MacBook Proキラーは本当だった。15インチ版Surface Laptop 3試用レビュー

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取材に持ち歩いている現行世代最初期型のMacBook Pro 15インチモデル(左)とSurface Laptop 15インチモデル。サイズはほぼ同じで、(発売年次の違いから)大幅に性能アップ。実際の使い心地はどうだろうか。

撮影:伊藤有

Surface Laptop 3の15インチモデルについては、性能とコストパフォーマンスの良さから、MacBook Pro 15インチモデル(以下、MBP15)と比較する人が多い。

今回はMBP15ユーザー目線で、手元に届いたSurface試用機と比較してバッテリー駆動時間やベンチマークでの性能、体感性能などを比較して「Surface Laptop 3に買い替えるとどうなるか」をレポートする。

Surface Laptop 3とMBP15のサイズを比較

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キー配列とサイズ感の違いがよくわかるカット。MBP15に慣れているせいで、Laptop 3の使い始めは右上の半角キーを誤タッチすることが多かった。2日程度使えば慣れてしまったが。

撮影:伊藤有

試用機はCPUがRyzen 5/メモリー16GB/256GB SSD搭載モデル。マイクロソフトの公式直販サイトで23万1880円(税込み)という、ラインナップ上は「真ん中のモデル」ということになる。

MBP15はこの秋にも最新機種が出る噂はあったものの、今のところ発表には至っていない。プラットフォームとしても2016年10月発表以来変わっていないので、現行世代最初期に手に入れたユーザーからすると「そろそろ新機種に買い替え」と思い始める時期だ。

サイズ比較では、Surface Laptop 3はざっくりいうと「MBP15より薄く」「MBP15より幅が狭く」「MBP15よりやや奥行がある」ボディーだ。

とはいえ、サイズ感は極めて近い。

一方、大画面を持ち歩く人にとって重要な重量はそれなりの差があり、Laptop 3が1542g(1.54キロ)に対してMBP15は1.83キロ。約300gほど軽量だ。

キーボード、ディスプレイは文句なし

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出張に向かう成田エクスプレスで原稿を書いているところ。キーボードの入力音はMBP15よりやや小さめ。周囲に響く「カチャカチャ音」は、やや軽くタイプすればほとんど気にならないレベルになる。後述するバッテリー駆動時間の長さは出張やモバイル使用の多い環境では明確な武器になる。

撮影:伊藤有

Onedrive、各種仕事で使うツールのセットアップを終わらせて、MacBook Proと同等の作業環境にセットアップして使い始めてみる。

キータッチはMBP15の「超小ストローク、押し切った底付き感がしっかりある」のとは違って、Laptop3は「比較的ストローク多め、底付き感はやややわらかめ」。とはいえ、同種のアルミボディー系のノートPCとしては、ごく一般的なタッチだ。

キー操作音はMBP15ほどではないにせよ、比較的「カチャカチャ音」は聞こえる。

キーピッチは19ミリ、ストローク1.3ミリと十分にとってあり、変則ピッチのキーも最小限。これでキーが打ちにくいという人はあまりいないはずだ。

一方、液晶の表示品質はどうだろう。

MBP15はノートPCの中でも、解像度、発色も含めてかなり上質な部類の液晶だった。明るさ500ニト、広色域なP3対応だ。

Laptop 3に乗り換えると液晶が一番最初に気になりそうな部分だったが、これも合格点と言ってよさそうだ。

明るさは、移動の車内含めて室内で最大輝度ではまぶしいほどで、精細感もある。解像度は2496 x 1664ドット(MBP15は2880 x 1800ドット)と、MBP15ほどではないにせよ、十分に広い。

またSurfaceシリーズだけあって、10点タッチ入力とSurfaceペン入力にも対応。これは好みによるが、タブレットや2in1に慣れると画面に触れないことをストレスに感じる僕としては、大きく評価できるポイントだ。

Windowsならではの「現代水準の最新装備」というのがLaptop3の魅力の1つといえる。

実測バッテリー駆動時間などの特徴は次にまとめた。

「日本市場の要望」からできた15インチ

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マイクロソフト本社のコーポレートバイスプレジデントで、一般消費者向け製品および法人・教育市場向けマーケティング責任者のマット・バーロウ氏。

