安定か、やりがいか?転職に悩んだ時に効く哲学というヒント

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転職サービス「doda」によると、多くの企業が年末までの採用を目標に求人募集を行うため、10月以降の求人数は緩やかに増加する見込みという。

撮影:今村拓馬

仕事や働き方に不満を抱え、転職を考えている人は少なくない。

だが、実際に会社を辞めて新しい職場を選ぶことはそんなに簡単ではない。記者は2019年10月に、大手全国紙からBusiness Insidier Japanに転職をしてきて1カ月。8年勤めた新聞社は社員3000人を超える大企業だったが、深夜勤務が多かったり、自分の希望通りの仕事ができなかったりという環境に「このままでいいのだろうか」。次第に悩むようになっていた。そこから、迷いながらも転職活動を始めた。

しかし転職活動では悩むことも多かった。「大企業を辞めた場合、収入はどうなるのだろう」「そもそもやりたいことって何だ」——。考えをまとめるのは簡単ではなかった。

イベントで語り合う

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「転職で重視するのは、お金か環境か」など、イベント参加者の問いがまとめられたホワイトボード。

撮影:横山耕太郎

終身雇用がすでに崩壊し、生涯1社に勤めることが当然ではなくなるなど、これまでの価値観に疑問をもつ人が増えている。長時間労働の見直しや、リモートワークの働き方をめぐる環境も変化を続けている。

そんな中、大手経済紙で「ビジネスに効く哲学」特集が組まれるなど、じわじわと注目されているのが「哲学」だ。大手企業が商品開発のコンセプト設計に、哲学的なアプローチを採用するなど、企業からも注目が集まっている。

パーソルキャリアでは10月26日、「転職によく効く!dodaはじめての哲学対話」というイベントを初開催した。80人を超える参加者が集まり、「転職の成功とはなにか」などのテーマで、転職にまつわる思いや悩みを語り合った。同社の原田有里恵さんは「転職活動の軸を決められずに悩む人も多い。答えのない問いを追求する哲学の姿勢が役に立つのではないかと思い企画した」と話す。イベントは好評で、次回の開催も予定されているという。

指針のない時代だからこそ

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前提を疑うことや、論証的に考えるといった「哲学する方法」を解説する吉田氏。

撮影:横山耕太郎

イベントでファシリテーター(進行役)を務めたのは、哲学を事業内容とする「クロス・フィロソフィーズ」代表取締役の吉田幸司氏。吉田氏は上智大学哲学研究科博士課程を修了後、日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)を経て、同社を起業した。

同社では、哲学の知識や方法論を取り入れたコンサルティングやワークショップなどを手掛けており、ライオンやパルコなど大手企業や大学からも依頼を受けている。2019年10月からは、ビジネスでの哲学の活用法を紹介するメディア「BIZPHILO」も開設した。

哲学への関心が高まっている現状について、吉田氏は社会の変化を指摘する。

「人工知能など先端技術の発展で、これから5年、10年後にどうなるか、専門家でも分からない時代になっています。それでも、人や企業は前に進まなければならないわけですが、従来の考え方や方法論が通用しないとしたら、どうしたらいいのか。先行きが不透明な時代だからこそ、人生や事業の意味を考える必要性が生じ、哲学に指針を求める人や企業が増えたのではないでしょうか」

考えるための3つのヒント

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イベントで吉田氏は「なぜ自分はその問いを抱えているのかを考えてみてほしい」と話した。

撮影:横山耕太郎

記者自身もそうであったように、とにかく転職に迷いはつきものだ。迷いの最中にある時、どのように考えたらいいのだろう。吉田氏にポイントを聞いた。

1.問いを言語化してみる

「迷いや悩みのモヤモヤに形を与え、適切な問いを設定することが大事です。

サークルを辞めるかどうか迷って相談してきた大学生の例だと、私と話している中で、『辞めたくなった原因は何か』『続けたいという思いと葛藤しているのはなぜか』『辞めた場合と続けた場合のメリットとデメリットは何か』など、悩みに対して問いを設定していくことで、学生は考えを整理して決断することができました」

2.自分がどんな人間かを知る

「人と意見を交わす中で、自分がどんな人間かを知ることできます。なぜ自分はそう思うのか、なぜその問いを抱えているのか、考えてみてください。自分が他人とどう違うのかを知ることで、自分がどういうタイプなのか明確にすることができます」

3.思考パターンを変えて考えてみる

「当たり前に受け入れている前提を疑う。反対の意見など別の視点から考えてみる。具体例を考えるなど、いろいろなパターンで考えてみること。紙に書きだして考えを整理するのも有効です」


そこで、記者自身の転職を、上記の哲学的なアプローチで振り返ってみたい。

1.問いを言語化

そもそも「転職したい」という思いは強かったものの、転職活動を始めたばかりの頃は、なぜそう思うかをうまく言語化できなかった。ただ、仕事を合間を縫って何社かの面接を受けるうちに、転職を通じて「やりたいことができるようになるか」と「収入が減少してもやりがいを重視したほうがいいか」という点が悩みだとはっきりしてきた

2.自分はどんな人間か

友人との会話も役立った。大企業から2度の転職を経験してコンサルをしている友人や、都内で公務員として働く友人に相談したが、多くの場合は「大企業に残った方がいい」と説得された。将来を含めた収入の安定が大きな理由だったが、それだけに納得できない自分がいた。

そこで、「収入が減少してもやりがいを重視したほうがいいか」という自分の中にある問いを踏まえて、どう納得できるかを考えた。

3.思考パターンを変えて考えてみたところ……

大手企業の経営難も珍しくない現代にあって、大企業だから収入が安定するという前提を疑ってみれば、「ネットメディアでの挑戦」というやりがいを重視して転職してもいいのではないかと思えるようになった。つまり、思考パターンを変化させた結果、道筋が見えてきたのだ。

記者の場合、初めて転職情報サイトに登録してから、実際に転職するまで半年以上の時間がかかった。最初から哲学的な思考を意識していれば、もう少し悩む時間は短くできた気がする。

もしあなたが、転職や進路に悩んだり迷ったりしているのなら、ものは試しだ。哲学的なアプローチを試してみるのも一つかもしれない。

(文・横山耕太郎)

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