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「いま日本は……」楽天証券、Origamiが香港Fintech Weekで世界に問いかけたこと

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11月4日から8日まで開催された「香港フィンテックウイーク」。6日と7日にアジアワールドエキスポで展示会と講演イベントが開催された。

撮影:大塚淳史

デモ隊と警察との衝突が再び激化している香港で、先週11月4日から8日まで「香港FinTech Week(香港フィンテックウイーク)」が開催された。

11月6日と7日には香港や海外のフィンテック企業が多く出展。日本からは、楽天証券の楠雄治社長や、Origami Pay(オリガミペイ)を展開するOrigami(オリガミ)の康井義貴社長、FOLIO(フォリオ)ホールディングスの甲斐真一郎会長らが登壇し、日本国内でのフィンテックの現状や展望を議論した。

楽天証券の楠社長はモバイル事業について言及

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左から、FOLIOホールディングスの甲斐真一郎会長、楽天証券の 楠雄治社長、「Tinkoff Capital」のRuslan Muchipov CEO。

撮影:大塚淳史

楽天証券の楠社長や、投資サービスのFOLIO(フォリオ)ホールディングスの甲斐会長らが登壇し、「Making your Money Work for You」というテーマで議論。

議論の中で楠社長は、第4のキャリアとして自社回線によるサービスを始めた楽天モバイルとのシナジーについて、踏み込んだ言及をしていた。

「楽天グループは日々、カスタマーのトランザクション(決済を含むやりとりの)データを日々集めています。また、eコマース、インターネットサービスやフィンテックサービスなどといったデータを持っている。ちょうど楽天は、スタートしたモバイルビジネスを通して、行動データを集め、それとトランザクションデータを結びつけ、楽天カードのデータなどと整理し、これらのビッグデータをAI等を使って分析します」

楽天経済圏におけるデータビジネスの促進についてはこう説明する。

「我々はAIやデータサイエンティストを抱えていて、グローバルにリサーチしている。アメリカ、ヨーロッパ、インド、中国、日本の多くのエンジニアを抱えている。(今後は)グループとして、データを結びつけたサービス、全てのサービスにビッグデータサービスを活用して促進していく」

Origamiの康井社長、海外展開は「ステップ・バイ・ステップ」

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左から、EYのジェームズ・ロイド氏、オリガミの康井社長、Tossのイ・ スンガンCEO。

撮影:大塚淳史

Origamiの康井社長は韓国のモバイル送金サービス「Toss」のイ・ スンガンCEOと登壇し、日本と韓国それぞれのフィンテック事情について紹介していた。セッション終了後に取材に応じた康井社長は、今回参加して良い感触を得たようだ。

「香港のフィンテックは元気がなくなっていると聞かされたんですが、実際に参加してみて、改めて香港がアジアのハブになっていると感じました。世界中からここに(フィンテック関連の)企業や人が集まっていることで、色んな話し合いの機会の場を持つことができる。コラボするきっかけになるかもしれません」

日本のマーケットの現状については、「キャンペーン合戦も落ち着いてきましたし、僕らも加盟店にいって『QRは何?』から『あー、QRね』になった。パーセプションが変わってきた。フェーズ2に入ってきたと感じます」と見ている。

また、中国の決済大手「銀聯国際」と提携して、訪日客向けに対応している。オリガミが今後海外での展開を進めるかについては、ステップ・バイ・ステップとした。

「マーケットは中国だけではないですし、色んな国で展開できたら良いとは思っています。海外でのビジネスといっても2つある。ひとつは日本人が海外で払えるようにする、もうひとつは現地の人が払えるようにする。ただ、そこ(後者)には大きな現地の(法律や規制などの)壁がある。海外といってもステップ1、ステップ2があるとは思います」

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Origamiの康井社長。

撮影:大塚淳史

海外で進む公的機関によるデジタル通貨。日本は?

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日本における分散型金融の状況について説明した、Coinbase日本法人の北澤直CEO(写真左から1人目)とクラウドリアルティの鬼頭CEOは(同3人目)。

撮影:大塚淳史

フィンテック協会の理事である、クラウドリアルティ鬼頭武嗣CEOは、仮想通貨取引所Coinbase日本法人の北澤直CEOと「Evolvement of DeFi in Japan(日本における分散型金融の進展)」というテーマでセッションした。

ブロックチェーンを基盤とした「分散型金融」(DeFi)への注目が高まっている。Facebookのデジタル通貨「リブラ」が注目される一方、中国が国として推進する“デジタル人民元”や、EU(欧州連合)による公的デジタル通貨の構想が出てくるなど、既に議論が活発化している。

ところが日本はそこまで議論が至っていない。鬼頭CEOは、現状をこう説明する。

「日本はまだキャッシュレスの方に向いている。デジタルのトランザクションがある程度普及しないと、デジタル通貨までは進まないのではないか。グローバルのポリシーメイキングにおいては、普及が進むのを待たずに、政府レベルでイニシアチブは取っていくべき。協会としても密に話し合っています」

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会場では世界的な企業からスタートアップ企業まで、多くのフィンテック企業が出展していた。

撮影:大塚淳史

日本インバウンド狙いのマルチスマホ決済サービス

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「Take Me Pay(テイクミーペイ)」を提供する日本美食の董路(ドン・ルー)社長。香港は日本へ旅行する人が多いからなのか、講演が進むにつれ足を止めて説明を聞き入る人が増えていた。

撮影:大塚淳史

来場者の関心を引いていたのが、日本でマルチスマホ決済サービス「Take Me Pay(テイクミーペイ)」を提供する日本美食の董路(ドン・ルー)社長の講演。

中国出身で日本でも長く生活しているドン社長は、東京五輪を控えた日本のインバウンドの現状を説明し、どうQR決済サービスを活用するかを話した。

テイクミーペイは他社のスマホ決済サービスを一元管理するという、いわば二次サービス。決済サービスが寡占化すれば、必要とされなくなる可能性もある。

「我々は日本にある多くの決済サービスと連携していることで、インバウンドの広告や宣伝などの活用ノウハウがあります。また、日本の決済サービスが、中国のアリペイとWeChat Payのように寡占化することは難しいと思う。我々のようなマルチ決済サービスにもチャンスは十分あります」

※香港FinTech Weekのレポート記事は複数回にわたってお届けします。

(文、写真・大塚淳史)

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