤフーのアカウントをスパイし、テキスト、音声、動画を自由に閲覧していたことを明らかにした。
グーグルとヤフーは、告発内容に驚きを示し、政府にサーバーアクセスを許可しなかったとした。 しかし、グーグルは声明の中で、「この種の事案の可能性について長い間懸念していた」と述べた。 スノーデンは依然としてスパイ行為法違反の容疑に直面していて、現在はロシアによる滞在許可を得てモスクワに住んでいる。
2015年:フォルクスワーゲンは、排気ガスのテストをごまかして、同社の車がより環境に優しいように見せたことを認めた
Sean Gallup/Getty Images
アメリカ環境保護庁は、フォルクスワーゲンがディーゼル車の排気ガスのテストで、テストの時だけ有害物質が減る「無効化装置」を使用して、より環境に優しいように見せかけたことを発見した。フォルクスワーゲンは、1100万台の車に「無効化装置」を装着したと認めた。
同社は、43億ドルの罰金をアメリカに支払い、規制当局と自動車所有者からの賠償請求に220億ドル以上を払うことに同意した。 フォルクスワーゲンの6人の幹部は刑事告発を受けた。
2016年:アップルは、アイルランドでの税控除を違法と裁定され、EUに130億ユーロの追徴税の支払いを命じられた
European Commission
アップルは10年以上にわたり、アイルランドが提供する大規模な税制優遇措置を利用して、欧州事業の資金をアイルランド経由で調達してきた。欧州連合(EU)は2013年、3年にわたる調査の後、これらの優遇措置は違法だとの判断を下し、アップルに対して145億ドル相当をアイルランドに支払うよう命じた。アップルはこの決定を非難し、将来の欧州事業を再考すると述べた。
2016年:医療ベンチャー企業のセラノスは研究所を閉鎖し、血液検査に関する疑わしい主張について連邦政府の調査を受けることになった
Jeff Chiu/AP
過去10年間で最も悪名高い新興企業であるセラノス(Theranos)と、そのリーダーであるエリザベス・ホームズ(Elizabeth Holmes)は、同社が一滴の血液で多くの項目の検査を実施できるという約束を果たせないことが判明した後、信頼を失った。ホームズは詐欺の容疑で現在捜査中だ。
2016年:サムスン電子はGalaxy Note7をリコールしたが、何台も充電中に爆発したことで製造を中止した
AP
サムスン電子(Samsung)は、複数の発火が報告された後の2016年9月初め、 Galaxy Note7の全世界でのリコールを行い、安全なモデルを出荷すると述べた。しかし、代替機も充電中に発火したとの報道が浮上し、サムスンはGALAXY Note7の製造を完全に停止した。
2017年:フェイスブックによると、ロシアに関係する偽アカウントがアメリカの選挙中に数千の広告を出稿したという
US House Intelligence Committee
フェイスブックは2017年9月、「ロシア国外で操作されているように見える」アカウントが2016年の大統領選挙に影響を与える目的で、2015年6月以降、フェイスブック広告に約10万ドルを費やしていることを明らかにした。フェイスブックは、アメリカの選挙に影響を与えようとする外国の資金によるキャンペーンを阻止するための行動をとると約束した。
2017年:グーグルのエンジニアが、性別と人種の多様性を高めるという同社の試みを批判する文書を配布した
YouTube/Joe Rogan Experience
グーグルのエンジニアであるジェームズ・ダモア(James Damore)が、同社の女性とマイノリティの数を増やす努力を批判する反多様性マニフェストを社内に広めると、グーグルの従業員は激怒した。ギズモードが入手した文書によると「男女の違いを差別だと受け取るのをやめる必要がある」と彼は書いていた。このメモは、従業員がその企業文化への懸念を示すなど、グーグル社内の混乱が激化している時期に作成された。結局、ダモアはグーグルを解雇された。
2018年:グーグルは、著名な幹部であるアンディ・ルービンを含む会社全体での性的不品行が表面化したことを受け、社内の対応に追われた
Troy Wolverton/Business Insider
