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それでもEVを選ぶべき理由…製造時の環境負荷はガソリン車より大きい

電気自動車の方が温室効果ガス排出量が多いという研究が発表された。

電気自動車の方が温室効果ガス排出量が多いという研究が発表された。

Samantha Lee/Business Insider

  • 電気自動車は、ガソリン車に代わる選択肢として注目されている。走行中に温暖化の原因物質を排出しないこともあり、環境に優しいクルマだとされている。
  • しかし、製造時に排出される温室効果ガスの量では、電気自動車はガソリン車を上回る。
  • この事実は、世界の3大自動車市場であるアメリカ、中国、ヨーロッパを対象とした複数の研究で明らかになった。
  • そこで大手自動車メーカーは、環境への悪影響を抑えるべく、自動車の製造プロセスの見直しに乗り出した。その中にはすでに大きな成果を上げた取り組みもある。

電気自動車の製造時に排出される温室効果ガスは同等のガソリン車と比べて多いことが、アメリカヨーロッパ中国を対象にした複数の研究で明らかになった。

こうした排出量の違いを生む最大の要因は、電気自動車に用いられているバッテリーだと、オートモーティブ・サイエンス・グループ(ASG:Automotive Science Group)の代表を務めるコルビー・セルフ(Colby Self)氏はBusiness Insiderに述べた。電気自動車では、バッテリーは車両の総重量の4分の1を占めることもある。

電気自動車のバッテリーは、ガソリン車に搭載されているバッテリーと比べてサイズが大きく、電気を蓄えるために使われている化学物質の種類も異なる。ガソリン車では鉛蓄電池が用いられる場合が多いのに対し、電気自動車では、携帯電話やノートパソコンと同じリチウムイオン電池が採用されている。

リチウムイオン電池の製造には、多大なエネルギーを要する。加えて、リチウムイオン電池に用いられるリチウムやニッケル、コバルトといった金属の抽出や精錬にも多くのエネルギーが消費される。また、鉛蓄電池と比べてリサイクルも難しいと、セルフ氏は指摘する。

憂慮する科学者同盟(UCS:Union of Concerned Scientists)のクリーンカー・プログラムで主任エンジニアの役職にあるデイビッド・ライヒムース(David Reichmuth)氏はBusiness Insiderに対して、「電気自動車ではエンジンとトランスミッションが不要になるが、バッテリーの製造時に発生する二酸化炭素の排出量は、エンジンなどが不要になったために削減される排出量よりも大きい」と述べた。

UCSが2015年に行った研究によると、中型の電気自動車では、同サイズのガソリン車と比べて、製造時に排出される温暖化物質が15%多くなることが判明した。より大型の電気自動車では、搭載されるバッテリーがさらに大きくなるため、ガソリン車との排出量の差は68%、もしくはそれ以上になる可能性もあると、UCSは報告書で指摘している。

この指摘は、非営利組織(NPO)である国際クリーン交通委員会(ICCT:The International Council on Clean Transportation)の調査結果とも一致している。ICCTは、2011年から2017年までの間に発表された11件の研究論文を精査した結果、この結論に至った。

ICCTは、電気自動車の方が製造時の排出量が多くなる最大の要因として、バッテリー製造時に消費される電力を挙げている。ということは、製造時に発生する温暖化物質の削減において最も効果的な手段は、より環境に優しいエネルギー源を採用することになる。

フォルクスワーゲンは、今後10年を見据えた電気自動車への投資計画を掲げており、その内容は大手自動車メーカーの中でも最も野心的とも評価されている。同社は、バッテリー調達先の1つであるLG化学との間で、バッテリー製造時に用いられる電力源を環境に配慮したものに限定すると定めた取り決めを結んだ。また、テスラは、ネバダ州に建設した同社のバッテリー工場に関して、ゆくゆくは再生可能エネルギーのみで稼働させるとの構想を明らかにしている。

