アドビの「AIの魔法」に目が釘付け。研究中の新技術「実現しそう度」ランキング11【Adobe Max 2019】

Adobe MAX 2019 Sneaks

アドビが大規模イベントごとに行っている「スニークス」では、同社の新技術がお披露目される。その中の多くは今後同社製品に実装される可能性も高く、クリエイターでないユーザーからの注目度も高い。

撮影:小林優多郎

アドビがアメリカ・ロサンゼルスで開催したクリエイター向けイベント「Adobe MAX 2019」。その2日目である11月5日(現地時間)には同社イベントでは恒例となる開発中の新技術を披露する「Sneaks」(スニークス)が開催された。

スニークスは、アドビ幹部が新製品などを発表する基調講演とは異なり、1機能あたり1人の研究チームや社員がその場でデモを披露。ゲストも迎え、まるでパーティーのような雰囲気の中、進行する独特なイベントだ。

Sneaks Guest

MAX 2019のスニークスのゲストには、コメディアンであるJohn Mulaney(ジョン・ムレイニー)氏が登壇。デモ中も散々いじられる対象に。

例年このイベントが「お祭り」なのに注目されるのは、スニークスで披露される機能のいくつかは翌年のクリエイティブツールに実装される可能性が高い慣習があるからだ。例えば、MAX 2018で披露された動画内の被写体をディープラーニングで自動認識し追従する「Project SMOOTH OPERATOR」は、今回のMAX 2019で動画編集ソフトの「Premiere Pro」向けに「オートリフレーム」機能として実装されている。

いずれもアドビが持つ膨大なクリエイティブデータを元に学習する人工知能技術「Adobe Sensei」を活用したもので、それは2018年も2019年のスニークスも変わらない。未来のクリエイティブの現場がいかに変貌するか、MAX 2019で発表された全11種類のプロジェクトを、筆者の独断と偏見にはなるが“将来実装されそうな順”でまとめてみた。11位から順に見ていこう。

第11位:写真が加工されているか検知・巻き戻せる「About Face」

スニークスの中でも異色の存在と言えたのが、この「About Face」。画像を読み込むと、その画像が加工されたものか、画像のどこが加工されているか、加工前の予測画像(元画像)を示してくれるというもの。

ほかのツールと違って、このツール自体はクリエイティブなものとは言い難い。けれど、アドビはMAX 2019でツイッターやNew York Timesと連携し、クリエイティブ作品の出自を明確にする取り組みを発表している。

このAbout Faceの技術も、そういった「クリエイティブの信頼性」に関するアドビの取り組みの1つと言える。

第10位:文字をリアルタイムで自由自在に変形できる「Fantastic Fonts」

色の変化や動きのある文字を自在に作れるツール。今でもAfter Effectsなどを使えばある程度できるが、Fantastic Fontsは目的に特化している分、素早くパラーメーター変更やアニメーションがつけられる点が優秀だ。

ちなみに、プロジェクト名「Fantastic Fonts」と文字が伸びるというデモは、映画などでお馴染みのFantastic Four(ファンタスティック・フォー)のリーダー「Mr. Fantastic」の特殊能力であるゴムのように伸びる身体を揶揄したジョークという説もある。

第9位:商品のカラーサンプル画像を一瞬で作れる「Image Tango」

デザイン元の写真と、参考にしたいパターンの写真を読み込ませると、魔法のように何種類ものデザインパターンの写真を生成するツール。

例えば、ドレスの写真を読み込ませ、別の色や形の服をパターンとして読み込ませると、元のドレスのデザインに参考画像の色や模様が適用された画像が次々に飛び出てくる。

写真家やイラストレーターというより、プロダクトデザイナーがチームや取引先にいくつかサンプルを出したいときに便利かもしれない。

第8位:もう欠席者の写真を丸囲みにしなくて済む!?「All In」

2枚の写真を読み込ませ、写っている人を比較。写っていない人を認識し、全員の集合写真をつくるツール。

Photoshopを使えばこのような合成写真は比較的カンタンに作れるが、Senseiが被写体認識から切り抜き、合成まで一括してやってくれる自動化ぶりに驚く、便利なスニークスだ。

第7位:光の当たり方を撮った後から変えられる「Light Right」

スニークスで最も盛り上がったデモ。複数の写真や動画から3D空間を疑似的に作成して、撮った写真の太陽の位置を自在に変えられるというもの。つまり、逆光で撮ってしまった写真を順光の状態にしたり、青空の写真を夕方にすることも可能。

