年齢による上下関係は消滅する? センスが価値をもつ令和時代に活躍する人材とは

山口周 岩本乃蒼 三浦崇宏

「ONE JAPAN CONFERENCE 2019」の様子。左から山口周さん、モデレーターを務めた日本テレビアナウンサーの岩本乃蒼さん、三浦崇宏さん。

20世紀後半から21世紀初頭にかけて高く評価されてきた「優秀な人材」は、今後「オールドタイプ」として急速に価値を失っていく——。新たな時代に求められる思考・行動について著した山口周さんの書籍『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』が2019年は話題になりました。

大企業の若手有志団体であるONE JAPANが主催した「ONE JAPAN CONFERENCE 2019」で行われた、山口周さんとGO代表でPR/Creative Directorの三浦崇宏さんによるトークセッションでは、令和時代に活躍する人材要件「ニュータイプ」について考えました。2人が語る、令和時代の戦い方とは?

山口周(やまぐち・しゅう)さん

1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』など著書多数。

三浦崇宏(みうら・たかひろ)さん

The Breakthrough Company GO 代表取締役。博報堂を経て2017年に独立。 『表現を作るのではなく、現象を創るのが仕事』が信条。日本PR大賞を始め、CampaignASIA Young Achiever of the Yearなど数々の賞を受賞。広告やPRの領域を超えて、クリエイティブで企業や社会のあらゆる変革と挑戦を支援する。

「不退転の決意」令和では不要

山口周さん

「ニュータイプの時代」が2019年に話題となった、著述家の山口周さん。

—— 本日はこれからの時代に活躍する人材要件「ニュータイプ」についてお話いただきます。令和になり、優秀な人材に求められる条件はなぜ変わったのでしょうか?

山口:昭和から令和にかけて、「価値のあるモノ」が変わったからです。解決すべき問題だらけだった昭和では、みんなが正解を欲しがりました。だから「正解・ソリューション」「モノ」「利便性」「データ」「説得」「新しさ」に価値があったのです。

ところが令和となった現在、これらは過剰になり、反対に「問題・アジェンダ」「意味」「情緒・ロマン」「ストーリー」「共感」「懐かしさ」といったモノを作れる人にお金が集まっています。

昭和の価値観を引きずっている人にとっては、今は大変な時代かもしれません。でも僕は、すごくいい時代がきたと思っています。これからは豊かで潤いのある社会を作ること、つまり意味を作ることにお金が回るようになるからです。

三浦:利便性と効率の市場は、すでに飽和していますからね。

山口:問題は、世の中の価値が変わったのに、それに伴う行動様式がアップデートされていないことです。野村総研が8年前に行った調査では、大企業1000社の経営者が「次世代の経営者に望むもの」の1位は決断力、2位は創造性でした。ここまでは問題ありません。ところが、3位は「不退転の決意」。これはやばいです。

Amazonを例に取ると、彼らはこれまで約80個の新規事業に手を出していますが、そのうち約半数はすでに撤退しています。しかも3分の1は1年以内に撤退。これはまさに「退転の決意」です。もし「不退転の決意」なんて言っていたら、始める前にかなり慎重に検討することになります。そして結局何も始まらなかったのが、平成という時代です。

三浦:ルールって、いつの間に変わっているものですよね。例えば、トヨタがモビリティカンパニーとして都市設計に踏み出したことで、日産のようなこれまでの競合企業はパートナーになるかもしれない。逆に今までパートナーだと思っていたGoogleやAppleが、本当の敵になったりすることがあるわけです。今はそんなルール変更が日常的に起こる時代ですからね。

価値の源泉は「息を吸って吐くようにできる原体験」

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—— 世の中のルール変更を敏感に察知するためには、どうしたらいいでしょうか? 特に大企業で働いていると、社会の流れに疎くなりがちな気がします。

山口:僕がいた電通って、原子力空母のような会社なんですが、その中で窓のない部屋に閉じこもっていると、「この船はどこに向かっているのか」とか「波は荒れているのか」ということはよくわかりません。

そうならないためには、自ら甲板に出たり、ブリッジに登ったりすることが必要です。意識的に外に出て話を聞いたりすることで、自分の世界は広がります。

三浦:今って情報は過剰ですが、体験は希少な時代です。よく起業には原体験が必要と言われますが、いじめられた過去があるとか、海外に留学したときに言葉が通じなくて苦労したとか、そんな大げさな原体験である必要はないと思います。もっと小さくていいんです。

日常で、ちょっとした不均衡に違和感を持つとか、不条理に対して、向き合う意識を持つとか、 息を吸って吐くようにできる原体験こそ、その人の強さになっていくと僕は信じています。

センスある若者と、スキルを持ったベテランの組み合わせ

三浦さん

The Breakthrough Company GO 代表取締役・PR/Creative Director、三浦崇宏さん。

三浦:「若いから」「年上だから」という理由で、どっちが偉いということはありません。山口さんが言った通り、昭和も平成も令和も時代背景が異なるので、お互いを「違う村で育った人たち」と思うのが良いと思います。