テスラやBMWは、バッテリーのリサイクルプログラムにも参画している。リサイクルは、バッテリー製造に伴う温暖化物質の排出量を削減させる方策の1つとして、ICCTも挙げているものだ。全体で見ると、電力網の脱炭素化、バッテリーのリサイクル、バッテリーのエネルギー密度の向上という3つの手段を組み合わせることで、バッテリー製造で発生する温暖化物質排出量を最大で49%削減できると、ICCTでは推計している。


充電中の日産の電気自動車、2019年式「リーフe+」。

充電中の日産の電気自動車、2019年式「リーフe+」。

Bryan Logan/Business Insider

バッテリー製造工程以外にも広がる脱炭素の動き

各メーカーは、自動車製造工場で環境に悪影響を及ぼすエネルギーの使用を削減するために、バッテリーの製造プロセス以外でも、さまざまな方策を取っている。中でも最も先進的なのがBMWで、2020年以降、車両の製造には環境に優しいエネルギー源で発電された電力のみを用いるとしている。

ダイムラーは2022年以降、車両の製造に再生可能エネルギーのみを用いる計画だ。フォルクスワーゲンも、2050年までに製造工程をカーボンニュートラルにするとの方針を打ち出した。テスラとトヨタも、製造工場では再生可能エネルギーのみを用いるとの目標を掲げているが、両社は今のところ移行完了の期日を設定していない。

自動車メーカーは実際にその方向に動き始めている。ミシガン州レイク・オリオンにあるゼネラルモーターズ(GM)の工場では、使用されるエネルギーの約60%が、工場に隣接する2区画の埋め立て地から自然発生するメタンでまかなわれていると、GMで工場立ち上げ業務の責任者を務めるジャック・フンド(Jack Hund)氏は、Business Insiderの取材に対して語った。この工場では、GMの電気自動車「シボレー・ボルト」が生産されている。テスラも、カリフォルニア州フリーモントにある工場で、生産設備のエネルギー効率向上に取り組んでいて、2016年から2019年までの3年間で、19%のエネルギー消費削減を達成した。

製造時に排出される温暖化物質の量ではガソリン車を上回るものの、走行時を含めたトータルで見ると、電気自動車による温暖化物質の排出量ははるかに少ない。

2015年のUCSによる研究では、走行時に排出される温暖化物質の量で比較すると、ガソリン車は電気自動車の2倍近くに達することが判明している。ゆえに、電気自動車は製造過程ではより多くの温暖化物質を排出するものの、6〜18カ月間運転することで、その差は相殺できるという(相殺にかかる期間は、電気自動車のバッテリーの大きさによって異なる)。UCSでは2018年に入り、電気自動車のエネルギー効率がさらに向上しているとの調査結果を発表した。

この調査によると、電気自動車の燃費は、ガソリン車換算で1ガロンあたり80マイル(1リッターあたり約34キロメートル)に達している。これに対し、ガソリン車の燃費は2017年式の平均で1ガロンあたり24.9マイル(同約10.6キロ)にすぎない。しかも、電気自動車のエネルギー効率は、1ガロンあたり73マイル(同約31キロ)だった2017年から向上している。これは、アメリカの電力業界で、発電に石炭が使われる割合が減り、再生可能エネルギーの使用が増えたことに起因するという。

2018年にヨーロッパを対象として行われたICCTの調査報告でも、同様の結論が出ている。この調査の中でICCTは、製造から運転時を含めたトータルで見ると、ヨーロッパで使われている標準的な電気自動車が排出する温室効果ガスの総量は、同地域におけるガソリン車の平均値と比較して半分程度だと述べている。電気自動車を2〜3年間使用すれば、温暖化物質の総排出量が平均的なガソリン車に並ぶという。

自動車の製造過程で排出される温暖化物質の削減は、自動車メーカーにとって重要な課題だ。だが、マサチューセッツ工科大学(MIT)の准教授で、エネルギー分野を専門とするジェシカ・トランシック(Jessika Trancik)氏は、進むべき道は明確だと断言する。「消費者のニーズに合致した、動力源をガソリンに頼らない電気自動車のラインナップを充実させることこそ、自動車メーカーに可能な、唯一かつ最大の貢献だ」と、同氏は述べた。

[原文:Electric cars may be the future, but they're still critically flawed in a key area

(翻訳:長谷睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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