発売から品切れが続いている「AirPods Pro」。そのノイズキャンセリングの実力を長距離フライトの飛行機で試してみた。
撮影:小林優多郎
アップルが突如発表した完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」。価格は3万580円(税込)だ。10月30日の発売開始以降、品薄状態が続いており、一躍、意外な人気製品になった。11月11日時点のオンラインストアのお届け予定日は「11月26日から12月3日まで」と表示されるほど。発売直後に取り寄せをした人たちには、徐々に届き始めている、というのが現状のようだ。
なお、フライト中にBluetoothイヤホンを使用できるかどうかは、航空会社や利用機材などによって異なる。あらかじめ確認しておこう。
筆者は普段からソニー製の首かけ型ワイヤレスイヤホン「WI-1000X」(2万9700円税込)を使っているが、AirPods Proは果たしてノイズの多い飛行機のお供になり得るのか。Adobe MAX 2019へ向かう日本・成田~アメリカ・ロサンゼルスの往復の機内で試してみた。
最も満足に思えるのは“手軽”であること
初回のペアリングはただiPhoneやiPadの側でAirPodsを開けるだけ。その後も、近くであければバッテリー残量などが表示される。
筆者がAirPods Proを使ってみて最も気に入った点は、さまざまなシチュエーションごとで感じる“手軽さ”だ。具体的に言えば
- 初回起動時のペアリングのカンタン
- 本体が軽く(2つで計10.8グラム)とシリコン製イヤーピースの密着度
- ワイヤレス充電(Qi)対応のケースで充電がラク
- iOS、iPadOS、macOSでのシームレスな接続切替
ノイズキャンセリングや外音取り込みはコントロールセンターの音量バーを長押しして切り替えることもできる。
とくに本体の軽さとシリコン素材の心地よい密着さ加減は、音楽機器というよりウェアラブルデバイスとしての満足度が高い。
他社製品が特別重いというわけではないが、この軽さだけでも「日常で使い続けようかな」という気に十分させてくれる。
また、これはProに限った話ではないが、ワイヤレス端末として最も面倒な「初回のペアリング」、そして「複数端末間で利用するための切り替え作業」などが、「アップル端末間のみ」という条件付きで、ほとんどゼロになるのはかなりのストレスフリーだ。
ノイズキャンセリングの効きも十分満足
設定画面のBluetoothの項目からは、より細かい設定やイヤーピースが自分に合っているか確認する項目がある。
さて、肝心の機内でのノイズキャンセリング性能。
個人の感覚としては、ほとんどWI-1000Xと遜色ないと感じるほどだった(もちろん、WI-1000Xは専用アプリで周辺気圧に合わせた設定にした状態で比較)。
文章で説明するのはやや難しいが、ノイズキャンセリングのかけ方はやや違ったように感じる。飛行機のエンジン音のノイズは「ゴォー」と低い音に聞こえるが、AirPods Proを使うと「サー」という少し粒子感のある音に変わり、一方WI-1000Xは「コォー」とややぼやかした印象になった。
AirPods Proと第5世代iPad miniの組み合わせは、スペースに制限のある機内で映画や音楽を楽しむに最適な組み合わせだった。
どちらも完全に無音状態になるわけではなく、音量次第ではある程度のノイズや人の声は音量によっては入ってくるという事実は変わらない。
とはいえ、機内で音楽を聴いたり、ダウンロードしておいた映画を観るのに不便に感じることはほとんどないし、この手軽なサイズ感を思えば「かなり効く」のは確かだ。
バッテリーの持ちは“考え方”次第?
本体の満充電に必要な時間は案外短い。
国際線で使う場合に重要な「バッテリーのもち」についても触れておきたい。AirPods Proのバッテリー駆動時間の公称値は最大4.5時間、ケースのバッテリーと合わせて24時間となっている。
今回試した成田~ロサンゼルスの飛行時間は、成田発の便が約10時間、ロサンゼルス発の便が約12時間だった。いずれのパターンも当然、途中で切れてしまうわけだが、ケースで計画的に充電すれば使い続けられる。具体的には、食事の提供があるタイミングや眠りたいときなどは外して充電する、という方法で使った。
外そうと思ったときは、そのままテーブルなどに置くのではなくケースにしまおう。充電にもなるし、紛失する心配も少なくなる。
実際に右側2%、左側0%(ペアリングが外れた状態)でケースに入れたところ、ゆっくり食事をしてまた開いてみると(だいたい40分間が経過)、両側が100%の状態になっていた。
ちなみに、首かけ型のWI-1000Xは、連続音楽再生時間の公称値が10時間で「離着陸時や睡眠中をオフにすれば長距離フライトでもギリギリ追加充電なしで使える」レベルだ。
AirPods Proの「追加充電すれば余裕で使える」を良しとするか、WI-1000Xの「追加充電しなくてもギリギリ使える」を良しとするかは、意見が分かれるところだと思う。
アップル製品中心ユーザーなら買って損なし
飛行機の旅のお供にAirPods Proは、なかなか満足できる結果になった。
AirPods Proがどのようなユーザーに対して買いかどうかはシンプルに言い切れる。
例えば、iPadは持っているが、AndroidスマートフォンやWindows PCも持っている人であれば、AirPods Proをあわてて買う必要はあまりない。
AirPods Proは通常のBluetoothイヤホンとしてアップル以外のOSの端末とも接続できるが、操作性や機能面に大きな差が出てくる。
例えば、今回詳しくは書かなかったが、AirPods Proに搭載されている外音取り込みやSiriによるメッセージの読み上げなど魅力的な機能がある。
2017年に発売したWI-1000X(写真左)と、12月7日に発売予定のWI-1000XM2(右)。2年ぶりのアップデートとなるWI-1000XM2はAirPods Proのよきライバルになるはずだ。
ただし、外音取り込みは質や体験は違えど、WI-1000Xやほかのヘッドホンでも対応している部分はある。アシスタントによるメッセージの読み上げも、AirPods Proはテキストメッセージのみの対応だが、WI-1000XはGoogleアシスタントとの連携後はほとんどのアプリの通知を読み上げられる。
iPhoneを持っていない、アップル製品以外も愛用しているという人であれば、同価格帯のマルチOS対応の別製品を検討する意味はあるということだ。
つまり、逆に言えば「アップル製品を中心に使っていて、ノイズキャンセリングが効果的な飛行機や電車での移動が多い」のであれば、ほとんど買って損はない。AirPods ProはiPhoneやiPadオーナーにとって、頼もしい相棒になってくれるはずだ。
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(文、撮影・小林優多郎)