米でスタート「ディズニー+」を体験。1日で320万ダウンロード。ネットフリックスの株価は下落

Disney+の広告の前を歩く男性

ネットフリックス一人勝ちな中、「Disney+」はどう戦っていくのか。

REUTERS/Brendan McDermid

有料ストリーミングサービスに「地殻変動」を起こすと言われる「Disney+(ディズニー+)」が11月12日、アメリカ、カナダ、オランダでサービスを始めた。

これまでは、最大手ネットフリックスが「一人勝ち」の業界だが、メディア大手ウォルト・ディズニーが繰り出した後発のDisney+はどう食い込んでいくのか。ウォール街では「ネットフリックスを駆逐する」という声まであり、ネットフリックスの株価が下落している。

早速、Disney+のサービスを体験してみた。

ESPNのスポーツ中継も見られる

まず、驚いたのは料金だ。Disney+は基本の月額が6.99ドル(約760円)と、ネットフリックスの8.99ドルよりも安く設定してきた。さらに、ネットフリックスにはない年間契約69.99ドル(約7600円)があり、月額にすれば5.8ドルとさらに安くなる。

さらに唸らせるのは、「Disney+、Hulu(フールー)、ESPN+」(12.99ドル)というパッケージだ(ウォルト・ディズニーはHuluに出資している)。ネットフリックス、Amazonプライムビデオには、映画やドラマシリーズがこれでもかとあるが、スポーツの中継は皆無に等しい。スポーツの放映権は伝統的に、ネットワークテレビ局やウォルト・ディズニー傘下のスポーツ専門ケーブル局ESPNが独占しているからだ。

Disney+のパッケージでは、傘下のESPNの生放送も見られる。ESPNの中継ではメジャーリーグ・ベースボール(MLB)、アイスホッケーのナショナル・リーグ(NHL)、男子プロゴルフのPGAツアー、サッカーのセリエA、テニスのウィンブルドン、USオープンなどを網羅している。

ニューヨーク・タイムズは「見るべき50」特集まで

Disney+のウェブサイト画面

Disney+のサイトにアクセスすると、名映画スタジオとブランドのボタンがずらりと並んでいる。

Disney+のサイトにいってみよう。「Disney」「PIXAR」「Marvel」「STAR WARS」「National Geographic」と、名映画スタジオとブランドのボタンがずらりとあり、そこから作品を選ぶことができるのはインパクトがある。このようなボタンは、ネットフリックスにはない。

Disney+のウェブサイト画面

膨大な量の映画とドラマがある。何から見始めるか悩ましい。

500本の映画と7500本のドラマとなると膨大な量で、何を見ていいのかわからないほど。ニューヨーク・タイムズは「Disney+で見るべきベスト50」まで掲載した。スター・ウォーズの世界での賞金稼ぎの放浪を描いた話題作「ザ・マンダロリアン」(8話)がオリジナルとしてトップに上がる。サイトの作品メニューの一番上にあるオリジナルにも、「ザ・マンダロリアン」を含めた12作が上がっている。

「トレンディング」にも「ザ・マンダロリアン」は含まれているが、「アベンジャーズ」「アバター」などの過去のヒット作品の他、「アナと雪の女王」「シンプソンズ」「ライオン・キング」などアニメはやはり多い。

アクセス殺到でつながらず

Netflixのオフィス

アメリカではインターネットユーザーの6割弱がネットフリックスを利用しているという調査データが。

Getty/Mario Tama

ニュースメディアのDigital Media Wireが、調査会社Apptopiaの調査結果として報じたところによると、Disney+のモバイルアプリはサービス開始から24時間で320万回ダウンロードされ、全体の89%がアメリカからだった。同じ期間にネットフリックスは、全世界で66万2000回ダウンロードされた。

サービスを開始した11月12日午前はサインインできない、あるいは作品が見られない、といった苦情がSNSで指摘された。アクセスが殺到したためとみられる。

調査会社ボーハウス・アドバイザーズによると、アメリカでは74%のインターネットユーザーが、ストリーミングサービスを利用している。ネットフリックス利用は59%と6割に達する勢いで、Amazonプライムビデオ(41%)、Hulu(32%)が続く。有料で契約してもいいと思っているサービスの数は平均で「1.6」で、消費者は1つ以上のサービスをすでに契約しているか、契約する用意があることになる。

