シリコンバレーとサンフランシスコのベイエリアは、10年で劇的に変化した。
San Francisco Bay Area.
- シリコンバレーとサンフランシスコのベイエリアは、過去10年間で劇的に変化した
- 過去10年間に、シリコンバレーでは、生活コストやホームレス人口、技術者の給与が急増した。
- そして、2010年には、UberやLyftのような、今日我々が利用しているサービスはまだ初期段階だった。
テクノロジーの視点で見ると、10年は本当に長い時間のように思える。
2010年、アップルはiPadを発売したが、iPhone 4はまだリリースされていなかった。Netflixはストリーミングを開始したばかりで、「binge-watching(海外ドラマなどを一気に見ること)」という用語はまだ生まれていなかった。映画『ソーシャル・ネットワーク』はフェイスブック創設者のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)を悪役として描いたが、今でもこれが真実だと考えている人もいる。
2010年はまた、残酷な不況が終わってから1年しか経っていなかった。シリコンバレーでは、他の地域よりも早く成長が見られたが、その成長は適切に管理されていなかった。
ここ数年、サンドヒルロード(パロアルト、ウッドサイドなどを通り、IT大手やベンチャー企業が多く集まっている)に沿って多くの変化があった。数十億ドルもの資金がシリコンバレーに流れ込み、億万長者とホームレスを生み出し、Uberのようなアプリは全国の交通機関に影響を与えるのに十分な利用のされ方をしている。そして、人口が徐々にではあるが増加し続けているので、住宅市場はテックブーム以前の水準に戻ることが難しい。
2010年のシリコンバレーと、その後の変化を紹介しよう。
シリコンバレーの人口はこの10年間で増加したが、最も驚くべき変化は所得格差の拡大だ
Sean Pavone/Shutterstock
2010年、シリコンバレーの人口は250万人をわずかに上回り、住民の大半は同地域の39都市のうちたったの6都市に住んでいた。
この十年で、人口は310万人にまで増加した。シリコンバレーの労働者の平均年齢はほぼ同じ(最多の年齢層は20歳から39歳)だが、最も驚くべき成長を遂げているのは所得だ。
この地域の平均所得は年間14万ドル(約1520万円)に跳ね上がり、カリフォルニア州や全米平均の倍以上になっている。しかし、今シリコンバレーで暮らすには数十万ドルの給料では足りないこともある。The Mercury Newsによると、収入が百万ドルレベルの世帯ですら、この地域の他の住民と比較して「低所得」と考えられている。
この10年間で、ベイエリアでは莫大な富が生まれた。その大きな理由の1つは、人々がそこで稼ぐことのできる金だ。アップル、Alphabet、フェイスブック、アマゾン、そしてマイクロソフトのようなテクノロジーの巨人が、記録的な株価でこれに貢献している。
現在のシリコンバレーの住宅価格の中央値は120万ドル(約1億3000万円)を超えている。つまり、住宅の数が限られていることを考えると、数十万ドル以上の給与を得ていない人々にはまったく手が届かない可能性が高い。
一方、生活費が高騰したため、ホームレスの増加は危機的レベルに達している
Beck Diefenbach/Reuters
サンフランシスコのベイエリアでは、路上や車で生活する人の数が、ここ数年で17%増加した。
シリコンバレーはアメリカで最も高い所得の層を抱えているが、サンノゼ郡とサンタクララ郡では住宅なしで生活する人が増えている。2016年には、少なくとも1万人が住宅なしで生活していることが確認された。
2013年、ホームレス人口が7600人という推計が出たとき、サンノゼでホームレス向けに住宅を確保する運動を行っていたジェニファー・ラビングはBusiness Insiderに対し、「予算削減、住宅不足、不況時代の税制優遇、雇用の不足、貧富の差の拡大、住宅価格の上昇がホームレスの急増を引き起こした」と述べた。
この地域では、ホームレスの一部は夜間に暖を取るために深夜運行のバスを利用する。またテントやRV車がユニコーン企業に続く道路を埋め尽くしている。これらの危機に対する解決策には「避難村」のようなものの建設も考えられるが、それらでさえ官僚主義で行き詰まる可能性がある。
シリコンバレーの生活費も非現実的になりすぎて、多くの技術者を街から追い出している。アメリカ商務省経済分析局によると、シリコンバレーの中心部は、2018年には米国で最も物価の高い地域になった。