撮影:伊藤有

10月17日の新製品発表会に合わせて実施した個別インタビューでは、同社のコーポレートバイスプレジデントのマット・バーロウ氏は次のように語っていた。

「法人顧客から大画面がほしいという要望が多かった。また日本の家庭にはまだWindows 7 PCが多く、それらの多くは15インチのフットプリントのものだ。ただし、Surface Laptop 3ほど軽量ではなく、パワフルなものでもない。それらをSurface Laptop3の15インチモデルにリプレースしてほしいと思う。

Surface Laptop3なら、今置いているその位置に、ぴったりフィットするはずですから」(バーロウ氏)

日本独自の要望と聞くと、「薄くて軽量なモバイルノートを」という話かと思いがちだ。しかし、Surfaceシリーズに関しては真逆の要望を出し続けていたと、日本の担当者はいう。

「量販店の販売、出荷台数をみると、15インチは非常に大きい市場。市場の中心はいまだ15インチにある、というのが実情でした。お客様から(大画面がほしいという)フィードバックをもらっていましたし、日本法人からも本社にはずっと(15インチモデルがほしいと)言い続けていました」(国内担当者)

実測バッテリー駆動は約8時間

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モバイル利用にも十分なバッテリー駆動時間をもっている。

撮影:伊藤有

決まった席を持たないフリーアドレスのオフィス利用や、社外で使うリモートワーク、出先での作業が多くなり、営業職ではバッテリー駆動時間の良し悪しの重要性が以前より増している。

バッテリー駆動時間は、バッテリー駆動時間の計測ソフト「BBench」による計測で、7時間48分。これは輝度が10段階中の真ん中、バッテリーは「推奨」設定。また残容量20%以下時点から「節約モード」に切り替わる設定での実測だ。

だから、最小輝度近くまで下げれば、ほぼ8時間の動作は手堅いところだ。

8時間クラスになると、「基本的に日中はACアダプターがいらない」といえる駆動時間になる。

Ryzen5「Surface Edition」の実力

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総合ベンチマークソフト「PCMark10」の結果。3回計測したうち最も高い値。ほかの計測でもいずれも4000前後だった。

撮影:伊藤有

一方、15インチモデルの一部が採用するAMD Ryzenの性能への期待は高い。

参考までに、PCの一般的な性能を計測する「PC Mark10」の結果は上記のとおり。

試用機が採用するRyzen 5は、ラインナップのなかでは真ん中のモデル。CPUの名称「AMD Ryzen 5 3580U Microsoft Surface Edition」という名前からわかるように、正規ラインナップにはない特別仕様だ。

「U」型番のRyzen 5の場合、通常は内蔵グラフィックが「Radeon Vega 8」になるが、Surface Editionは「Radeon Vega 9」と、一段高性能になっている。

特に気になる、グラフィック性能を計測する「3DMark」の結果は次の通りだ。

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グラフィックベンチマーク「3DMark TIME SPY」の結果。ゲーミング向けとしては決して高くない水準。

撮影:伊藤有

あくまで参考だが、ネット上のベンチマーク結果を見ると、3DMark TIMESPYでは、Ryzen 5の上位モデル「Ryzen 5 3550H」(こちらはグラフィックが、一般的なRadeon Vega 8)採用ノートPCに比べて、約1.5倍程度のスコアが出ているようだ(画面右上のグラフィックカードの認識エラーは、チップが新しすぎるためのようだ。ドライバーをAMDが配布している最新版にアップデートしても改善しなかったので、3DMark側の問題の可能性が高い)。

ただ、絶対値としては、グラフィック性能は「CPU内蔵グラフィックとしては高性能」という水準。Laptop3がバリバリ使えるゲーミングPCになりうるかと聞かれると、そこまでの期待は禁物、という印象だ。

フルパワー処理時の発熱は及第点

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発熱は、AMDのCPUというイメージからすると、拍子抜けするほどおとなしい。フルパワーで動く場合は膝上で使うのはおすすめしないが、机の上に置いて使う分には不快な熱はほぼ感じなかった。

