人類の故郷はアフリカ南部ボツワナの湿地帯…最新の研究で新説

ボツワナのコイサン族は、現在生きているすべての人間の母系共通祖先としてミトコンドリアDNAを共有している。

ボツワナのコイサン族は、現在生きているすべての人間の母系共通祖先としてミトコンドリアDNAを共有している。

Shutterstock

  • 解剖学的に現代のヒト、すなわちホモ・サピエンスはアフリカで約20万年前に出現した。しかし、それがどこから来たのかははっきりしていない。
  • 最新の研究によると、現代人の先祖の故郷は現在のボツワナ、ザンベジ川のすぐ南にあるという。
  • 研究者たちは遺伝子分析を使ってその地域に絞り込んだ。
  • この発見は、現代の人類の祖先は、世界中のさまざまな地域で同時に進化するのではなく、すべてアフリカから移住してきたという説を支持している。
  • しかし、一部の人類学者はこの新しい発見に懐疑的だ。

ある研究者のグループが、現在生きているすべての人間の祖先の故郷を現代のボツワナに特定したと発表した。

ネイチャー誌に発表された新たな研究で、研究者はアフリカのさまざまな集団の1200人以上のミトコンドリアDNA(母系で伝わる遺伝情報:mtDNA)を分析した。そしてヒトのDNAに保存されている遺伝子を調べ、解剖学的な現代人は、ザンベジ川の南、ボツワナの豊かな湿地帯に出現したことを明らかにした。

多くの科学者の間で、現生人類(ヒト)がおよそ20万年前にアフリカで発生したという点では意見が一致しているが、この大陸のどこで進化上の重要な出来事が起こったのかは、いまだに正確にはわかっていない。この新しい研究は、この疑問に対する新たな答えを提供し、また、限られた化石の証拠が示唆する、私たちの祖先が東アフリカで出現したという説を否定するものだ。

この論文の主執筆者で人類学者のヴァネッサ・ヘイズ(Vanessa Hayes)氏は記者会見で、今回の発見は、今日生きて歩いている人のmtDNAはこの「人間の故郷」にまでさかのぼることを示唆していると述べた。

広大な湿地が人類の祖先のゆりかご

我々の祖先の地理的起源を突き止めるために、ヘイズ氏と同僚はコイサン族のような南アフリカに住んでいる人々から得たmtDNAを調べた。母系に伝わるmtDNAは父系DNAと混合されていないため、ヒトの祖先の追跡によく用いられているが、これは時間の経過とともに変化が少なくなり、遠い親戚とのつながりが明確になることを意味する。

mtDNAについては、現代のヒトはすべてハプログループLと呼ばれる遺伝子群を共有している。Lの系統はL0とL1〜6の2つのサブグループに分けられる。L0はアフリカ南部の人々に見られ、ヘイズ氏のチームはこれを分析した。この研究の共著者であるエヴァ・チャン(Eva Chan)氏は、これが「これまでのL0研究では、最大のもの」だと述べた。

この遺伝子の辿っていくと、現在生きているすべての人が、約20万年前にアフリカ南部、今のボツワナに住んでいた女性の子孫であることがわかった。その地は、マカディカディ・オカバンゴ古湿地と呼ばれ、現在のオカバンゴ・デルタの近くで、湖や緑が点在していた。

現代のボツワナのオカバンゴ・デルタ。かつて人間の祖先を養った緑豊かな湿地に似ている。

現代のボツワナのオカバンゴ・デルタ。かつて人間の祖先を養った緑豊かな湿地に似ている。

Via Wikimedia Commons

研究チームは、この地域の当時の気候を再現した分析も行い、ホモ・サピエンスがここに約7万年の間住んでいたことを明らかにした。その後、気候が変化するにつれて、我々の祖先は二つに分かれた。一つは13万年前に北東に広がった集団で、もう一つは11万年前に南西に移動した集団だ。

