プラススタイルは、10月31日に自社ブランドの「スマートマルチリモコン」を発表した。
撮影:小林優多郎
ソフトバンクグループのプラススタイルは、日本での「スマート家電」の本格的な普及を目指している。すべてのものがインターネットにつながるIoT技術は向上しており、日本でもグーグル、アマゾン、アップル、LINEがスマートホーム関連のプラットフォームづくりに注力している。
そんな業界的な波に乗る形で、プラススタイルは8月に、1万7800円のロボット掃除機、6980円のシーリングライト、1580円のスマートLED電球など自社ブランド6製品を発表(いずれも直販価格、税込)。
そして10月31日、それに続く形で赤外線で既存の家電も操作できる「スマートマルチリモコン」(直販価格6480円)を発表した。
いずれの製品もスマート家電としては、手に届きやすい現実的な価格設定となっているが、「安かろう悪かろう」という言葉もある。プラススタイルが実現しようとしている“未来の家”はどのようなものなのか、実際に自宅に複数の製品を取り付けてみた。
人感センサーとLED電球で玄関ライトの自動化
パッと見ただけでは、何の変哲もない電球だが、ネットにつながっている。
今回我が家に取り付けたのはマルチリモコンとLED電球、そして「スマートセンサー(人感)」だ。ちなみに、プラススタイル製品以外にもフィリップスのLED電球「hue」やシーリングライト、ソニーのAndroid TV搭載「BRAVIA」、そして複数台のスマートスピーカー・スマートディスプレイは既に設置済みだ。
プラススタイルの人感センサー。サイズは幅が約59mm、奥行き約59mm、高さ約61mmと小柄だが、内蔵バッテリーでも駆動する。
今回、LED電球とスマートセンサーは玄関に設置した。理由は玄関に近づいたら電気が自動でつき、離れたら消えるという環境を構築したかったからだ。
結論から言えば、これはなかなかうまくいった。かんたんな初期設定(自宅の無線LANへの接続作業やプラススタイルサービスへの紐付け)が終われば、アプリで動作の起動条件や内容を設定してやれば、すぐに想定していた機能は実現できた。
新製品はレガシーな家電をスマート化する
写真左がプラススタイルのスマートマルチリモコン(右は別売のLenovo Smart Clock)。
続いて、新製品のスマートマルチリモコンは、寝室に設置してみた。寝室にはネットにつながらないエアコンと、ダイソンの「Dyson Pure Hot Cool」が置いてあるからだ。
厳密に言うと、Dyson Pure Hot Coolは無線LANにつながるモデルだが、日本では専用アプリでしか操作できず、アメリカのようにアマゾンのAlexaスキルも提供されていないことから、ほぼ「独立した家電」と化している。
スマートマルチリモコンでの、エアコン向けユーザーインターフェースと、内蔵センサーによる温度・湿度の履歴画面。
スマートマルチリモコンも、電源につなげてプラススタイルのアプリで初期設定さえ済ませれば、すぐ使い始められた。ただ、複数の製品に対応する「マルチリモコン」という性質上、機器ごとにプリセットを選んだり、新たにリモコンを学習させる必要があるのはやや面倒な作業かもしれない。
また、電源の確保も少し気をつけておきたい点がある。プラススタイルのマルチリモコンには、micro USB端子のUSBケーブルは同梱されているが、AC電源は自前のものを用意するようアナウンスされている。
スマートマルチリモコンにはAC電源が付属しない。筆者の場合は、Lenovo Smart Clock背面にあるUSBポートから電源をとってみた。
筆者の自宅には、過去に買ったスマートフォンやタブレット用のUSB電源がゴロゴロしているのでとくに問題はなかったが、最近のスマートフォンはAC電源を同梱していないパターンが多く、別途用意しておくのを忘れないようにしたい。
すべてがネットにつながることに意味がある
スマートホームというと単に「ライトを声で付けたり消したり」「部屋を変な色にできる」といったイメージはないだろうか。
既存の環境からスマートホーム環境にしてよかったことは、主に「旧来のリモコンから解放される」「細かいことが自動化できる」という2点だ。
リモコンからの解放については、詳しく説明する必要はないだろう。誰もがテレビやエアコンを使う前に、リモコンの場所を探してしまう。けれど、スマートホームであればスマートスピーカーなどに話しかければいい。
左からプラススタイルで「家に帰ってきたら、玄関と仕事部屋のライトをつける」設定と「朝5時〜8時、寝室の室温が13.2度以下ならエアコンをつける」設定。
そして実は、2点目の「自動化できる」というのが、スマートホームの真骨頂だ。
例えば、筆者が今回構築した玄関電灯の自動化は、センサー付きの照明器具をただ設置するだけでも実現できる。それを知っている人にとっては、なぜわざわざ無線LANに接続して、アプリで操作できるようにする必要があるのか疑問に思うだろう。
多くの家電がつながれば、同時操作・自動制御が可能になる。単体の照明器具だけではそれができない。今回の例で言えば、「いってきます」と自宅を出る前にスマートスピーカーに向かって話せば、エアコンを切り、念のためすべての家の電灯を消すことだって可能だ。
また、アプリでは電灯のオンオフの状況やセンサーの状況をチェックできるため、家族やペットの“見守り”的な使い方も可能だ(カメラで監視されるよりは、プライバシーにも配慮できるのではないかと思う)。
複数の種類の家電が1つのアプリでまとめられるメリット
プラススタイルのアプリトップ。なお、この家電の自動制御、モジュール技術などはソフトバンク コマース&サービス(現・SB C&S社)が2018年10月にパートナー契約を結んだ中国の大手IoTソリューション「Tuya Smart」によるものだ。
また、自動制御という面ではプラススタイルは「さまざまなスマート家電を1つのアプリで制御・管理できる」という強みがある。
現在、複数の種類のスマート家電製品を一括で操作・制御する場合、Googleアシスタント(Google Home)やAmazon Alexaでまとめたり、IFTTT※などの外部サービスをユーザー側で設定する必要があった。
※IFTTTとは:
別々のウェブサービスの橋渡し的な機能をもつクラウドサービス。名称は「If This Then That」の略。グーグルやフェイスブック、ツイッターなどのほか、スマート家電などハードウェアを制御できるサービスも活用できる。
“プラススタイル”ブランドのスマート家電は多数存在する。組み合わせのアイデア次第では、日常の面倒なことを解消できるはずだ。
プラススタイル製品もグーグルやアマゾンのプラットフォームと連携できるが、基本的にはアプリ内で制御・管理が可能。電球からロボット掃除機、加湿器、そしてマルチリモコンで操作できるさまざまな赤外線対応家電が幅広く制御できる点は国内の事業者の中でも珍しい。
筆者は数年前から徐々に自宅の家電をスマート家電に置き換えている。ただ、スマートと言うのであれば、スピーカーに「●●をして」なんて言わなくても勝手にやって欲しいと思うことは多々ある。プラススタイルのアプリとそして対応するさまざまな家電やセンサーを使えば、スマートホームの本当の価値に1歩近づけると感じた。
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(文、撮影・小林優多郎)