ヒルトン帝国の創設者らが所有した大豪邸が売り出し中…その歴史を写真で振り返る

希望価格で売れたとすれば、この邸宅は、カリフォルニア州で販売された史上最高額の住宅になる。

希望価格で売れたとすれば、この邸宅は、カリフォルニア州で販売された史上最高額の住宅になる。

Courtesy of Hilton Hyland

カリフォルニア州ベルエアにある邸宅「カーサ・エンカンターダ(Casa Encantada)」が、近いうちに同州としては史上最高額で販売された住宅になる可能性がある、とロサンゼルス・タイムズ紙が報じている。

「魔法の館」を意味する「カーサ・エンカンターダ」と呼ばれる約3700平方メートルのこの物件は、希望価格2億2500万ドル(約245億円)で売りに出されている。ロサンゼルス・タイムズ紙によれば、この価格は、現時点で全米で売りに出ている住宅のなかで最高額だという。

現在、投資家のゲイリー・ウィニック(Gary Winnick)氏が所有するこの邸宅の歴史は、ガラス瓶製造業者の未亡人のために建てられた1930年代にまでさかのぼる。以来、多くの人がこの邸宅を所有してきた。1950年には、ホテル王コンラッド・ヒルトン(Conrad Hilton)氏が25万ドル(現在の価値にしておよそ240万ドル:2億6000万円)で購入した。その後の1979年、億万長者でドール・フード・カンパニーの会長兼CEOのデビッド・マードック(David Murdock)氏に1240万ドルで売却されたとロサンゼルス・タイムズ紙は報じている。

2000年にマードック氏からこの邸宅を買ったのがウィニック氏だ。販売価格は9400万ドルと報じられた。ウィニック氏は購入後すぐに、カーサ・エンカンターダのかつての栄華を復活させるプロジェクトに乗り出した。

カーサ・エンカンターダの広報担当者がBusiness Insiderに語ったところによれば、現在の邸宅内部の写真は公開されていないという。だが、この記事を読み進めていけば、1930年代の建築当初の栄光を振り返り、カーサ・エンカンターダの歴史を知ることができる。


この邸宅の広さは約3700平方メートル。ロサンゼルス・マガジン誌によれば、もともとはガラス製造業者の未亡人ヒルダ・ボルト・ウェバー(Hilda Boldt Weber)氏が1934年に10万ドルで土地を購入。ウェバー氏はその後、建築家のジェームズ・ドリーナ(James Dolena)氏に、この豪邸の建築を依頼した

邸宅の外観。

邸宅の外観。

Courtesy of Hilton Hyland

ロサンゼルス・タイムズによれば、ドリーナ氏はジョージアン様式の「巨匠」と見なされていた建築家だが、アールデコ・ムーブメントやモダン様式の影響も受けていたという。

Source: Washington Post, Los Angeles Times, Los Angeles Magazine

内装をデザインしたのは、ピーターソン・スタジオ(Peterson Studios)と、住宅向けのカスタムメイドの家具やファブリックを手がけていたT・H・ロブスジョン・ギビングス氏だとロサンゼルス・タイムズは伝えている。邸宅は1937年に完成。総工費は200万ドル、現在の価値にして3500万ドル(約38億円)を超えた。

1939年ごろの邸宅の外観。

1939年ごろの邸宅の外観。

The Huntington Library

Source: Los Angeles Times, Los Angeles Magazine

ウェバー氏は、もともとは看護師だった。看病していた中西部のガラス瓶製造業者と結婚した。夫の死により莫大な遺産を得たウェバー氏は、この豪邸の建築に惜しみなく金を費やした。

1939年ごろの邸宅の外観。

1939年ごろの邸宅の外観。

The Huntington Library

Source: Washington Post, Curbed LA

ウェバー氏はずっと上流社会に加わりたいと切望していたが、歴史学者によれば、ベルエアの上流階級に本当の意味で受け入れられることはついになく、ほとんどの時間をギャンブルで財産を浪費して過ごしていたという。

1939年ごろの邸宅の内観。

1939年ごろの邸宅の内観。

The Huntington Library

Source: Curbed LA, Los Angeles Times

時が経つにつれウェバー氏は、 自らが建てた豪奢な邸宅を持てあますようになった。ロサンゼルスの豪邸の裏にある歴史をめぐるマイケル・グロス(Michael Gross)氏の著書『Unreal Estate』によれば、ウェバー氏はこの邸宅を売却したあとに自殺したという。

