「ヤフー・LINE経営統合」に戸惑う社員。国内最大のネット企業めざす孫正義の思惑

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Business Insider Japan

ソフトバンクグループで大手ポータルサイトをもつヤフーとLINEが経営統合に向けて最終調整に入ったとの報道を受け、11月14日、両社は交渉中であることを認めるコメントを発表した。

LINEのチャットアプリがもつ月間アクティブユーザー8200万人(10月30日時点)のユーザー基盤を取り込み、ヤフーサービスの5000万ユーザーとかけ合わせることで、スマホ決済、データ活用、小売事業を一気に加速させ、日本発のメガプラットフォーマーとして世界市場に打って出る狙いがある。

報道によると、ヤフー親会社のソフトバンクと、LINE親会社で韓国IT企業のネイバーが50%ずつ出し合って新会社を設立。その傘下の持ち株会社にヤフーやLINEを子会社としてぶら下げる案が検討されている模様だ。

週刊誌報道レベルから大きく前進コメント

Zホールディングスのプレスリリース

Zホールディングスのプレスリリース。

撮影:伊藤有

「正直、寝耳に水で(汗汗汗)何もわかりません」

午後9時過ぎ、日経新聞デジタル版の報道がネット上を駆けめぐると、LINE社員にもメディアからの問い合わせが殺到した。Facebookのメッセージアプリ、メッセンジャーで送られてきたLINE社員からのメッセージには「汗」の字がずらりと並ぶ。

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ヤフーとLINEの経営統合については、これまでも週刊誌報道などでしばしば話題にのぼってきた。ただしその時点ではあくまで噂レベルに止まり、社員も「またか」と慣れたものだったという。

しかし今回、日経報道の翌朝には両社が、交渉の事実を公式に認めたことから、事態は一気に進んだと言える。

企業価値向上のため施策の一つとして検討を進めていることは事実ですが、当該報道内容に関して当社として決定していることはありません」(LINEプレスリリースから抜粋)

当社とLINE株式会社が本件について協議を行なっていることは事実ですが、現時点で決定した事実はありません」(Zホールディングス傘下のヤフーのプレスリリースから抜粋)

デジタルプラットフォームでライバル関係にあるヤフーとLINEは、とりわけヤフー→LINEで転職者も多く、古巣と現籍の会社の統合という事態に巻き込まれた人も少なくない。

「現時点で確定していないし、まだどう受け止めていいのか自分でも整理できない」

「今は(取材に応えることは)控えたい。すみません」(いずれもヤフーからLINEへ転職した社員)

「反省はするが萎縮はしない」の言葉のウラ

孫正義

GettyImages

一方、あるLINEの幹部はこう漏らす。

「個人的にはネガティブに捉えている。今話すと、ネガティブなコメントになってしまう」

ヤフー親会社のソフトバンクは、投資事業「ビジョン・ファンド」の出資先、米シェアオフィス・Weworkの経営不振で、2019年第2四半期決算で営業赤字156億円という厳しい数字を出したばかりだ。

孫正義会長兼社長が10月6日の決算会見で語った「反省はするが萎縮はしない」の言葉の裏に、LINEとの経営統合があったことは疑いようもない。しかし、取り込まれるLINEに不安要素がないと言えば嘘になる。

LINEはここ数年、決済のLINE PayやLINEほけん、LINE証券などの金融事業など大きく事業規模を広げてきた。その分、投資がかさみ赤字決算が続いていたが、2018年通期決算では3年以内の黒字化を目指すと宣言していた。

今回の経営統合が現実のものになるとすれば、ヤフーの事業と被る部分やソフトバンクグループが不要と判断した事業が、どの程度“間引き”されるかも今後注視しておかなければならない。

なお、LINE決算の売上高は2071億円(2018年12月期)、ヤフーを傘下にもつZホールディングスの連結売上高は9547億円(2018年3月期)。両者を単純に足し合わせれば、国内IT企業では売上高最高額につける。

(文・滝川麻衣子、取材・小林優多郎)

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