増える育休後すぐ転職、「子育て歓迎」求人は3倍に「書類で落ちる」に変化

赤ちゃん

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子育て中女性の転職が増えている。

背景にあるのは慢性的な人手不足による「子育て歓迎求人」の増加だ。エン転職の調べでは2019年の「子育て中歓迎」求人は、2015年比で3倍に。これまで「残業できない」などと敬遠されがちだった子育て人材の採用事情に変化が起きている。

第一子の出産で5〜6割の女性が離職する状況が30年来続いてきた日本だが、「子育てとの両立が無理」と感じた時に「家庭に入る」から「会社を移る」へと、女性の選択も徐々に変わりつつあるようだ。

業績不振で土日、夜勤の現場に

子連れ

自分のやりたい仕事と育児の両立はもちろん、保育園の都合や夫の勤務状況など、考えなければいけないことは手に余るほどだ。

撮影:今村拓馬

「会社の売り上げが落ちてきて、本社勤務の人を減らし現場に戻す動きが起きています。育休明けに現場に戻される可能性が高いのですが、そうすると家族との時間が取れなくなるだろうなあと」

3歳と1歳を共働きで育てている東京都内在住のミナコさん(仮名、37)は現在、第二子の育児休業中。来年4月には保育園に預けて復職予定だが、すでにそのあとの転職を見据え、いくつかの転職エージェントに登録済みだ。

資格スクールの運営の仕事にはやりがいを感じて打ち込んできた。ただし、社会人顧客が多いため、夜も遅く土日勤務も多い。第一子の出産を機に土日勤務の少ない本社に異動したものの、今度の育休明けは再び、スクールの現場に戻ることを覚悟している。

そしてこれが、ミナコさんの復職後の悩みのタネだ。

復職したら転職活動本格化

「夫もサービス業なので土日や夜が仕事です。現場に戻って時短勤務することも、会社に言えば配慮してくれるでしょうが、結局サービス残業になるのが目に見えています。義理の実家が近くにありますが、高齢のためいつも頼むことは難しい」

スマホを開ければ、女性向け求人が飛び込んでくる。そのうち、本気で転職を考えるようになった。

本格的な転職活動は、いったん復帰してからだが、そのあとは「できるだけ早く」という気持ちという。

「大好きな職場だったので複雑な面もありますが、やはり土日休みで夕方に帰れる仕事がいい。余剰人員のない会社の事情もよく分かる。ローンもあるので、70歳までは働き続けるつもりです」

働いた方が収入が減る現象

企業ビル

子育てをしながら時短勤務で乗り切るよりも、育休手当をもらった方が収入が多いという皮肉な状況に。

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「今の仕事が好きで働き続けたいですが、いつまでも時短だと正直、育休手当の方が手取りを上回ってしまいます。通勤に片道1時間半かかるので、近ければもっと仕事ができるのになあと」

4歳と1歳を育てながら、関東圏のメーカーで専門職として働くイズミさん(仮名、31)も、育休中から転職エージェントに登録。復職後の現在も転職活動中だ。最大の理由は往復3時間の通勤時間と、結果的な年収減。

現在は時短勤務を継続中だが、勤務を2時間減らして働く生活では、年収は4割も減る。復職して働くよりも、報酬の67%まで保証される育休手当をもらっていた方が、収入が多いと言う皮肉な状況になったのだ。かといってフルタイム勤務では、お迎えを終えて家に帰れば午後8時近い。子どもも自分もヘトヘトだ。

「本社にはアキがない」

自宅が近くなる本社勤務に異動希望を出してはいるが「本社にアキはないと言われていますし、異動できたとしても専門職はあきらめることになる」。今の会社は在宅勤務が認められていないため、仕事を持ち帰ってフルタイムにすることも不可能だ。だったらこれを機に転職をしようと考えるようになった。

すでに何社かの面接も経験している。

「2人の子育て中ということは転職の足かせに感じていません。外資だと面接もオンラインで時間も自由ですし、職種の関係で辞退したのですが、すでに内定ももらいました」(イズミさん)

子持ちは「書類で落ちます」に変化?