調査によると、18〜34歳の67%がネットフリックスやYouTubeなどをパソコン、スマートフォン、タブレット、スマートTVで「毎日」見ている。全年齢でも50%に達する。

引き起こされたテレビ業界の地殻変動

それぞれ別々の画面を見る家族

18〜34歳が動画を見る端末としてもっとも利用しているのがスマホ。テレビは主流ではない。

Getty/Eric Audras

一方で、テレビ放送を見るためのCATVなどのペイTVの契約世帯は、雪崩を打って契約を解消。調査会社ウルフ・リサーチは、2017年から2024年(推定)で年平均成長率(CAGR)をマイナス6.6%と見込んでいる。契約者数は、この間3430万世帯減少し、2024年には全米テレビ保有世帯の半分に近い5958万世帯になるというショッキングな予測だ。

ストリーミングサービスは、アメリカのテレビ業界に「地殻変動」を引き起こした。テレビ業界の縮小、衰退は固定化した。ビデオ視聴の世界では視聴率競争に代わり、ネットフリックスに対しDisney+が挑むユーザー獲得競争こそが、「本場」になったといえるだろう。

動画を見る端末も、18〜34歳ではテレビが主流ではない。テレビがメインの端末と答えたのはわずか19%で、最も多いのはスマホ(29%)とパソコン(21%)。全年齢層ではテレビ(43%)、スマホ(16%)、パソコン(15%)で、テレビは依然として主流だが、それでも全体の半分を切っている(ボーハウスの調査)。

「自らのビジネスを破壊している」

ディズニーのボブ・アイガー最高経営責任者

「イノベーションを起こさなければ、死ぬだけだ」とディズニーのボブ・アイガーCEO。

Getty/Drew Angerer

こうした中で、ウォルト・ディズニーは満を辞してDisney+を始めた。ネットワークテレビ局ABCを保有し、アニメ、ドラマ、スポーツのジャンルでも主要テレビチャンネルを持っていたディズニーはもはや、テレビと映画館には頼れなくなった。

ディズニーのボブ・アイガー最高経営責任者(CEO)は自著で、こう書いた。

「我が社は、自らのビジネスのディスラプションを加速させている。イノベーションを起こさなければ、死ぬだけだ」(ニューヨーク・タイムズによる)

しかし、過去のテレビのヒットドラマが、オンライン動画配信にとっても重要であることは間違いない。

ニューヨーク・タイムズは、「どのサービスを契約したらいいのか」と迷う人のためのクイズとガイドを掲載した。6問のクイズに答えていけば、どのサービスが自分に合っているのか、月額でどの程度払うことになるのか分かるというものだ。その最初のクイズが、「サインフェルド」「シンプソンズ」「ロスト」などのドラマでどれが再度見たいかというものだ。「サインフェルド」はネットフリックス、「シンプソンズ」と「ロスト」はDisney+で配信されている。

ストリーミングの方がコスパがいい

このほか映画のジャンル、好みのスポーツ、好みのドラマジャンルなどに答えていくと、筆者の場合、ネットフリックス、Huluを含む6つのストリーミングサービスを契約するのがベストで、月額は合計59ドルという結果が出た。それでも、現在テレビ・インターネット接続のためにCATVに支払っている100ドル超の契約料より割安だ。しかも、2、3チャンネルしか見ないにもかかわらず、ストリーミングと異なりコマーシャルを1時間のうち15分も見せられ、割高感が強い。

オンラインショッピングで自分の好みに合ったものを徹底的に探す若者にとって、ストリーミングサービスは経済的にも理にかなっている。

ネットフリックスはディズニーを追いかけて、家族で見られるエンタメ作品を強化している。11月1日からはApple TV+が日米などで始まった。NBCユニバーサルもPeacockというストリーミングサービスを2020年4月から始める。市場は急速に混み始め、アメリカでストリーミング視聴者数がテレビ視聴者数を超えるのも遠くはなさそうだ。

(文・津山恵子)

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