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アメリカの若い世代は社会主義を受け入れている —— もしくは、少なくとも社会主義に対してオープンだ。
共産主義の犠牲者記念財団(Victims of Communism Memorial Foundation)と調査会社YouGovが実施した最新の世論調査によると、ミレニアル世代の70%、ジェネレーションZの64%は社会主義的な政策を訴える候補者に「多分投票するだろう」または「必ず投票するだろう」との考えを持っている。この調査は、16歳以上のアメリカ人2100人を対象に行われた。
社会主義的な政策を訴える候補者を好ましいと考えているのは、ジェネレーションXで44%、ベビーブーマー世代では36%だ。また、資本主義を好ましいと考えているミレニアル世代は50%、ジェネレーションZは49%で、ジェネレーションXの58%、ベビーブーマー世代の63%は自由市場を好ましいと考えている。
2020年の米大統領選に向けては、社会主義的な政策を訴える候補者が優勢だ。ピュー・リサーチ・センターによると、30歳以下の左派寄りの有権者の24%がバーニー・サンダース候補に、18%がエリザベス・ウォーレン候補に投票したいと考えている。
若い世代がより干渉主義的な政策や候補者を支持する背景とは?
1. 若い世代の収入は1974年以降、29ドル(約3200円)しか伸びていない
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米国勢調査局のデータを分析したSuperMoneyのレポートによると、25~34歳の平均収入(インフレ調整済み)は1974年から2017年の間に29ドルしか伸びていない。この年齢層の平均年収は、1974年が3万5426ドル、2017年は3万5455ドルだった。
35~44歳では2900ドル近く、45~54歳では5400ドル近く増えているにもかかわらず、だ。
生活費が高騰する一方で、収入が伸び悩んでいるというのは問題だ。
2. 大学の授業料は1980年代以降、2倍以上に
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大学の授業料は、賃金の上昇を上回るペースで高騰している。1980年代後半から2018年までの間に、学士号の取得にかかる費用(インフレ調整済み)は公立で213%、私立で129%増えたと、Student Loan HeroのレポートはThe College Boardの統計を引用して報告している。
その結果、アメリカ全体の学生ローン債務は1兆5000億ドルを超えた。2018年、学生ローンを利用した卒業生1人あたりの学生ローン債務の平均は2万9800ドルだった。
賃金の伸びが小さいため、卒業後の給与は大学にかかった費用となかなか見合わない。SoFiの調査によると、ミレニアル世代の半数近くは、学生ローンに関して犯した最大のミスとして、大学卒業後の初めての仕事の給与を高く見積もり過ぎて、毎月の返済が可能だろうと考えたことを挙げている。
Business Insiderが報じたように、学生ローン債務はものすごくストレスフルで、2018年のニューヨーク・タイムズの調査では、アメリカ人の13%がそれを理由に子どもを持たないと決めたという。
学生ローンの返済が残っている人々は、経済的に余裕がないため、家を買うことも先延ばしにしたり、あきらめたりしている。
3. 住宅価格は、40年前より40%近く高い
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米連邦住宅金融局(FHFA)のデータを分析したSuperMoneyのレポートによると、 1970年代以降、住宅販売価格の中央値は39%上がっている。
賃金が伸び悩み、その他の債務を抱える中、こうした高い住宅費のために貯金をすることはさらに困難だ。SmartAssetの調査によると、アメリカの25大都市で中間所得者が中間価格の住宅を頭金20%で買うために必要なお金を貯めるには、4~10年が必要だという。
家を買うことができたミレニアル世代も、ローン返済にあえいでいる。INSIDERとモーニング・コンサルトの調査によると、ミレニアル世代にとって最大の債務は住宅ローンだ。ミレニアル世代の回答者のうち、27.7%が住宅ローンを抱えていて、このうち23%は5万~10万ドルを、50%は10万ドル以上を借りているという。
4. 医療費も高騰している
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SuperMoneyのレポートによると、1970年以降、1人あたりの医療費は9000ドル増加している。
1960年には146ドルだった1人あたりの平均年間医療費は、2016年には1万345ドルに達した。これはインフレ調整済みで9倍だと、CNBCは報じている。
メンタルヘルスに関する支援を必要とするミレニアル世代にとって、医療費を支払えるかどうかはこれまでになく重要になっている。若い世代の間でうつや"絶望死"が増加していて、彼らの多くが孤独やお金のストレス、職場でのバーンアウト(燃え尽き症候群)に苦しんでいる。
ミレニアル世代は上の世代に比べて、セラピーに参加することが多い一方で、Blue Crossのレポートによると、うつと診断されたミレニアルの5人に1人は治療を受けていない。これは医療費の上昇のせいかもしれない。
5. ミレニアル世代の半数以上がクレジットカード債務を抱えている
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収入が大きく増えない一方で、住宅費や教育費が高騰すれば、日々の生活費がクレジットカード頼みになるのは容易に想像ができる。INSIDERとモーニング・コンサルトの調査では、ミレニアル世代の半数以上、51.5%がクレジットカード債務を抱えているという。
こうした負債を抱えている人のうち、負債額が「5000ドル以下」と回答したのは54%、「5000~1万ドル」と回答したのは24%だった。「1万ドル~2万ドル」と回答したのは9%、「2万ドル~3万ドル」と回答したのは4.5%、「3万ドル以上」と回答したのは4.5%だ。
メリルリンチのウェルス・マネジメント・レポートによると、成人の60%は経済的な成功を"負債ゼロ"と見なしているが、それはこうした背景があってこそと言えそうだ。
これらの要素が左派寄りの候補者への支持につながっている
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自称「民主社会主義者」のバーニー・サンダース候補は、経済格差の是正と、国民皆保険「メディケア・フォー・. オール」や「グリーン・ニューディール」を通じたセーフティーネットの拡充、富裕税をその選挙キャンペーンの中心に据えている。
エリザベス・ウォーレン候補も、公立大学の無償化、学生ローン債務の取り消し、子育て支援、富裕税などさまざまな野心的な政策提案をしているほか、カマラ・ハリス候補も「メディケア・フォー・. オール」やマリファナの合法化、「グリーン・ニューディール」といった進歩的かつ幅広い政策を掲げている。
比較的リベラル色の薄い候補者ですら、こうした債務問題への取り組みを提案している。例えば、マイケル・ベネット候補は、サンダース候補の「メディケア・フォー・. オール」法案には反対しているが、健康保険に関する公的オプションや政府に薬の価格を交渉することを認めるといった政策案を示している。
一方、トランプ政権の学生ローン担当の高官ウェイン・ジョンソン氏は10月下旬、「根本的に崩壊している」学生ローン・システムへの取り組みを呼びかけ、辞任。ジョージア州で空席となった上院議員の議席を目指して、立候補する計画だ。
(翻訳、編集:山口佳美)