2018年後半、グーグル幹部による性的不正行為が表面化し、数千人の従業員がストライキを行った。ニューヨーク・タイムズによると、Androidの開発者の1人であるアンディ・ルービン(Andy Rubin)を擁護しているが、性的不正行為を告発した女性らは、強制的な調停策によって不当な扱いを受けたと述べているという。伝えられるところによると、ルービンに対する告発内容が信頼できると判断した後でさえも、彼は退職金として数千万ドルを受け取ったという。Googleの最高経営責任者であるSundar Pichai氏は当時、欠点があることを認め、「これらのアイデアを実行に移します。」と約束した。
2018年:国連調査団が、ミャンマーにおけるロヒンギャのイスラム教徒の虐殺に関連してヘイトスピーチのプラットフォームを提供したとしてフェイスブックを非難した
2017年10月22日、ミャンマーからバングラデシュに渡ったイスラム教徒のロヒンギャ族の女性、ルカヤ・ベグムは、子どもとともにバングラデシュ政府が用意した難民キャンプに入った。
Associated Press
国連の調査員は、フェイスブックがミャンマーのロヒンギャ族の大量虐殺に一役買っていると述べ、ヘイトスピーチと殺人の計画が同プラットフォームで行われたと述べた。調査員は「公共のメッセージを伝えるために使われていたが、民族主義者は独自のフェイスブックページでロヒンギャや他の少数民族に対する多くの暴力や憎悪を煽っている」と話した。
フェイスブックは最終的に、このプラットフォームが暴力を助長したことを認め、それを阻止するために動かなかったことを謝罪した。
2018年:フェイスブックは、データ分析会社ケンブリッジ・アナリティカが、何百万人ものユーザーのデータを不適切に取得し、誤って処理したことを認めた
Josh Edelson/Getty Images
ガーディアンの調査を受けて、フェイスブックは、2016年の選挙に先立って何百万人ものユーザーのデータを不正に入手してトランプ支持の広告を配信したケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)との取引を停止した。報道によると、トランプ陣営はケンブリッジ・アナリティカに数百万ドルを支払い、フェイスブックの広告パートナー条件に違反したが、これはソーシャルメディアの巨人の監視の下で起こったという。
2018年:従業員の抗議を受けて、グーグルは、国防総省が無人機用のAIを開発するのを支援する秘密契約を更新しないことに同意した
Reuters
グーグルは、無人機による攻撃の分析や支援を行うAIソフトウェアを開発するプロジェクトで、米国防総省と密かに提携契約を結んだ。ギズモードが最初にそれを報じ、従業員が反発した後、同社は契約を更新しないことにした。しかし、同じプロジェクトで米国防総省と提携したある匿名の企業は、依然としてGoogle Cloudプラットフォームを使用していると言った、とInterceptは報じている。
2019年:ボーイングの幹部は2つの墜落事故で死者を前に737MAXの重大な問題を知っていた
REUTERS/Lindsey Wasson
ニューヨーク・タイムズが入手したメッセージによると、ボーイング737MAXの2つの墜落事故が起こる少なくとも2年前に、ボーイングの幹部は同機に重大な問題があると警告されていた。事故は2018年10月と2019年3月に発生し、合わせて346人が死亡した。2度目の事故の後、ボーイング737MAXはすべての航空機の運航を停止し、ボーイング社の対応は現在もFBIの捜査の対象となっている。
2019年:WeWorkのビジネスモデルと経営に関する懸念が、IPOの失敗とCEOの解任、評価の急落を招いた
Reuters
投資家やメディアがWeWorkの財務状況やアダム・ニューマン(Adam Neumann)CEOの奇抜な経営スタイルに深刻な疑問を投げかけた後、WeWorkは評価額が470億ドルから80億ドルに下がり、ニューマンをCEOから外し、新規株式公開を中止した。WeWorkの混乱はまだ続いているが、同社は収益性の安定化を目指しており、今後数カ月のうちに現在のスタッフの最大4分の1をレイオフするとみられている。
[原文:The biggest tech scandals of the 2010s, from NSA spying to Boeing's deadly crashes to WeWork]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)