未来インフラのドローンをめぐる4つのキーワード【東京モーターショーから見えたこと】

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東京モーターショーのイベントとして、日本で初めて国際航空連盟公認のドローンレースが開催された。写真は11月2日の決勝大会の様子。

(C)FAI Drone Tokyo 2019 Racing & Conference

11月4日に閉幕した東京モーターショー。

2年おきに行われる国内最大の自動車の国際的祭典は、今回から自動車の展示に縛られない新たな取り組みを行っている。そのひとつがドローンだった。

ドローンをめぐる4つのキーワードで見ていこう。

1.エンタメ:迫力満点のドローンレース

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ドローンレースではドローン内蔵カメラを通じた映像を、装着したゴーグルで見ながら操作する。

(C)FAI Drone Tokyo 2019 Racing & Conference

日本で初めて国際航空連盟(以下、FAI)公認のドローンレースは11月1日に予選、2日に決勝大会を実施。また、11月1日にはドローンに関するシンポジウム「FAI Drone Tokyo 2019 Racing & Conference ドローン前提社会を目指して」が開かれ、ドローンに関わる官公庁や民間企業が登壇し、ドローンによってどういう社会になっていくかを紹介、議論した。

FAI公認のドローンレースは東京モーターショーの目玉のひとつ。国内外の選手が参加し、予選ではタイムラップの平均値を競い、2日の決勝大会では着順を競った。

筆者は今回初めてドローンレースを生で見たが、新鮮だった。最高時速200キロ近くになるドローンのスピードは、迫力満点。さらにドローン内蔵のカメラに映る映像は、映画さながらだった。

時には機体が障害物や地面に激しく接触してクラッシュし、煙を出していた。2日の決勝には約3000人の観客が集まり、スピード感あふれるレースを楽しんだ。

2.人材育成:不足するパイロット養成に子どもたち

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写真左から、4位の小松良誠くん、2位の川田和輝くん、1位の岡聖章さん、3位の上関風雅くん。小松くんは高1、川田くんと上関くんは小5で3人とも同じチームに所属する。

(C)FAI Drone Tokyo 2019 Racing & Conference

今大会の上位4人中、2位から4位までがなんと小学生や高校生といった10代の子どもたち。彼らは埼玉県のドローンレースチーム「JAPRADAR(ジャップレーダー)」に所属している。

チームの代表である上関竜矢さんが立ち上げ、2018年から本格的に活動。子どもたちをドローンレースパイロットに育成することを主軸に置く。ドローンの機体や活動費用など決して安くないが、来たるべきドローン社会を見据えている。

上関さんは言う。

「単なる趣味で終わらせたくないからです。これからドローンがさまざまな場で用いられていくと思いますが、その中でパイロットの需要は確実に増えていきます。腕の立つパイロットが高速でドローンを動かした映像制作はすごいですよ」

上関さんが見せてくれた映像は、自動車レースをドローンで接近して撮影し、今まで見なかったような視点や迫力のあるものだった。

「被災地でのドローン利用も今後増えていくでしょう。子どもたちが小さい時からドローンに親しみ、操作に慣れていけば、レース競技以外にも、将来ドローンを使った仕事を得ることができます。子どもたちのひとつの選択肢として提示できれば」(上関さん)

既に、上関さんのチームでは、映像制作業務を始めている。所属する子どもパイロットたちも自身の名刺を持ち、筆者とも礼儀正しく名刺交換していた。

「実際にビジネスの場に接する機会も出てきているので大切です。こういう機会(取材)を通じてビジネスマナーとかを学んでいくこともできます」(上関さん)

上関さんの息子で今回3位に入賞した上関風雅くん(11)は、12月に中国・寧波で行われる世界大会に出場が決まっている。ドローンパイロットは現状、不足していると言われているだけに、今後需要は高まりそうだ。

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ドローンのメカニック作業も子どもたち自身で行っていた。

撮影:大塚淳史

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ドローンレースチーム「JAPRADAR(ジャップレーダー)」。写真後列真ん中が、代表の上関竜矢さん。

撮影:大塚淳史

3.社会課題:インフラ点検、物流配送にドローン活用

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ジャパン・インフラ・ウェイマークではドローンを活用したインフラ点検を行う。ドローンのカメラを介して人が目視するのが難しい場所を確認できる。

撮影:大塚淳史

レースだけでなく、1日に行われたシンポジウムも来場者の関心は高かった。

ドローン産業は官民が協力することで、災害や人口減少など社会課題に活用できると登壇者たちが事例を挙げていた。

NTT西日本グループのジャパン・インフラ・ウェイマークの柴田巧社長は、インフラの点検、修繕におけるドローン活用を紹介した。

「橋梁、鉄塔、法面(のりめん)などのインフラの点検などを中心にマーケットを見ており、世界で一番ドローンを活用して点検業務を行っているAerodyne(エアロダイン、マレーシア発のドローンソリューションカンパニー)と提携して進めている。

反響が非常に大きく、インフラの老朽化対策に困っていると実感しました。ドローンを活用することで、2割から3割はコスト削減ができている。数年後には(点検する)人材も足りなくなる。その際にドローンを有効活用できるはず」

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名古屋鉄道は鉄道会社ながらすでにドローンビジネスに取り組んでいる。

撮影:大塚淳史

名古屋鉄道は鉄道会社でありながら、既にドローンに関するサービスを多く進めており、登壇した矢野裕常務執行役員はこう紹介した。

「ドローン操縦士養成スクール『名鉄ドローンアカデミー』を昨年6月に開校し、100名超が技能認定証を取得している。グループ企業の中日本航空では、2014年に日本でのドローンによるレーザー測量を初めて実施し、今では日本全国でサービスを展開しています」

10月28日には、物資配送の実証実験を成功させた。愛知県の離島である篠島に、急病人が出たという想定で、約3.5キロの医薬品をドローンで運んだ。今後も実証実験を行う予定だ。

4.普及への課題:ドローン発展の鍵になるルール形成

まだ日本ではドローンに対する法律が未整備だ。今後乗り越えていく上で何が必要かと問われ、慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表は、ルールのさじ加減を上げた。

「ドローンの技術はどんどんと進むが、どれくらい技術側に寄せたルール形成ができるかのさじ加減が難しい。例えば、無人で人の目が届かないところで撮られる映像が、(ドローンの)免許証でどれくらいまで許容されるのか」

編集部より:初出時、入賞者の方のお名前に誤りがありました。現在は正確な表記に改めております。 2019年11月6日 23:20

(文・大塚淳史)

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