ハロウィンは渋谷を幸せにしたのか。本番直前、渋谷はピリピリムード

渋谷

「ハロウィンを渋谷の誇りに」というポスターと厳戒な警備体制には“ちぐはぐ感”も……。

撮影:西山里緒

10月31日は渋谷でハロウィン!」が根付いてからはや数年。

2018年にはセンター街で群衆に軽トラックがひっくり返される動画が拡散され、逮捕者が出るなど事件化。「祭り」から「暴動」へとそのイメージは急速に変わっていった。

2019年、渋谷区は新たに条例を制定、ハロウィン期間中の路上での飲酒を禁止するとともに、予算1億円を投じ、マナー啓発のためのポスター設置や100人規模の警備体制を敷き、当日に臨んでいる。

ハロウィン“本番”を控えた週末(10月26日)の渋谷には、記者も現地入りしたが、例年よりも人の出は少ないように感じた。“暴徒化”したハロウィンは渋谷に何をもたらしたのか ── 関係者に話を聞いた。

バカ者、被災地行きなさいよ!

渋谷

2018年の渋谷ハロウィンの様子。騒いでいる人も目立ったが……。

そんなにやりたければ、血のり(をつけた格好)でいいから被災地に行って後片付けしろって。馬鹿騒ぎしている場合じゃないよ!」

そう語気を強めるのは、渋谷センター商店街振興組合の小野寿幸理事長だ。

2018年のハロウィン後には「(これは)“変態仮装行列”だよ!」と切り捨てた様子がメディアで報じられ、SNSなどで「パワーワードすぎる」「よくぞ言ってくれた」と共感が寄せられた。

騒音・ごみ・排泄行為・器物損壊……。年を重ねるにつれひどくなっていく迷惑行為は、センター街にも深刻な被害をもたらしている。

毎年、ハロウィンの後にはゴミ拾いのボランティアが数多く集まる様子が賞賛されるが、それも「本来ならやらなくていいこと」と、小野氏はバッサリだ。

2019年は今のところ「ゴミなどの被害は2〜3割減」と評価するが、それでも「連中は金を使いませんから。あの期間にアレがなければ、山の手のファミリー層が来てくれていたはず。(経済効果は)マイナスです」(小野氏)。

愛と憎しみの渋谷ハロウィン

渋谷

ハチ公前では「ハロウィンを渋谷の誇りに」という大きな壁広告が目に入る。

地域住民から向けられる強い批判の声 ── 。その一方で、ハロウィン期間中に渋谷を歩いてみると、ちょっとした“違和感”が頭をかすめる。

というのも、10月26日土曜日は文字通り“厳戒態勢”で、渋谷スクランブル交差点で少しでも列から外れる人がいると即座に注意が入るほどの厳しい警備だったものの、その横を見れば「ハロウィンを渋谷の誇りに」というポスターが、そこかしこにはためいている。

結局、渋谷はハロウィンをアピールしたいのか、なんなのか ── ?

こうした渋谷のジレンマも、渋谷ハロウィンの“特異性”に起因するところが大きいと、このポスターを制作した渋谷区観光協会の理事長・金山淳吾氏はいう。

そもそも渋谷のハロウィンは主催者が存在せず、自然発生的に広まった“お祭り”だった。それがあまりにも急速に、予測不可能な形で広まってしまったばかりに、行政や地域団体、飲食店などとの連携が取りづらい状況に置かれてしまったのだという。

例えば渋谷区観光協会では、ハロウィン中に人の集まる場所やその動線がないことが問題だとみて、代々木公園内に仮設トイレやフードエリアなどを備えた特設会場を設ける案も検討していた。

しかし2018年の騒動以降、検討案はお蔵入りに。まずは啓発ポスターで“沈静化”を図るのが先だ、という意見が大きくなったためだ。

「スクランブル交差点を渡った後の目的地に誘導したかった。居場所が作れれば、渋谷らしさのあるハロウィンになるはず」と、金山氏は悔しさをにじませる。

渋谷区長

「(規制・警備の効果は)10月31日が終わるまではなんともいえない」と硬い顔だった、長谷部健・渋谷区長。

長谷部健渋谷区長に話を聞いてみると、やはり、渋谷区主導で規制をつくることへの不本意さを隠さなかった。

「一番大切なのは、みんな渋谷がいいと思っているから来てくれているということ。なんでも、バッテンバッテンにしたくはないんです。モラルとマナーの話のはずなのに、なぜルールが必要なのか。警備に計上している予算やカロリーも、少しずつ減らしていければ」

そこには(渋谷への)愛と(犯罪への)憎しみに引き裂かれる当事者たちの姿があった。

前年比2割増の“プチバブル”も

バーガーキング

バーガーキングは店を「ゾンビ仕様」にチェンジ。

推進か、規制か 。“祭り”と“暴動”の境目で揺れる、渋谷ハロウィン。筆者は、2017年・2018年に続けて、3年連続でハロウィンに参加している。

例年、確かに騒音はうるさく、早朝のゴミも目に余るものがある。しかし、ほとんど若者しかいない場所で、若者が自分たちのためだけに盛り上がる ── そんな他にはない高揚感に、毎年大きなエネルギーをもらっていたことも確かだ。

数年前から過熱している「ハロウィン商戦」も今、分岐点を迎えている。

日本記念日協会によると、2019年のハロウィンの推計市場規模は約1155億円で、過去最高の約1345億円だった2016年以来、3年連続で減少している。さらにグーグルトレンドをみてみると、2015年をピークに「ハロウィン」の検索結果はゆるやかに減少の一途をたどっている。

2019年の渋谷は、路上飲酒禁止だ。お酒を求めてあふれる人々の受け皿となったのか、立ち飲み形式のバー「パブリックスタンド」では、ハロウィン直前の週末に当たる10月26日の土曜日、対前年比で(売り上げが)2割増。翌日にあたる27日(日)と28日(月)の売り上げも対前年比でいずれも約1割増と、好調な数字だという。

ハロウィンが季節の風物詩として日本全体に根付くようになるのか ── 今年がその分水領になるといえそうだ。

(文・西山里緒)


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