今年も過去最高の勢いで売り上げを伸ばす独身の日セール。
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11月11日の中国独身の日セールで、EC最大手のアリババは開始1時間3分9秒に売上高1000億元(約1兆5600億円)を達成、16時31分(中国時間)に昨年1日の売上高2135億元(約3兆3000億円)を突破。中国の消費力を世界に見せつけた。
この日は元々、独身者を比喩する「1」が4つ並ぶことから、パートナーのいない男女が、合コンやパーティーをして過ごす、文字通りの「独身の日」だった。そこにネットショッピング普及に取り組むアリババが2009年、「寂しい独身者のためにセールをしますよ」と仕掛け、10年後の今では完全にECセールの日に様変わりした。
中国で不動産や飲食店などの情報サイトを運営する58同城グループは独身の日に合わせ、サイトが収集するビッグデータから中国独身者のライフスタイルを分析した「2019年独身者レポート」を公表した。少し前までは、「男性は家を買わないと結婚できない」というのが中国の共通認識だったが、経済の減速や価値観の変化を反映してか、持ち家信仰はやや薄れているようだ。
6割が「車より先に家を買う」
出典:58同城「2019年独身ライフスタイルレポート」より
レポートによると独身者の58.7%は、「まず家を買い、次に車を買う」と回答した。つまり住宅、車の両方を購入しようとしているのは全体の6割を占めた。一方で、調査を実施した58同城は、「(購入は)どちらでもいいと答えた比率も高まっており、住宅購入の優先度は以前に比べて下がっている」と分析した。
「最初の家、車は何歳で買いたいか」は、いずれも31-35歳が最多だった。
車の購入を計画しているのは56.2%で、そのうち7割はローンを組むと答えた。許容できる月々の返済額は、3000-5000元(約4万6000円―約7万6000円)が最多だった。
車購入予算は、12―18万元(約190万円―280万円)が最も多かったが、北京、上海、広州、深センからなる一級都市は予算を18万元以上と答えた割合が他都市より高く、また、環境に配慮したハイブリッド車やEV車への関心も高かった。
現在の交通手段は76.7%が公共交通機関(バス、地下鉄)で、2番目に多いのがタクシー・ライドシェア。自家用車での通勤は30.2%だった。
持ち家信仰薄れても、家の購入は「結婚のため」
出典:58同城「2019年独身ライフスタイルレポート」より
バブル時代の日本では、「家付き、カー付き、ばば抜き」が流行語にもなったが、中国は男性が結婚前に家を買い、その費用のかなりの部分を親が負担するが半分常識となっている。だが、調査では結婚相手に「家付き、カー付き」を求めたのは17.2%にとどまった(※回答者が男性だけではないことも影響していると思われる)。
交通機関が発達している都市部の独身者は、車より家の購入が優先事項のようだ。
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とはいえ、独身者の57.1%が「結婚より住宅購入が先」と考えており、全体の7割以上が「家を買うのは結婚のため」と回答した。
結婚のための住宅購入資金は男性が頭金を負担し、2人でローンを組むのが主流となっている。
「男性が費用の多くを負担すべき」と回答したのが47.8%に上った一方、女性は男性よりも「共同で負担するべき」「どちらでもいい」と答えた比率が高かった。
住宅購入に当たっては、大半が頭金など費用の一部を父母に負担してもらうと回答した。
購入を計画する住宅の平均値は、「3ベッドルーム、91-120平方メートル、新築」で、立地、交通利便性、デベロッパーの知名度を重視する傾向が強かった。
結婚相手に求めるのは性格が67.3%、学歴が45.2%、職業、収入もそれぞれ4割を超えた。
中国は四年制大学の新卒入社でも初任給に大きな開きがあり、学歴が企業での待遇に大きな意味を持つことから、職業・収入を担保するものとして重視する人が多いようだ。
独身者の4割がペットを飼っている
出典:58同城「2019年独身ライフスタイルレポート」より
支出の中で最も多い項目は、住宅支出(家賃・ローン返済)が41.6%で最多だった。また、全体の4割近くがペットを飼っており、そのうち40.4%はペットに毎月500-1000元(約7800円―1万6000円)を消費していた。
車、住宅ローンを抱えている人たちの月々の返済額で最も多かったのは3000-5000元(約4万7000円―7万8000円)だった。レポートは「ローン返済のために働く」ことを敬遠し、「身の丈にあった幸せ」を優先して賃貸を選ぶ人も増えていると指摘する。
賃貸住まいの人は、47.3%が1ベッドルームの部屋を借りており、71.8%が50平方メートル以下の部屋に住んでいると答えた。
中国で独身者は友人や同僚などとルームシェアをするのが一般的だったが、プライバシー意識が高まり、1人で部屋を借りるのが新たな主流となりつつある。調査では62.1%が「賃貸一人暮らしを選択している」と答え、ルームシェアを希望する人でも7割近くが「トイレ付個室」のある部屋を望んでいることが分かった。
(文・浦上早苗)
編集部注:最新の売上高を入れて記事を更新しました(11月11日17時55分)