カリーニングラードを訪れ、露海軍の最新コルベット艦「グレミャーシチイ」を視察するプーチン大統領。大統領の左後ろに控えているのは、ショイグ国防大臣。
Mikhail Klimentyev \ TASS via Getty Images
- バルト海に面したロシアの飛び地カリーニングラードを訪れたプーチン大統領は10月31日(現地時間)、セルゲイ・ショイグ国防大臣に対し、露海軍の最新コルベット艦「グレミャーシチイ(Gremyashchi)」には開発中の極超音速巡航ミサイル(HCM)「ツィルコン(Zircon)」を装備することになるだろうと語った。
- プーチン大統領とロシアの国営メディアによると、ツィルコンの最高速度はマッハ9で、アメリカの標的に5分で命中させることができる。
- ミサイルは早ければ2020年にも装備されるという。
RTによると、ロシアのプーチン大統領は10月31日、極超音速巡航ミサイル(HCM)のツィルコンは「確実に」11月に就役を予定している露海軍の最新コルベット艦グレミャーシチイに搭載されるだろうと述べた。ツィルコンはまだ開発中だが、現在使用されているどんな防衛システムにも迎撃できないと、タス通信は報じている。
プーチン大統領はロシア北西部の都市カリーニングラードを訪問した際、グレミャーシチイを視察した。「確実にツィルコンを装備することになるだろう」とプーチン大統領はセルゲイ・ショイグ国防大臣に語った。
ツィルコンの最高速度はマッハ9だという。「極超音速」は一般的に、マッハ5以上で移動する物体を意味すると考えられている。国営テレビのロシア1がアメリカの国防総省を含む5つの場所をツィルコンなら5分以内に撃つことが可能だと報じた2月の時点で、ミサイルはまだ開発中だった。
ロシア国際問題評議会の専門家ドミトリー・ステファノビッチ(Dmitry Stefanovich)氏は、グレミャーシチイは「ツィルコンの優先的なプラットフォームとは考えられていなかった」が、ロシアは「海軍には異なるミッションのために水上戦闘艦と潜水艦の両方が必要であり、どちらも徹底的に武装しておかなければならない」との考えがあるのだとINSIDERに語った。
プーチン大統領は2月、連邦議会で行った演説の中で、ツィルコンの開発はスケジュール通りに進んでいると述べた。
大統領はこのミサイルをアメリカを脅すために使った。
プーチン大統領は当時、ロシアのメディアに「マッハ9、1000km以上…… うまくいくだろう」と語ったと、ロイターが報じている。
ロシアの国営メディアと大統領の主張を検証することは不可能だが、プーチン大統領はツィルコンが海と陸、両方の標的を破壊できると話している。
「ツィルコンの能力を『過度に騒ぎ立てる』ような人たちもいるが、一生懸命その重要性を軽く扱おうとする人たちもいる。アメリカでもロシアでも、専門家は独自のアジェンダを持っている」と、ステファノビッチ氏はINSIDERに語った。
同氏は「この武器が最終的に配備されれば、大半の人が想定していたほど目を見張るようなものではないと分かるだろうが、それでもこのスピードに並ぶものはないだろう。フライトの大半が最低でマッハ8というのは実現可能に見える」とした上で、ミサイルの射程距離については、ミサイル防衛システムを回避せずに済むなら最大で1000kmに達する可能性もあるが、現実的には400~800kmだろうと指摘している。
アメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)のプロジェクト「ミサイル・スレット(Missile Threat)」によると、ツィルコンは海上発射型巡航ミサイルの「カリブル(Kalibr)」に対応しているという。カリブルはすでにグレミャーシチイに搭載されている。タス通信は、グレミャーシチイが太平洋艦隊の中で初めてカリブルを装備したコルベット艦だと報じている。
ツィルコンが核兵器を搭載できるかどうかは明らかにされていないが、「通常の弾頭でも大半のターゲットを沈めるまたは破壊するのに十分だが、一般的にロシアのミサイルの多くはどちらも搭載可能だ」とステファノビッチ氏はINSIDERに語った。最大で約300kgまで載せることができるという。
米国科学者連盟によると、ツィルコンは2020年にも配備される可能性がある。
(翻訳、編集:山口佳美)