撮影:伊藤有

なお、ある程度パワフルなモデルということで発熱と、冷却ファンの動作音も気になるところ。

ベンチマーク計測中に本体の発熱をチェックすると、本体左上のTABキーの裏側あたりが熱源のようだ。

3DMarkやPC Markの実行中に触ると、本体の背面の熱源付近は、触れると不快なレベルの熱さになっている。ファン動作音は「キーン」という金属っぽさのある高周波系。うるさくはないが、こちらも回ってる感は結構ある。

ただし、実用面では、手が触れるキーボードやパームレスト周辺はぬるく温まる程度で、気になるほどの発熱は感じられなかった。一般的な使用時の排熱設計は、しっかりと作られている印象がある。

いくつか気になる部分

原稿執筆時点では、発売後3日間程度の短期間の試用でしかないが、いくつか気になる点もあった。

1. マットブラックの本体は指紋がそれなりに目立つ

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手に触れる部分が少し色が濃くなって見える。クロスで吹けば拭えるものの、気になる人は本体色が明るめの「チタン」を選んだ方がよいかもしれない。

撮影:伊藤有

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キートップは数日の試用レベルではきれいなままだ。

撮影:伊藤有

事前に想像できることとして、「暗めの色を選ぶと指紋の跡が目立ちそう」というものがある。

これは想像どおりだった。非光沢のマットなブラックのため、明らかに指紋が目立つというほどではないものの、特にタッチパッド、パームレストは皮脂の痕跡はちょっと気になる。

一方、キーボードのほうは3日ほどの試用だと気になるほどではなかった。指紋跡が気になる人は、もう一方の本体色チタンを選ぶと良さそうだ。

2. 接続端子はUSB-C、USB-Aが1つずつのみ。割り切った仕様

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かなり割り切った仕様と感じる接続端子。ここ以外は、右側面にある充電専用コネクターだけだ。なお、奥から2つ目のUSB type-C端子でも充電は可能。

撮影:伊藤有

接続端子については、明確にシンプル化を意識しているように感じる。端的に言って、かなり割り切っている。

拡張に使える接続端子は、左側面にあるUSB type-Cと、フルサイズのUSB-A各1つのみ。右側面にあるのは専用充電端子のSurface Connectしかない。

汎用のUSB type-CタイプのACアダプターを使って充電すると、フルサイズのUSB-A端子1つですべての外部接続をまかなうことになる。もう1つくらいUSB type-Cがあってもよかったのでは……という気はする。

この点は、左右に2つずつUSB type-Cを搭載してきたMBP15の方が自由度は高い。

3. タッチパッドのスクロール操作

重箱の隅的な指摘かもしれないが、なかなか違和感が解消しなかった点がタッチパッドのスクロール操作。MBP15と比較すると、ブラウザーなどを縦スクロールする際の移動の速度が、少し滑っている感じがする。

実用上問題ないが、これは「こういうものだ」と諦めて使うことにしている。

総評:よくできた15インチモバイル

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試用機の保護カバーとして購入した15インチ対応のケース。これがSurface Laptop 3になんとぴったり。価格1000円前後と手ごろなわりに質感が高く、おススメできる。

撮影:伊藤有

15インチ版Surface Laptop 3を総評すると、「よくできた15インチモバイル」だという印象だ。

ビジネスでも個人向けでも違和感のない高い質感、タッチ/ペン対応、パワフルな性能といった「今のWindows10の世界観を詰め込んだ装備の良さ」、ただし価格は装備なりに高い。

唯一足りないものがあるとすると、どこでもネットにつながるSIMフリーのLTE接続機能か。

「後出し追加」の可能性も気になるが、バーロウ氏に直接聞いたところでも、後出し追加は考えていなそうだった。

バーロウ氏いわく、併売するSurface Pro 5とSurface GoではLTEモデルを提供中だし、2020年1月に登場するARM版Windows機の「Surface Pro X」もLTE対応。「選択肢は十分ではないでしょうか」とのことだ。

話を最初に戻すと、画面が広くてパワフルで持ち歩けるMBP15の買い替え狙いなら、現役ユーザーから見ても、十分アリな選択肢といえる。

価格を抑えたい人向けにはメモリー8GBのモデルを選ぶことで16万円台に抑えることも可能。

アドビ系のツールやMS Officeも含めて、いまや仕事に使う対応アプリではWindowsもMacも大差がない。そうを思うと、本機はアップルにとって、かなり手ごわい相手になりそうだ。

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(文、写真・伊藤有)

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