働く女性

小さな子どもがいることは、女性の場合、転職の足かせになりがちだった。人手不足の昨今にはある変化が。

shutterstock

従来、小さな子どものいる女性は転職市場で敬遠されがちだった。

特に日本企業では、子どもの病気で休みがち、残業ができないといったイメージがつきまとうため「1歳の子どもがいると話すと、転職エージェントから『書類で落ちます』と言われた」(30代会社員女性)といった声は後を絶たなかった。

しかし、この数年で状況は変わりつつある。有効求人倍率は依然として高水準を維持し、東京商工リサーチによると2019年1〜6月期の「人手不足」関連倒産は過去最高を記録。人手不足は、好景気も影響し、加速している。

それに伴って増えているのが、子育て女性を歓迎する会社だ。エンジャパンによると2019年の「子育て歓迎求人」は2015年同期比で約3倍。『エン転職』の岡田康豊編集長は「女性活躍推進の機運の高まりや、長引く人手不足も影響し、子育て中の方を積極採用する企業は増加傾向にあります」と指摘。ウェブ系、広告系、人材系の事務職、営業職、エンジニア、デザイナーなど職種も幅広いという。

女性に特化した転職サイト『女の転職type』 の小林佳代子編集長も、求人の右肩上がりを明かした上で(数字は非公表)「以前は女性活躍推進に取り組んでいる企業や、医療・福祉関連専門職などで、限定的に見られたが、現在は企業の業種や大小もなく、幅広い職種で『ワーキングママ歓迎』と打ち出している」と説明する。

「産後人材」に特化したサービスも登場。2019年3月に株式会社ビーボが立ち上げたQOOLキャリアは「子育て女性が活躍している企業」ばかりを集め、産後に転職希望の女性とマッチング。募集は全て正社員だ

出産を機に「ここでは働き続けられない」と、仕事を見直す人はこれまでも多かった。ただこれまで「子連れ転職は無理」と働くこと自体をあきらめてきた女性たちの中から、環境の変化を追い風に、次の仕事に向かう人たちが増えている。

40度の発熱の子どもを連れて出勤も

発熱こども

好きな仕事でも、働く母としては子育てと両立が難しいもの。働き手に寄り添ってくれる企業こそ、これからの人材確保に希望がある。

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「今の会社は転職の面接の時に、2人目はどうするの?早く産んだ方がいいよと担当者に言われて衝撃を受けました。こんな会社があるんだ、と」

4年前、健康食品系のベンチャー企業に転職したメグミさん(39)は当時の驚きを振り返る。

と言うのも、それまで勤めていた大手のジュエリー販売の会社は、ギリギリの人数で店舗を回すあまり、育休明けの復職はあまりにもハードだったため。子どもの病気で休むと店長にはあからさまに嫌な顔をされる。土日や年末年始は、書き入れ時のため休みはなく、夫に子どもを任せて仕事に出た。

子どもが40度の熱が出ていても代わりが見つからず、ベビーカーに乗せて開店時間に店舗を開けに行ったこともある。

人材確保で取り残される企業とは

多くの職場で、人手不足が深刻なのは間違いない。そんな中でも、人材確保できる企業と人材流出する企業の明暗を分けるのは、働き手の事情に合わせた環境を用意できるかどうかだ。

「子育て歓迎求人」も増える中で、家庭の事情を抱えた働き手に無理を強いる会社は、人材確保競争に取り残されて行くことは間違いない。メグミさんは振り返る。

「休み中でも電話がかかる、土日もほとんど出勤という前の職場は人がどんどん辞めていて、人手不足が深刻になった結果、さらに現場にしわ寄せが来てまた人が辞める——という悪循環でした。好きな仕事だったので、正直、残念ですが……」

(文・滝川麻衣子)

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