ヘイズ氏によると、これらのグループは、この地域から出ていった動物の群れを追跡した可能性が高いという。

しかし、このタイムラインは、一部の科学者が化石に基づいて作成したものと相反する。19万5000年前の頭蓋骨やその他の化石など、解剖学的に現代人の最も古い標本はエチオピアで見つかっている。そのため多くの人類学者は、新しい研究が示唆するアフリカ南部ではなく東部が現代人の祖先の出身地だと考えている。

今回の遺伝子解析は、すべての現生人類は、世界中の複数の場所で同時に別々に進化するのではなく、現在のヨーロッパ、アジア、オーストラリアなどに移住する前に、アフリカで進化したという考えに信憑性を与えている。

2017年に作成されたホモサピエンスがアフリカの外への出たルートの地図。現代の祖先の起源がアフリカ東部であることを示している。

2017年に作成されたホモサピエンスがアフリカの外への出たルートの地図。現代の祖先の起源がアフリカ東部であることを示している。

Katerina Douka and Michelle O'Reilly/Flickr

研究論文の著者によると、ボツワナからの二手に分かれての移住は「現代の人間が最終的に世界中に移住する道を開いた」という。

調査に疑問を呈する人類学者も

しかし、ニューヨーク市立大学リーマン校でアフリカの集団遺伝学を研究している人類学者のライアン・ラウム(Ryan Raaum)氏は、今回の研究には重大な欠陥があると考えている。ラウム氏によると、研究者たちは遺伝的なタイムラインを十分遡っていないという。

ヘイズ教授の研究では、L0ハプログループの発生源が特定されたが、世界のほとんどの人のミトコンドリアDNAを遡れるのはL0ではなくL1-6サブグループまでで、「単一の原点」を見つけるには、L0とL1-6の遺伝的分裂が起こる前に生きていた祖先を見つける必要があると、ラウム教授は述べた。

「草原の中で迷子になっているのは、これらのデータを現代人のアフリカ南部起源を主張するために拡大解釈したからだ。データはそうではない」と同氏はBusiness Insiderに語った。

人類学者のヴァネッサ・ヘイズが、ナミビアの狩人に火をつける方法を学んでいる。彼らの一部は、彼女の研究のためにDNAサンプルを提供した。

人類学者のヴァネッサ・ヘイズが、ナミビアの狩人に火をつける方法を学んでいる。彼らの一部は、彼女の研究のためにDNAサンプルを提供した。

Chris Bennett, Evolving Picture, Sydney, Australia

ラウム教授はさらに、「先祖の故郷」という言葉が気に入らないと付け加えた。

「現代人に進化した集団はおそらく一つではなかったのではないかと思う。もしそうなら、 故郷はない」

研究者は、さらなる研究のためには、より多くのDNAが必要だと言う

ヘイズ博士のチームの研究結果には、mtDNA分析では母親のDNAしか調べられないという問題もある。

細胞の2つの部分がDNAを持っている。遺伝物質の大部分が存在する核とミトコンドリアだ。核DNA(nDNA)は両親から遺伝し、Y染色体に沿って移動する。一方、mtDNAは母親からのみ受け継がれる。

nDNAは化石に残るのは稀なので、ヘイズ氏のような研究ではあまり調べられていない。祖先集団の全ゲノムを調べることはできないのだ。

2014年、人類学者たちはY染色体のデータに基づいて、現在知られている最古のヒトの系統を特定した。この集団はせいぜい16万年前のもので、アフリカ中西部にいた。だから現在生きているすべての人は、アフリカの南部ではない別の場所に住んでいた人の子孫である可能性がある。

ヘイズ氏は記者会見で「他の起源や系統があるかもしれない。可能性としては」と述べた。

しかし、ボツワナが今日生きているすべての人の生命のゆりかごであったかどうかに関わらず、この新しい研究は、アフリカのこの地域が我々の祖先のオアシスであったことを示唆していおる。これは人類の進化を理解する上で重要な発見だ。「人は自分がどこから来たのか知りたがっている」とヘイズ氏は言った。

[原文:Every person alive today descended from a woman who lived in modern-day Botswana about 200,000 years ago, a new study finds

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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