また、会場ではアドビのフォトストックサービス「Adobe Stock」から有名な観光地の写真を複数ダウンロードし、有名な観光地の写真を加工するデモも披露。

Photoshopなどのソフトに組み込まれるのが現実的だが、Adobe Stock自体にこのような機能を内蔵させ、ダウンロード前に「その写真の好きな時間が選べる」というオプションができるのもおもしろそうだ。

第6位:ワンクリックで環境音や他の人の声を消す「Awesome Audio」

例年にも増して2019年のMAXのスニークスでは、音に関するデモが多かった。そのうちの1つ「Awesome Audio」は超強力なノイズリダクションツールだ。

デモ用アプリの見た目は、スニークスの中で最もシンプルで「Awesome(すごくいい)」と書かれたボタンのみ。このボタンをクリックするだけで、デモでは電子的なノイズや環境音、周りの人の声などを消していた。

どのぐらい汎用的にノイズを消せるかはわからないため評価が難しいが、マルチデバイス展開されている動画編集アプリ「Premiere Rush」などの音のオプションに、ノイズ除去ボタンが配置されたら、このプロジェクトがある程度完成したと考えていいかもしれない。

第5位:AR技術と動画編集が合体した「Pronto」

実際の空間やオブジェクトに合わせた効果をつけるモーショントラッキングの動画をタブレットで簡単に制作できるツール。

手順としては、トラッキングしたい被写体を認識させ撮影を開始。撮影後に、ARのような操作感で空間に手書きの文字などのコンテンツを配置していく。

また、あらかじめ登録してある“床を叩く”“つまんで引っ張る”という動作をキーとし、「空間をつまんでひっぱったら、手の動きに合わせてタイトルが表示」といったアニメーションもつくれる。

デモでは、2、3回ほどアプリを起動し直しており、現時点での完成度はやや低め。とはいえ、MAX 2019で正式公開となったAR制作ツール「Adobe Aero」や3Dデザインツール「Adobe Dimension」との相性も良さそうだった。

第4位:参考動画から動きをキャプチャーできる「Go Figure」

モーションキャプチャーと言えば、アクション映画や3Dアニメなどの撮影現場でスタントマンの全身にたくさんのセンサーを取り付けて撮影……なんて風景をイメージするだろう。

Go Figureは2D(2次元)に限るが、特別なハードウェアなしでイラストにアニメーションをつけられるツール。

用意するのは、ボーン(骨)などを設定したイラストと、動きを撮影した動画のみ。デモで使っていた動画は、日常で撮ったようなダンス動画で、背景も真っ白などではなく普通の屋外だった。Adobe Senseiが動画内の動体を認識し、そこから動きを検出しているというわけだ。

デモでは動画制作ツールの「Aftter Effects」上で実行されていただけに、早期の機能実装に期待したいところ。

第3位:絵と声だけで口パクが作れる「Sweet Talk」

声の入ったデータと絵のデータを読み込むと声に合わせて絵の口が動いているアニメーションを生成できる。

デモではかなりちゃんと「しゃべっている風」に見えて、それだけでも驚きだが、デモではさらに手書きのイラストの写真や油絵などを読み込ませてもしっかりと動作していた。

VTuberやAIキャスターなどでの情報発信が盛んになっている日本でもニーズがあるツールだろう。

第2位:録音の“あー”や“えーと”を駆逐する「Sound Seek」

ついつい話の途中に「えーと」と入れてしまう場つなぎ音。これを消し去ってくれる。最近では個人でもVLOG(Video Logの意)やポッドキャストの録画・録音をする人もいる今、注目度の高い機能と言える。

使い方は簡単で、録音した音から消したい音の範囲を選択。その後、同様の音をソフトが自動検知し、ユーザーが任意で消すかどうか選べる。任意の音というのがポイントで、選択した音であれば車のクラクションなど人間の声でなくても消せる。

短い録音データであれば、手作業で消すこともできるが、長いデータや一発録りのような状況だと重宝するはずだ。

第1位:Illustratorで光と影を演出できる「Glowstick」

iPad版の開発も発表されたイラスト作成から印刷物の制作までこなせるドローソフト「Illustrator」を使ったデモ。

描いたオブジェクトの色や形に応じて光や影の表現が自動生成される(例えば、黒い背景に白い長方形を配置すると、白が光源となり白い波紋が黒の背景に描画される)。

このようなグラデーションの表現は、もちろん現時点でのIllustratorの機能を使っても表現できるが、デモではパラメーターを少し変更するだけで実現できているのがすごい。

(文、撮影・小林優多郎 取材協力・アドビ)

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