サンノゼ・マーキュリーによると、ガソリン価格と家賃が「ベイエリアの消費者物価上昇の主な要因」である一方、賃金は物価の上昇に追いついていない。
今日広く普及しているサービスの多くは、10年前には生まれたばかりだった
Lucy Nicholson/Reuters
例えばウーバー(Uber)を考えてみよう。ベータ版が2010年後半にサンフランシスコで公開された。当時はタクシーを呼ぶ1.5倍かかったが、画面をタップするだけで利用できたため、主に技術者によって利用されていた。
しかし、サンフランシスコとシリコンバレーの行政機関は、このサービスが初めて現れたとき、あまり歓迎しなかった。サービス開始からわずか4カ月後、ウーバーはサンフランシスコ市都市交通局とカリフォルニア州公益事業委員会から排除命令を受けた。同社は今でも法案に反対する広告キャンペーンに何百万ドルも費やして、地元当局との戦いを続けている。ウーバーが世界に進出するのは、リフト(Lyft)のような他の配車サービスが市場に参入し始めた2012年になってからだ。2019年5月、ウーバーは史上最大規模の新規株式公開を行った。
2010年の自律走行車は「実用には程遠い 」と言われ、今もまだそのままだ
AP Photo/Keith Srakocic
グーグルは2010年初頭から、シリコンバレーの高速道路や道路、交差点で自律走行車をデビューさせた。GPS、センサー、カメラ、レーダー、レーザーを利用して周囲を認識している。
当時、サンフランシスコでは、トヨタのプリウスの「屋根に漏斗のようなもの」を付けた車を目にすることがあった。当時、専門家は、完全に自動化された車、つまり人間が乗らない車は「大量生産から程遠い」と考えていた。現在もそれは真実だ。
完全自動運転車は未だに開発途上だ。アメリカの道路の多くは、自動運転車を扱う設備が整っていない。道路に空いた穴や消えかけたセンターラインはハイテクには向いていない。しかし、問題はインフラだけではない。クラウドベースの共有ソフトウェアのように、自律走行車を現実のものにする技術の多くはまだ開発中だ。
テスラのイーロン・マスク(Elon Musk)のように、自動運転車がまもなく登場するという考えを公に喧伝している人もいるが、それはまだ実現していない。それまでは、自動運転車の事故や規制に関する議論の話を聞くことになるだろう。
シリコンバレーには、未だに多様性の問題がある
WOCinTech Chat/flickr
テクノロジーは、この10年間で私たちの生活を大きく変えた。しかし、世界有数のテクノロジー企業の中には、状況が比較的変わっていないところもある。
多様化の努力にもかかわらず、ほとんどのIT労働者は白人と男性である。シリコンバレーのベンチャーキャピタリストを指して「オールド・ホワイト・ボーイズ・クラブ」という言葉が使われるようになったのは、この十年ほどのことだ。
2010年のサンノゼ・マーキュリーの分析によると、2005年にシリコンバレーのトップ10企業が雇用していた女性、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニックの割合は、1999年に比べて減少している。また、ニューヨーク・タイムズによると、ベンチャーキャピタルが支援するテック系スタートアップの8%は女性が設立しているという。
「シリコンバレーはゆっくりではあるが変化の兆しを見せている」
テクノロジー企業に性別と人種のデータを明らかにするよう要求した後も、2009年以降に調達されたベンチャー資金4247億ドルのうち、2億8900万ドルしか黒人女性の会社には投資されていない。黒人女性の起業家の数が毎年増加し続けているにもかかわらず。
2017年には、グーグルの技術系の仕事に女性が占める割合はわずか18%だった。ツイッター従業員のうち黒人はわずか1%だった。フェイスブックでは、わずか3%の従業員がヒスパニックだった。サンフランシスコのテクノロジー企業177社を対象にしたRevealの調査によると「企業の3分の1近くには、有色人種の女性役員はいなかった」という。
この10年間、多くの大手IT企業の多様性とセクシャルハラスメントに関するスキャンダルが注目を集めた。これを受け、一部のテクノロジ企業は雇用プロセスを更新することなどを約束している。
[原文:5 major ways Silicon Valley has changed in the past 10 years]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)