例えば、20代の世界観で生きてきた人と30~40代の世界観で生きてきた人たちは、全然違う武器と違う価値観を持っています。組織間の対立を乗り越えるには、そうした人たちがフラットに握手することが求められます。

それなのに、私がいた博報堂や山口さんがいた電通では、「年次の差は海より深い」と言われていましたね(笑)。 あれはあれで面白い文化ですけど。

山口:みんな年次に関するデータベースを頭の中に持っているんですよね。よく言われるのが、「あの年は不作だった」とか(笑)。

三浦:海外のクリエイティブの世界では、50〜60代のクリエイターが「若い人の感覚はわからないだろう」という理由でクビにされる問題が起きています。日本と逆で、老年者が若者によって排斥されているんです。

山口:日本でも近いうちに起きるでしょうね。GAFA創業者の創業時の平均年齢は24歳です。今世界を牛耳っているのは、そのくらいの若者が作った会社なんですから。昭和という村では、長老のような人が尊敬されていた。平成という村では、元気がいいのは若い人たちばっかりだった。では令和はどうなるかというと、この流れで言えば、価値の源泉が若い人たちに移ってくることは明らかでしょう。

三浦:クリエイティブの世界では、昔は大手の代理店で10年くらい修行してから独立する人がほとんどでしたが、今は20代で活躍するクリエイターが増えてきています。うちの会社のコピーライターの飯塚政博はバンバン賞を取っていますし、ホテルオーナーの龍崎翔子さんやクリエイティブディレクターの辻愛沙子さんも活躍が眩しい。

彼ら彼女らは、スキルではなく価値観や思想を商売にしています。自分の思想や人生のテーマをかなり早く設定して、SNSを通じて発信し、自分たちを支援するコミュニティを形成しているんです。

山口さんが言った通り、正解がない時代では一人ひとりの感情や価値観にすごく関心が集まっています。自分たちが信じているものを表明することが、ビジネス的にもマーケティング的にも価値ある時代になってきました。

山口:スキルは積み重なるものですが、センスは年齢を重ねてもあまり変わりません。センスが武器になる世の中では年齢がフラットになるので、若い人にもチャンスがあります。

ビートルズを例にとると、ポール・マッカートニーやジョン・レノンといったセンス抜群の人たちには、ジョージ・マーティンというハイスキルの人がバックについていた。センスある若者をスキルを持った親方がバックアップする。この組み合わせができれば、世の中を変える傑作が生まれるかもしれません。

キャリアで大事なのは「打率」より「ホームラン」

全体の様子

三浦:冒頭でAmazonの話が出ましたが、「不退転の決意」で1つの新規事業を伸ばすのと、成功するまで100回でも200回でもいろんな事業にチャレンジするのとでは、成功確率が違うのは明らかです。小学生でもわかることなのに、なぜ多くの大企業はできないんでしょう?

山口:アフリカの雨乞いって100%当たるんですが、日本の雨乞いは当たらないんです。理由は、アフリカの雨乞いは雨が降るまでやめないから(笑)。これだけ世の中が不確実になると、何が当たるかは誰にもわかりません。大事なのは、手を替え品を替え、当たるまでやり続けることです。

僕のキャリアは予定調和のように見えるかもしれませんが、過去の職場では七転八倒してきました。「うまくいかない。つらい。次に面白そうなことがあるからとりあえずやってみる」の繰り返し。まさにAmazonです(笑)。今は比較的落ち着いていますが、ここに来るまで25年かかりました。

三浦:僕は10年間博報堂にいましたが、最初はまったく鳴かず飛ばずでした。クリエイター志望だったのにマーケティングに配属され、上司に「こんな地味な部署に僕みたいなスターがくるなんて、サプライズ人事ですね」と言ったモンスター新入社員だったので(笑)。

転機はクリエイティブに異動後の2011年、震災直後に「土のレストラン」プロジェクトを手掛けたときでした。

震災で土壌汚染が問題になる中、プロトリーフという会社が販売する良質な土が風評被害でまったく売れなくなってしまって。そこで五反田の有名フレンチレストランにその土を使ったフルコース料理を作ってもらい、メディア向けに試食会を開いたんです。

このプロジェクトで僕は入社同期の中で最初にカンヌを取りました。そこから一個一個のチャンスにしがみつき、今に至るという感じです。

山口:三浦さんがやっているのは広報でも広告でもブランディングでもない、何か新しいこと。だからこれだけ評価されるのだと思います。落合陽一さんもそうですが、最近は何て言ったらいいのかわからない職業の人が活躍しています。

三浦:確かに、僕の会社は「The Breakthrough Company GO」であって、アドバタイジングエージェンシーでも、PRカンパニーでもありませんからね。

山口:新しい仕事は世の中の構造や価値が変わるときに出てきます。考えてみれば、「CMプランナー」や「クリエイティブディレクター」といった言葉は、1970年代にはありませんでした。昭和から平成にかけて、そういう仕事が価値を生み出したから言葉が生まれたのです。

だから、これからの時代に価値を生み出す仕事は、今はない可能性が高い。10〜20年後に活躍する人の新しい肩書きは、皆さんが作っていくものです。

(文・構成、一本麻衣、写真・井上 麻衣子 、渡邊 崚生 、伊藤 淳 )

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