「東京国際」というより「六本木国際映画祭」。なぜ国内外からの注目がイマイチに?

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東京国際映画祭でフェスティバル・ミューズを務める女優の広瀬アリス。

提供:東京国際映画祭

第32回東京国際映画祭が10月28日から始まっている。

初日に東京の六本木ヒルズで開かれたレッドカーペット(オープニング)には、映画祭の大使を務める女優の広瀬アリスが登場し、「映画の素晴らしさを伝えていきたい」とあいさつした。

さらに、日本の人気俳優や監督たち、海外の俳優や監督が登場し、ファンたちは熱い声援を送った。

しかし、東京国際映画祭にはすでに10年近く、映画祭としての存在感、存在意義、海外への発信力について懐疑的な目が向け続けられている。

国際的知名度の高いのはチャン・ツィイーくらい

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10月29日に行われた東京国際映画祭のコンペティション部門審査員記者会見。左から、審査委員の廣木隆一監督、ジュリー・ガイエ、チャン・ツィイー、ビル・ガーバー、マイケル・ノアー。

撮影:大塚淳史

世界的な国際映画祭といえば、自国の映画作品、俳優や監督だけではなく、世界的に注目されている海外作品や俳優、監督たちの参加が注目ポイントのひとつだ。

今回レッドカーペットに登場した中で、国際的な知名度があり、日本人でも知られていると言えるのは、映画祭の審査委員長を務める中国人女優のチャン・ツィイーと、アジアで人気の高い香港の歌手・俳優のアーロン・クオックくらいだろう。正直言って、国際映画祭と呼ぶには寂しい陣容だ。

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コンペティション部門の審査員記者会見に出席した廣木隆一監督。

撮影:大塚淳史

10月29日のコンペティション部門の審査員記者会見では、審査員の一人である廣木隆一監督が「東京国際映画祭はいろんな国の映画祭と比べられたり、いろんなことを言われたりするんでしょうけど、こんなにたくさんの作品を見られる映画祭はないんで、本当に関心を持って映画を見て欲しい」と話していた。

どうやったら一般的な関心を高められるか質問すると、「(映画祭への関心が)下がってきているかどうかはわからない。東京はビッグシティーなんで本当にいろんな行事があって、映画祭もそのひとつ。国が文化に対して口を出さずに金を出してくれるといいかなと思う。そこが一番かな」と言葉を選びながら答えた。

海外に発信されたのは、チャン・ツィイー第二子妊娠

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10月29日に行われた、チャン・ツィイー女優生活20周年記念特別上映「初恋のきた道」。上映前に本人が登場し、ファンと交流した。

撮影:大塚淳史

オープニング翌日の29日に一般紙やスポーツ紙などの紙面を見た。

日本の大女優・八千草薫さんが亡くなったため、文化面や芸能面はそちらで占められた。東京国際映画祭は紙面での取り扱いが小さく、掲載していないところもあった。新聞に載ることが重要かどうかは別として、ニュースの価値を測る指標のひとつではあるだろう。

海外への発信力も寂しい限りだ。レッドカーペットには海外から116媒体、記者やカメラマンなど432人が参加したということだったが、日本のメディアの英語版などでは紹介されたものの、海外媒体ではほとんど目にしていない(筆者自身が見つけられていない可能性もある)。

筆者は29日の審査員記者会見でチャン・ツィイーに対し、東京国際映画祭がアジアだけとっても、釜山や北京、香港といった映画祭に比べて存在感が希薄になっているのでは?と質問した。

「私にとって一番重要なのは、素晴らしい作品が上映されているかどうかです。(映画は)文化を伝達する手段だから。東京国際映画祭は、多種多様な作品がそろっている。それは素晴らしいことだと思います」

だが、チャン・ツィイー自身、映画祭開幕日にSNS上で第二子を妊娠し、30週目であることを明かしたため、中国メディアはむしろそちらのほうを大きく取り上げていた。

映画関係者からも苦言

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六本木ヒルズ前の歩道の街灯には東京国際映画祭のポスターが吊り下げられているが、あまり目立っているとはいえない。以前は左下の電光板に告知ポスターがあったはずだが。

撮影:大塚淳史

筆者に言わせれば、今回も結局「六本木国際映画祭」になってしまった。ほぼ六本木、さらに言えば六本木ヒルズだけで完結していて、六本木を歩いている人だけの人には、ここで映画祭が行われていることがわからない。

以前は映画祭の期間内には、六本木ヒルズの首都高に面している側に大きなポスターが掲出されていた。今年は周辺の歩道の街灯の上部に小さいポスターが貼られているだけ。それ以上に目立つのは、ラグビーワールドカップで活躍した日本代表のリーチ・マイケル主将が登場するクレジットカードの巨大広告。

映画祭の久松猛朗フェスティバルディレクターは、2年前の映画祭では「誰もが参加して楽しめるようにしたい」と話していたが、今回感じたのは、誰もがふらっと立ち寄れる映画祭というよりは、映画が大好きな人しか足を運ばないものになってしまったということだ。

一時は映画祭のメイン会場を、2018年3月に開業した、TOHOシネマズが入る「東京ミッドタウン日比谷」に移すのでは、との噂もあった。日比谷の方がより開かれたスペースがあり、人々への周知という点でも、映画祭のメイン会場には向いていると筆者は思っていたのだが。

なぜ東京という大都市の国際映画祭にも関わらず、ほぼ六本木の映画館での上映のみなのか。せめて東京主要エリアの映画館を巻き込めないのか。不思議で仕方がない。結果的に、映画祭が行われていることすら多くの人が知らないまま終わっていく。

映画人からも毎年苦言が出ている。今年は、オープニング作品『男はつらいよ 寅さん お帰り』の山田洋次監督が「東京国際映画祭には早くフィロソフィーを持ってほしい」と苦言を呈していた。

資金不足も影響?

資金面の影響で縮小しているのではないかと指摘する声も多い。映画配給会社の関係者はこう漏らす。

「数年前にスペシャルスポンサーだったトヨタ自動車が離れてから、映画祭が資金面で苦労しているように思える」

トヨタは豊田章男社長が日本自動車工業会の会長を務めていることもあって、同会が主催する東京モーターショーを盛り上げようと、全社をあげてテレビCMなどに力を入れている。モーターショーとほぼ同時期に開かれてい映画祭がその煽りで苦しんでいるとしたら、なんとも皮肉な話だ。

(文、大塚淳史)

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