「国際送金をTechで格安に」600万人が使う天才ベンチャーTransferWise最新日本事情…「デビットカードは2020年夏」宣言

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TransferWise(トランスファーワイズ)の共同創業者であるクリスト・カーマン氏。

撮影:大塚淳史

格安の国際送金サービスとして日本でも注目を浴びるイギリス発のスタートアップ企業「TransferWise(トランスファーワイズ)」。共同創業者であるクリスト・カーマン氏が「香港FinTechWeek(フィンテックウイーク)」で取材に応じた。日本でのサービスの利用状況や今後等について聞いた。

世界70カ国以上、600万人以上が利用の国際送金サービス

公式サイトで紹介しているトランスファーワイズの国際送金の仕組み。

トランスファーワイズは2010年に創業した国際送金サービス。クリスト・カーマン氏と元Skypeのターベット・ヒンリクス氏が、海外送金手数料の高さや手間がかかることに疑問を感じて、サービスを立ち上げた。成功したベンチャーの卒業生がつくったという意味で、いわゆる「Skypeマフィア」企業だ。

従来の銀行と比べて、国際送金手数料は最大で銀行の約8分の1、送金日数も大幅に短く済み、海外送金を必要とするビジネスパーソンや、海外で働く人々から注目され、瞬く間に世界中で利用者を増やしていった。

現在では70カ国以上、600万人以上が利用する。日本でも2016年に正式にサービスを開始している。

「現在、トランスファーワイズを利用して毎月50億米ドル(約5430億円)が送金されています。日本においては、4年前にライセンス(資金移動業)を獲得してサービスを始め、それ以来、急速に需要が増えている。

アメリカ、ヨーロッパ、インドネシア、インドなどアジア諸国の人々が、日本で働く際に日本で銀行を(国際送金のために)使うのは簡単ではありません。

言葉の問題もありますから。また、日本の銀行では(国際送金する場合に)銀行の店舗に行くことや紙の書類を必要とします。こういう時は(言葉のサポートをする意味で)日本の友人を連れていって協力してもらうことになる」(カーマン氏)

日本では既に多くの外国人が働いている。外資系会社の日本法人であれば、例えば米ドルベースで給料をもらえることがあるかもしれないが、大半の日本在住外国人は日本円で給料を受け取る。彼らにとって、母国に送金するたびに手数料が多く取られるのは大きな負担だ。

日本に限らない問題で、海外で働く人々にとって、国際送金手数料は長年悩ましい問題ではあった。

日本では2020年夏を目標にデビットカードを開始予定

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トランスファーワイズのアプリ画面。

出典:TransferWise

トランスファーワイズにおける地域別ビジネス規模は、ヨーロッパが1位、アメリカが2位、3位がアジア。アジア地域における日本のボリュームは、シンガポール、香港と並んで大きなものだという。

そこで次に日本向けに準備しているのが、日常生活での利用に便利なデビットカードの開始だ。

「デビットカードはヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなどで既に始めていて、今日本で始めるために議論を重ねています。2020年夏を目標に(日本でのデビット参入を)準備しています」(カーマン氏)

トランスファーワイズのデビットカードはマスターカード加盟店であれば決済ができ、出金も可能だ。つまり、同サービス経由での国際送金を非常に簡単に日常生活で利用できるようになる。

トランスファーワイズの利用者の内訳を聞くと、興味深いことを教えてくれた。

「基本的には、ビジネス用途の送金、またフリーランサーの利用者も多いです。あとはexpat(国外在住者)やmigrant worker(移民労働者)ですね。また、仕事をリタイアした人たちの利用も多いです(温かい地域に移住したり、長期滞在する際の利用)。ヨーロッパの人々はそういう使い方をします。日本人でしたら、マレーシアとかタイとかですよね。その割合も少なくないです」(カーマン氏)

定年後にハワイや東南アジアなどに移住する日本人は少なくない。こういった人には便利なサービスなのかもしれない。

フリーランサーとして働く人にとっても有効だとカーマン氏は指摘する。

「例えば、あなたがオーストラリアの新聞で仕事をすることになった時、仮に給料がオーストラリアドル払いだったとしても、トランスファーワイズを使えば日本円で受け取れます」(カーマン氏)

円図を書いて、利用者の内訳がどのくらいの割合か聞いたら、写真のように書き込んでくれた。ただ、具体的なパーセンテージはとのことだった。

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トランスファーワイズの利用者層の内訳について、円を描いてカーマン氏に渡したところ、次のように書き込んでくれた。上から時計回りに「Business」、「freelance」、「expat」、「migrant」。具体的な数字は明かさなかったが、「だいたい図の通り」(カーマン氏)。ということは、ビジネスと国外在住者が大きい、ということだろうか。

撮影:大塚淳史

アジア市場に力を入れる

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香港フィンテックウイークで登壇した、TransferWise(トランスファーワイズ)のクリスト・カーマン氏(写真右)。

撮影:大塚淳史

トランスファーワイズにとってアジアは、ヨーロッパ、アメリカにつぐ市場だが、アジアの利用者が急増していることもあり、力を入れている。

11月6日には、インドネシアのGoPay、OVO、DANA、フィリピンのGCash、PayMaya、バングラデシュのbKashといった、東南アジア3カ国の主要なモバイルウォレットサービスと提携したことを発表。トランスファーワイズを通して、前記のサービスのユーザーに送金することができるようになった。

将来的に、LINE PayやPayPayといったサービスとの連携も今後あり得るのか。

「今回提携した国々と、日本、香港、シンガポールの状況とは異なります。例えば、インドネシアでは銀行口座を持たない人々も少なくない。そういった人たちにとって今回の提携(現地モバイルウォレットとの提携)は有用と思います。しかし、日本では既にほとんどの人が銀行口座を持っているので、(トランスファーワイズを介して)銀行口座でお金を受け取ることができます」(カーマン氏)

国際送金サービスはトランスファーワイズに限らず増えている。アリペイ香港(アリペイの中国大陸版ではない)が2018年に開始した、フィリピン向けの国際送金サービスは、送金の速さで注目を集めた。香港ではフィリピン人の“お手伝いさん”が多く働いていることから始めたサービスだと言われている。

競合に対する、トランスファーワイズの優位性は何なのか。

「費用、スピード、利便性の3つが強みです。手数料が低く、送金を24時間以内に済ませられる速さ、そして利用者にとって気軽に簡単に使うことができます」(カーマン氏)

日本で働く外国人はますます増え、逆に海外で働く日本人や、海外に移住する日本人が増えていくなか、トランスファーワイズのような国際送金サービスはますます需要が高まるはずだ。

さらに、フリーランスとして海外からの仕事を受ける、または海外にいながら日本の仕事を受けるといった働き方をバックアップする、一種の働き方改革のツールになっていくかもしれない。

(文、写真・大塚淳史)

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