世界初のMaaSアプリ、Whimが12月、いよいよ日本に上陸する。
画像:Whim
「アプリひとつで“移動”を完結させる」 ── 世界初のMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)アプリとして知られるフィンランド発の「Whim(ウィム)」が2019年12月、千葉・柏の葉で実験的にサービスを始める。
2020年初頭には本格的にサービスを開始、2020年春には月額制サービスの導入を目指し、ほかの2〜5都市でも導入の議論が進んでいるという。
MaaSアプリの先駆者は2020年、日本に“MaaS元年”をもたらすのか。
Whimを運営するMaaS GlobalのCEO、サンポ・ヒエタネン氏に話を聞いた。
MaaSとは:電車やバスなど、複数の交通手段を乗り継いで移動する際に、各事業者ごとに個別に予約や支払いをするのではなく、モビリティ全体を一つのサービスとしてとらえ、利用・提供するという考え方。
柏の葉でMaaSを始める理由
ヘルシンキで「Whim」を使った様子。目的地を入力すると、そこまでの最適な移動手段が表示され、アプリ内で決済もできる。
撮影:西山里緒
日本上陸が長らく騒がれてきたWhimだが、最初の拠点として選ばれたのは、柏の葉だった。12月から始まるサービスでは、市内のタクシー・バス・カーシェア・バイクシェアが目的地に応じて表示され、予約と支払いもアプリでできるようになるという。電車などの他の交通機関とも、連携に向けての議論が続いているという。
Whimの構想はこれだけに止まらない。今回のプロジェクトのキモは、三井不動産との提携事業であることだ。
ヒエタネン氏は「これは、MaaSを次のレベルへ持っていく協業だ」と強調する。
「例えばアパートを借りるときに(職場や学校への)移動手段まで設計し、それを家賃に含めることができたら。そしてそれを都市計画に反映させ、公園やレクリエーション施設などを“移動”の観点からデザインできれば、(MaaS構想は)まったく異次元の、次のレベルにまでいくことができる」
三井不動産は柏の葉でスマートシティプロジェクトを推進している。Whimと三井不動産が連携することで「移動と暮らしをつなげて考えてまちづくりができる」ようになる、というわけだ。
日本は世界のMaaSの中心になる
Whimが注目を浴びて以降、さまざまな事業者が「MaaS参入」を表明してきた。
小田急電鉄は10月30日、箱根エリアと新百合ヶ丘エリアで使えるMaaSアプリ「EMot(エモット)」の実証実験を開始。同日、JR西日本も広島東部エリアで「せとうち観光アプリsetowa(せとわ)」を開始するなど、その動きは2019年後半に入ってさらに活発になっている。
この活性化の背景には、ヒエタネン氏が「駅すぱあと」を手がけるヴァル研究所と小田急電鉄が共同で手がけるデータ基盤「MaaS Japan」を非常に評価していることがあるという。
MaaS Japanの仕組み。移動に関わるさまざまな事業者がデータ基盤を共有する。
出典:小田急電鉄
「MaaS Japan」は、小田急電鉄に限らない、さまざまな事業者がオープンに利用できるデータ基盤だ。NTTドコモ、DeNA、Japan Taxi、JALといったモビリティ事業者がすでにパートナーとして参加を発表し、それぞれが開発するMaaSアプリで、交通データやチケット情報などを共有する。10月30日、MaaS GlobalとシンガポールのmobilityXもデータ連携に合意した。
このようなオープンなデータ基盤形成の取り組みは世界でも先進的なもので「この取り組みがうまくいけば、日本は世界のMaaS市場のリーダーになれる」とヒエタネン氏は声に力を込める。
フィンランドから来た黒船ならぬ”ヴァイキング船”は2020年、日本にMaaS旋風を巻き起こすのだろうか。
(文・西山里緒)