リンクス梅田の外観。ヨドバシ梅田のほか約200近いテナントが入る巨大施設だ。
撮影:伊森ちづる
ヨドバシホールディングスは16日、JR大阪駅北口に立地するヨドバシ梅田タワー内に、複合商業施設「LINKS梅田(リンクスうめだ)」をオープンする。
隣接するヨドバシカメラマルチメディア梅田と合わせた総売り場面積は、約9万平方メートル。地下1階から地上8階の9フロアで、日本初や新業態19店舗、関西発23店舗、大阪発13店舗を含む、約200店舗のテナントで構成される。
「近隣のオフィスワーカー、家族連れだけでなく、訪日客も訪れる国際交流の起点となる施設にしたい」
リンクス梅田を手がけるヨドバシ建物の安藤修一取締役・営業部部長は語る。売り上げ目標は、ヨドバシカメラマルチメディア梅田、リンクス梅田あわせて初年度1700億円。来館者目標は7700万人だ。
リンクス梅田のフロア概要。ヨドバシカメラの面積よりテナント部分の方が広い複合型商業施設だ。建物の延べ床面積は22万平米。
出典:ヨドバシカメラ
仙台でもライブハウスなどが入居する商業施設を計画中
リンクス梅田を手がけるヨドバシ建物の安藤修一取締役営業部部長
ヨドバシホールディングスは、JR仙台駅東口に近接した「ヨドバシ仙台第一ビル計画」、JR札幌駅南口の旧札幌西武跡地の再開発、JR新宿西口前の新宿西口本店の再編・建設に関する計画など、大規模な店舗建設計画を抱えている。今月に入り、甲府駅前の山交百貨店跡地の取得に関する報道もなされている。
今回のリンクス梅田を皮切りに、他の地域でも家電販売だけではないビジネスに着手するのだろうか。
安藤氏は、リンクス梅田が誕生した背景を次のように語る。
「平成13年にマルチメディア梅田をオープンした際、上層階にアパレルなどテナント様が入っていました。当時は、駅前立地を活かしてテナント様を募集するだけの取り組みで、テナント様との関係性は薄いものでした。
その後、博多、秋葉原、横浜、吉祥寺、京都と順番に複合化した店舗を手がけています。家電量販店の『ヨドバシカメラ』だけではできないようなこと、でもお客様から求められていることに取り組みたいと、今回の複合施設オープンとなりました」
仙台、札幌、新宿などでも土地を取得するなかで、なぜ「梅田」からの開始なのかも気になるところだが、これは単純に開発の順番からだったそうだ。
「リンクス」の名前を使った複合施設は梅田が初。今後、他の地域での展開も計画中だという。
「現在仙台で、10万平米規模の計画に着手しています。バスターミナルを備えるほか、ライブハウス、ホテルなども入る複合施設を『リンクス』として計画中です。
新宿は、都市再生特別地区に関する事業として高層化し、低層階を商業利用、高層階をオフィスなど考えていますが、現在行政側と協議中です。形になるのは5年後くらい。新宿も、リンクスになる可能性はあります」
リンクス梅田の近隣には、グランフロント大阪、ルクア大阪など、大型商業施設が複数集まっている。そんななか「新しい」という以外の、リンクス梅田の特徴はどこにあるのか。キーワードは「エンタメ化だ」と安藤氏。
「施設をエンタメ化していこうと考えています。地下は『食のエンターテイメントフロア』とし、食物販と飲み屋が集まる『おいしいもの横丁』に。8階にはビジネスマッチングオフィス(WeWork)を入れました。これも1つのエンタメです。
また、これまで当社が力を入れてこられなかったのがカフェです。1日の来店客数が10万人規模だというのに、休憩する場所が足りていませんでした。
今回は、カフェ、フルーツパーラーなどを店内のあちこちに配しています」
家族連れに配慮した売り場、新たなライフスタイルの拠点へ
リンクス梅田の内部は、一部プレス向けに先行公開された。内覧しながら、施設内で特に印象に残った部分を最後にまとめた。
ニトリ「インテリア相談サービスは西日本初」
7階のニトリはワンフロアで都市型店舗として西日本最大級の広さ(売り場面積約800坪)。ホームファッションアイテムを多めに取りそろえる。西日本では初となる「インテリア相談サービス」もある。同社の須藤文弘副社長は「全国トップの売り上げを目指す」とする。
石井スポーツは広いスペースを活用する展示に。
6階はニトリ同様のワンフロアに、石井スポーツが入る。今年4月にヨドバシホールディングス傘下となった石井スポーツは、 大型のテントを実際に設営して展示するなど、よりリアルな使用シーンを想像できる見せ方を意識している。
石井スポーツは、山登り、ランニング、ソロキャンプ、スキーといったカテゴリーの製品の品揃えが厚いが、ヨドバシ傘下になったことで、オートキャンプ製品なども幅広く扱う。 スキー板などの品揃えも豊富。BURTON、THE NORTH FACEなど7ブランドのショップインショップが登場した。
ファミリー層を意識したアミューズメント施設。
通路が広いため、ベビーカーなどでの移動もしやすい。
5階には、アミューズメント施設「モーリーファンタジー」が出店。インタラクティブ映像システムを駆使した滑り台や、キャッシュレスゲーム機などを導入している。子連れが過ごしやすいよう、フロア全体を森をイメージしてマット敷きにしている。
また、女性トイレだけでなく、男性トイレにもオムツ替えスペースを用意しているほか、ヨドバシカメラの玩具コーナーに、広めのベビールームを用意。カーテンで仕切られた授乳室のほか、子ども用トイレもあり過ごしやすい作りになっている。
同施設内に設けられた「スキッズガーデン」は保育士などの有資格者が子どもの遊びをサポートするため、3才以上の子どもがひとりで入場可能。こどもが遊んでいる間、保護者が買い物を楽しめるとする。入場は0歳から小学2年生までだ。
毎日来ても飽きない圧巻のスーパーマーケット。
惣菜・お弁当コーナーは通常店舗の4倍の面積ある。近隣オフィスワーカーのランチ利用を取り込む。
地下鉄駅直結の地下1階に、スーパーマーケットを配置。帰宅前の日常使い客を狙う。スーパーマーケット「ハーベスト」内の惣菜・お弁当コーナーは、寿司、揚げ物、カレーなど、ピーク時には約200種類用意する。
アマノフーズのフリーズドライ食品専門店「アマノ フリーズドライステーション」や、明治屋の体験型飲食物販店舗「明治屋PROVISIONS & WINES」など、ちょっとしたお土産を探すのに楽しい店舗も出店している。
カレーの量り売りもある。
スタバだけで3店舗も。カフェの数が多い店内。
スターバックスコーヒーは同施設内に3店舗ある。台湾ティーカフェ「ゴンチャ」が2店舗同時オープンするなど、買い物の休憩の場を意図的に多くつくっている。
建物内に自転車試乗コースも。
ヨドバシカメラ地下2階には坂道を含む全長120mの電動アシスト自転車試乗コースを常設。電動アシスト自転車の品揃えは関西最大級だ。子どもを乗せる自転車を買い求めるファミリーにはうれしい施設になっている。
また、リンクス梅田3階のフランフランの新業態店舗「U.F.O. by FrancFranc」がある。生活雑貨を中心にベビー・キッズ用品、ペット商品も取り扱う。通常のフランフランに比べて商品の入れ替えが頻繁なことから、電子棚札を利用している。
「ホテル阪急レスパイア大阪」も建物に隣接。
ホテルの開業は11月27日から。
(文・伊森ちづる、編集部 写真・伊森ちづる)