“WeWork赤字”のソフトバンクG孫正義会長、決算は「真っ赤っか」でも「反省すれど萎縮せず」

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決算会見冒頭の孫会長。神妙な面持ちで語り始めたが……。

出典:ソフトバンクグループ

「今回の決算発表の内容は、ボロボロでございます。真っ赤っかの大赤字」

ソフトバンクグループ(ソフトバンクG)の第2四半期決算説明会の場で、孫正義会長は開口一番こう切り出した。

WeWorkへの投資失敗で、これまで「打ち出の小槌」のようにソフトバンクGに利益をもたらしてきていたビジョンファンド(SVF)も苦しい……直近の報道を受けて、冒頭の挨拶では、神妙な面持ちで登場した。

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新聞などの見出しを冒頭のスライドに引用していた。

出典:ソフトバンクグループ

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渦中の決算発表でシンプルに大幅減益とWeWork問題を扱う、と宣言するスライド。

出典:ソフトバンクグループ

売上高は昨年上期とほぼ横ばい(4兆6517億円)ながら、最終利益は50%減の4216億円。

神妙な面持ちは当然で、孫会長肝いりのSVFが、WeWorkも含めた営業赤字5726億円という大きなマイナス要因になっているからだ。

「これだけの赤字を出したのは創業以来のこと」

「ビジョンファンドが真っ逆さま」

「私自身の投資判断がいろいろな意味でまずかったことを、大いに反省している」

いつもの孫正義節の裏返しのように「反省」「失敗」の気持ちを連発した。

WeWork事業「復活」の秘策

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営業損益は赤字156億円。最終利益は半減した。

出典:ソフトバンクグループ

決算説明は、追加投資までしたWeWork事業をいかに復活させるかに、かなりの時間がさかれた。

ただし、孫会長の説明はシンプルだ。

「低い粗利」と「高い経費」こそが、WeWorkが赤字を続ける源泉であるのだから、「粗利を上げ」「経費を下げ」れば黒字になる、と説明する。

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これまでのWeWorkの収支構造をシンプルに表現したもの。大きく分けて2つのネガティブ要素が、赤字の源泉だとする。

出典:ソフトバンクグループ

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粗利と経費に、逆方向の改善を進めればおのずと利益(EBITDA)は上がる、との説明。

出典:ソフトバンクグループ

こうした背景で打ち出したのは次のような方針だ。

  1. 新規ビル出店を一時停止
  2. 経費削減
  3. 不採算事業(主に新規事業や投資)の整理

「この3つの施策で大幅にWeWorkは改善する」(孫会長)

新規出店をやめ、現状の施設(ビル)数である700のまま「停止」させて時間を経過させれば、建設中と建設直後(1〜6カ月)の赤字の時期をすぎたところから利益が出始める、というロジックだ。

「答えは時間が解決してくれる。熟せば儲かる」(孫会長)

縦軸や横軸のないグラフを見せながら、孫会長は自信満々に語る。

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赤字期間がすぎたビルは収益が出始める、と言う。待てばひとまず赤字垂れ流し状態は脱出。その後「応用編」としてAIを使ったコミュニティーの付加価値要素を盛り込んで「成熟」させるという。

出典:ソフトバンクグループ

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経費削減により利益が出る時期を早める(ただし横軸、縦軸の単位は不明確だ)。

質疑の中では、思わず「1ビリオン(10億ドル)くらいのEBITDA(利益の指標の一つ)を出せるのではないか」「4〜5年、5〜6年のうちに」とすら漏らした。

さらに、「信じたくない、それは違うだろうと心情的には思いたい数字だろうが」と言いつつ、大幅減益決算の中でも、実質は悲観する必要ないのだと匂わせる。

孫会長が重きを置いてきたという「株主価値」は1.4兆円増え、大赤字で価値半減とすら言われるSVF(第1弾ファンド)も「投資成果1.2兆円増」と、決算の数字に出ない「成果」は順調だと言う。

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出典:ソフトバンクグループ

「私からみれば、大勢にまったく異常なし」

「(ソフトバンクGの)ビジョン変更なし」

「戦略に変更なし」

「このまま粛々と前へ進む」

冒頭では「反省」を口にした孫会長の表情が、だんだんと自信満々になってくる様子に、報道陣は「まったく懲りてなどいない」と苦笑いしたのではないか。

WeWorkの何を「反省」したのか

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今後の投資方針については、改めてあくまで投資先は独立採算で、救済投資はしないことを宣言した。

出典:ソフトバンクグループ

質疑では、WeWorkをめぐる投資の反省について、質問が集中した。

—— WeWork創業者のアダム・ニューマン氏を見誤ったのか。

「彼のいい部分と悪い部分、混在している部分がたくさんある。彼のいい部分の価値を、多くみすぎてしまったのかもしれない」

—— 反省とは、何を「反省」したのか。今後のファンド運営(SVF)に生かすならば、どんな具体策になるのか。

「2つある。1つは価値を高く見すぎてしまった。対策は、今回の(WeWorkに用意した)財務パッケージで、ソフトバンクGの株式の調達単価を(実質的に)4分の1に下げることができた」

「2番目の対策はガバナンス(企業統治)。9名の枠のうち4名の枠をアダム・ニューマンが指名権をもっているとか。ガバナンス問題について、財務パッケージに対して、(最終的に)10名のうち5名をソフトバンクGとSVFで押さえる。アダム・ニューマンのさまざまな権利は、一気に剥奪という形」

—— WeWorkに対する、事前の「値付け」の調査はどうなっていたのか(なぜ高く見積もりすぎたのか)。

「アダム・ニューマンに惚れ込みすぎた点については、大いに反省している。

少なくともSVFは、アーリーステージ(創業間もない時期)には原則投資しない。その分野でナンバー1になった“ユニコーン”(企業価値10億ドル以上の企業)への投資が中心。実績がある程度ないと我々は判断しない。

(中略)最後は、創業者の実力を、どのくらい彼が実行できるのか、リーダーシップを発揮できるのかということについては、主観が入らざるを得ない。アントレプレナー(起業家)の評価の物差しは非常に重要。それでも、(創業者のアダム・ニューマン氏を)見誤ったところを反省している。言い訳なし、反省している」

—— いつからWeWorkの評価の目算が狂ったと気づいたのか。

「WeWorkがまずいのではないか、というのは(思い始めたのは)上場が先延ばしになって、WeWorkの上場目論見書に対して、多くの投資家から問題点を一気に指摘された。ガバナンスの問題があり、経営陣は退陣を余儀なくされた。そのあたりから(気づいた)。

決して投資家のみなさんを欺こうということはない。信じたとおり追加投資をおこなったというのが事実。反省する点は大いにあるわけだが、天下に恥じるようなことはない」

いずれも率直な回答と、WeWork創業者のアダム・ニューマン氏への失望が感じられるコメントが相次いだ。とはいえ、孫会長の腹のなかは結局、質疑後半に出たこのコメントに尽きるのだろう。

「投資の金額の勝敗は3勝1敗。(投資成果は)6000億円のマイナス(WeWork)で、1.8兆円のプラス。どれほど反省しなければいけないのかと。反省しすぎて萎縮する必要があるのかと。反省しすぎて萎縮するほどまでいく必要はないと思っている。(状況は)“大波”ではなく“さざ波”だというのが私の見方」

ソフトバンク始まって以来と語る四半期赤字だろうとも、「反省はしているが、萎縮はしていない」と宣言する。

「決して萎縮することなしに、ますます思い描いたビジョンと、信念は、微動だにせず、しっかりと進めていく」(孫会長)

(文、写真・伊藤有)

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