大型ハリケーンの襲来頻度は100年で3倍に…その勢力は強く、進行速度は遅くなっている

2005年9月のハリケーン「カトリーナ」で倒壊した家と倒木、送電線。ミシシッピ州で。

2005年9月のハリケーン「カトリーナ」で倒壊した家と倒木、送電線。ミシシッピ州で。

Barbara Ambrose/NOAA

  • ハリケーンはアメリカで最も損害額の大きい自然災害だ。
  • 研究によると、今世紀に入って、破壊的なまでに強力なハリケーンが数多く発生するようになっている。
  • 最近のハリケーンの被害はこの傾向を証明している。2017年には「ハーヴェイ」がテキサス州を襲って1250億ドル(約13兆円)の被害をもたらした。2005年の「カトリーナ」による損失は1610億ドル(約17兆5000億円)だった。
  • 地球が温暖化するにつれて、ハリケーンはますます強くなり、ゆっくりと進み、より多くの雨を降らせると予想されている。

ハリケーンはアメリカで最も被害額の大きい自然災害である。

2017年にテキサス州の一部を襲ったハリケーン「ハーヴェイ」の被害額は1250億ドル(約13兆円)だった。アメリカ海洋大気局(NOAA)によると、2005年にルイジアナ州を襲ったハリケーン「カトリーナ」の被害総額1610億ドル(約17兆5000億円)に次いで二番目だった。カトリーナによる経済的損失は同年のアメリカの国内総生産の1%を超えている。

「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)」に掲載された論文によると、アメリカでは、ハーヴェイやカトリーナのような非常に破壊的な暴風雨(広い地域を数十億ドル単位で破壊するハリケーン)の方が、被害の少ないハリケーンに比べて多く発生しているという。

「過去1世紀で、最も被害の大きい暴風雨の発生率は3倍に増えた、と推定されている」と、本研究の筆頭著者であるアスラク・グリンステッド(Aslak Grinsted)氏はBusiness Insiderに語った。

ハリケーンはアメリカにより大きな被害を与えるようになった

研究の大部分は、大きな被害をもたらす可能性のある、より強く、より多く雨を降らせるハリケーンと高い気温に関連があることを示している。しかし、これらの強大化する嵐の被害額を計算するのは難しい。脆弱な沿岸地域に100年前よりも多くの人々が暮らしているという事実だけでなく、インフレや不動産コストの変動も考慮する必要があるという。同じ暴風雨でも、現代の都市部を襲った場合は100年前に比べて被害額が大きくなる可能性が高い。

ハリケーン「マイケル」の被害。フロリダ州メキシコビーチ、2018年10月14日。

ハリケーン「マイケル」の被害。フロリダ州メキシコビーチ、2018年10月14日。

K.C. Wilsey, FEMA

そこでグリンステッドと彼のチームは、世紀を超えたハリケーンの被害を比較する新しい方法を考え出した。経済的損失ではなく、影響を受けた土地の面積で比較するのだ。研究者たちは、保険業界のデータベースを使用して、1900年から2018年の間にアメリカに上陸した240以上の熱帯暴風雨とハリケーンによって破壊された土地の広さを計算した。「1926年のマイアミのハリケーンによる被害額と2017年のイルマによる被害額を、不動産価格の上昇を考慮せずに比較することはできない」と著者は書いている。

グリンステッドは、ATD(area of total destruction:総破壊領域)という新しい尺度を作った。これはハリケーンの経済的損失を比較するためのもので破壊された面積のことだ。

この研究では、最も有害なハリケーン(467平方マイルを超えるATDと定義されている)の頻度は、100年間で330%増加したと結論付けた。一方で、ATDが50平方マイル以下の中程度の嵐の増加率は140%だった。

アメリカでハリケーンが10年間に破壊した面積。

アメリカでハリケーンが10年間に破壊した面積。

Shayanne Gal/Business Insider

データによると、最悪のハリケーンはカトリーナとハーヴェイであり、両方ともATDは1930平方マイルを超えていた。

グリンステッドによると、2000年代は、これまでで最大の総ATDを持つ10年だった。この傾向は、データが熱帯性暴風雨とハリケーンの両方か、ハリケーンのみかに関係なく当てはまる(熱帯性暴風雨は、風速が74mphを超えるとハリケーンになる)。

ハリケーンが強力になっている理由

科学者たちは、直接的に個々の嵐が気候変動によって引き起こされていると明確には言っていないが、温暖化が進むと、ハリケーンの発生頻度や破壊力は、そうでない場合よりも高くなる。

これは、温室効果ガスが大気中に閉じ込める熱の93%を海洋が吸収しており、ハリケーンが温かい海水を燃料として使用しているから。Yale Climate Connectionsによると、海水温が1度上昇すると、嵐の風速は時速30km増加する可能性がある。

さらに、水温の上昇は海面水位の上昇につながり、高潮や洪水のリスクを増大させる。また、より暖かい空気はより多くの水蒸気を保持し、暴風雨がより多くの降水もたらすことを可能にする。


2005年8月31日、ハリケーン「カトリーナ」によって決壊した堤防。ルイジアナ州ニューオーリンズ。

2005年8月31日、ハリケーン「カトリーナ」によって決壊した堤防。ルイジアナ州ニューオーリンズ。

REUTERS/Marc Serota MS/DH

ハリケーンはより緩慢になっているようにも見える。進行速度が遅いと、強い風と雨の時間が長くなるため、被害は大きくなる。実際に、2018年の調査によると、過去約70年でハリケーンと熱帯暴風雨の速度は平均で約10%低下した。

NOAAの科学者であるジェームズ・コッシン(James Kossin)は、ナショナルジオグラフィックに次のように語っている

「それによって、構造物が強風にさらされる時間が増える。また、降雨量も増加する」

ハリケーン「ハーヴェイ」はその代表例だ。上陸した後、ハーヴェイは数日間失速し、ヒューストン周辺に1200ミリ以上の雨を降らせた。 気候科学者のトム・ディ・リベルト(Tom Di Liberto)は、当時、「去ることを拒否した嵐(storm that refused to leave)」と表現した

テキサス州ハンブルで、高速道路がハーヴェイによる洪水に襲われている。2017年8月29日。

テキサス州ハンブルで、高速道路がハーヴェイによる洪水に襲われている。2017年8月29日。

AP/David J. Phillip

さらに悪いことに、より暖かい大気はより多くの水蒸気を保持することができるため、暴風雨の速度が10%遅くなると、その地域の降雨量と洪水が倍増する可能性がある。暴風雨のピーク降雨率は、過去60年間で30%上昇した

予測気候モデルとグリンステッドの新しいデータはともに、温室効果ガスの排出が抑制されない限り、より破壊的なハリケーンの頻度が増加し続けることを示唆している。しかし、排出抑制が実現するまでは、科学者たち知っている、これから起こることに備えなければならないと、グリンステッドは言う。

「短期的には、我々は暴風雨に対抗することはできない。リスクは他の方法で軽減しなければならない。備えたり、避難したり。そして、予測を改善し続けることも重要だ」と彼は言った。

[原文:Hurricanes on the scale of Katrina and Harvey are now 3 times more likely than a century ago: 'We cannot hope to combat storms'

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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