1939年ごろの邸宅の外観。

1939年ごろの邸宅の外観。

The Huntington Library

Source: Curbed LA, Los Angeles Times

ワシントン・ポストによれば、ウェバー氏は1949年にカーサ・エンカンターダを22万5000ドル(現在の価値にしておよそ240万ドル)でコンラッド・ヒルトン氏に売却したという。当時のヒルトン氏は、いまや誰もが知るホテル帝国を築いている最中だった。ヒルトン氏は1979年に死去するまで、30年にわたってこの邸宅を所有した。

ヒルトン氏はカーサ・エンカンターダにほとんど手を加えず、大部分を変えずに残していたとロサンゼルス・タイムズは伝えている。

ヒルトン氏はカーサ・エンカンターダにほとんど手を加えず、大部分を変えずに残していたとロサンゼルス・タイムズは伝えている。

The Huntington Library

Source: Washington Post, Los Angeles Times, Los Angeles Magazine

ヒルトン家はその後、カーサ・エンカンターダをドール・フード・カンパニーの会長兼CEOで億万長者のデビッド・マードック氏に1240万ドルで売却した。この取引額は当時の最高額だった

1939年ごろの邸宅の内観。

1939年ごろの邸宅の内観。

The Huntington Library

Source: Los Angeles Times, Los Angeles Magazine

マードック氏は2000年、この邸宅を投資家のゲイリー・ウィニック氏に売却した。売却価格は9400万ドルと報じられ、またもや記録破りとなった。ウィニック氏はその後、建築家のピーター・マリノ(Peter Marino)氏にカーサ・エンカンターダの修復を依頼した。この修復プロジェクトは、完了までに2年近く(と数百万ドル)を要した

1939年ごろの邸宅の内観。

1939年ごろの邸宅の内観。

The Huntington Library

ウィニック氏は、グローバル・クロッシングの創業者兼会長としてよく知られている。同社は、海底に光ファイバー網を敷設し、それにより4大陸27カ国を接続した、とロサンゼルス・タイムズは伝えている。

Source: Los Angeles Times, Los Angeles Magazine, The Real Deal

カーサ・エンカンターダの販売代理店は現在の内観写真の公開を予定していないが、ロサンゼルス・タイムズによれば、ウィニック氏は邸宅のクラシカルな細部を復活させたという

1939年ごろの邸宅の内観。

1939年ごろの邸宅の内観。

The Huntington Library

同紙によれば、カーサ・エンカンターダにはウッドパネルの壁に加え、幾何学模様の装飾が施された繰形(建具にあしらわれる装飾)があるという。鉄細工やテラスバルコニーも採り入れられている。

Source: Los Angeles Times, Los Angeles Magazine

この邸宅には、ゲストハウス、プールハウス、従業員用の部屋がある。さらに、バスケットボールコート、テニスコート、温室、ローズガーデン、鯉のいる池もある

1939年ごろの邸宅の外観。

1939年ごろの邸宅の外観。

The Huntington Library

玄関口の天井は高さ約5.5メートルで、純銀製のバーカウンターがしつらえられた部屋もある。

Source: Los Angeles Times, Los Angeles Magazine

ロサンゼルス・タイムズによれば、この邸宅には本格的な映写室、レセプションホール、広々としたフォーマルルームを含む60部屋があり、ほぼすべての部屋から山と海の景色を楽しめるという。

1939年ごろの邸宅の内観。

1939年ごろの邸宅の内観。

The Huntington Library

Source: Los Angeles Times, Los Angeles Magazine

現在の希望価格で売れたとすれば、カーサ・エンカンターダは、先ごろ1億1975万ドル(約130億円)で売却された、ホルムビー・ヒルズにあるスペリング邸を抜き、カリフォルニア州で販売された史上最高額の住宅になるとフォーチュン誌は伝えている

現在のカーサ・エンカンターダの外観。

現在のカーサ・エンカンターダの外観。

Courtesy of Hilton Hyland

Source: Fortune


[原文:The most expensive house for sale in America is a $225 million Bel-Air estate built by a rejected socialite and once owned by the founder of the Hilton empire. Take a closer look at the sprawling property.

(翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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