鉄板カバーで香港「吉野家」厳戒態勢。放火される銀行。現在進行形の香港デモの“傷跡”

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香港の中心、チムサーチョイ(尖沙咀)からモンコック(旺角)を結ぶネイザンロード(彌敦道)。道路の障壁にはさまざまな今回のデモに関する言葉が書かれている。中には「自由は死せず」と日本語の書き込みがあった。

撮影:吉田博史

香港で警察とデモ隊の衝突が激化している。11月8日、建物から転落して重体になっていた学生が亡くなったことがきっかけだ。亡くなった学生は、警察が撃った催涙ガスから逃げる際に建物から転落したのではないかとされた。その追悼集会が8日夜に行われたが、原因とされる警察に怒りの炎が向けられた。

ここ数カ月、デモ隊によって破壊されたり、標的になっているのが、中国資本の飲食店や銀行、中国を支持を表明した人物が関わる店だ。デモ隊によって“親中派”認定されて破壊される例が増加している。また、地下鉄や列車も、デモ隊によって破壊されることが多くなった。香港の街のあちこちで見られる、傷ついた施設や店舗などの"傷跡"は、香港市民たちの現在進行形の痛みを物語っている。

デモ隊の標的にされる中国の銀行、されない香港の銀行。

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撮影:吉田博史

デモ隊に特に狙われているのが、中国に本社がある銀行。その中でも中国最大手の中国銀行はデモ隊にたびたび狙われている。香港各地にある店舗やATMは放火・破壊が相次いだ。銀行側も店の外壁を鉄板などで覆うなどして対策を講じているが、路面店では焼け石に水だ。中国銀行の隣には何事もないかのように営業している香港の銀行がある。

“シェルター化”した銀行その1

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撮影:吉田博史

板で覆って“シェルター化”した中国銀行の店舗。連日、被害にあっているが、香港在住の20代男性は「中国の銀行だから」と同情を示すことはなかった。

“シェルター化”した銀行その2。客がいるときだけ開く。

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撮影:吉田博史

同じく、南洋商業銀行もターゲットにされたのか、店舗を板で覆い尽くしていた。南洋商業銀行は香港で創業した地場銀行だが、現在は中国の投資会社の傘下に入っていることもあってか、銀行側は警戒したのかもしれない。営業の時はこのように扉を開けて客が中に入っていた。

FC展開する吉野家も敵認定でターゲットになった。

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撮影:吉田博史

吉野家もターゲットになってしまい、店舗によってはこのように“シェルター化”する羽目になった。デモ隊の標的になったきっかけは、吉野家をフランチャイズ展開する香港の外食大手・美心食品(Maxim's Caterers)の創業者の娘であるアニー・ウー(伍淑清)氏が、デモ隊に対する批判的な発言を行ったことだ。これで親中的な企業と認定されてしまい、傘下の吉野家などが破壊されてしまった。ただ、このように営業はしていた。


放火・破壊されたシャオミ香港旗艦店。

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撮影:吉田博史

香港のモンコック(旺角)にある、中国発の世界的大手スマホブランド「小米(シャオミ)」の旗艦店。10月に、デモ隊のターゲットになり、店内が破壊、放火された。大通りに面しているため、再びターゲットにされる恐れがあるが、11月上旬は修復工事の真っ最中だった。

店舗再開に向けて工事中のシャオミ店内。

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撮影:吉田博史

再開に向けた工事中のシャオミ旗艦店内部。デモが激しくなるまでは、香港人だけでなく外国人も多く訪れる人気の店舗だった。

MTRの駅出口も破壊。鉄板のガードが取り付けられた。敷設された。

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撮影:吉田博史

MTRのチムサーチョイ(尖沙咀)駅から地上につながる出口のいくつかは、デモ隊と警察の衝突のあおりを受けて、破壊されてしまった。この出口では、鉄板を取り付ける工事を行っていた。

駅構内まで及ぶ衝突。改札は壊されたままだった。

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撮影:吉田博史

デモ隊と警察の衝突は外だけでなく、MTRの駅構内にまで及んでいる。いくつかの駅では改札や券売機が壊され、中国の深センにつながる路線は鉄道まで放火される事態に。壊された改札はカバーで覆われて、修復を待っていた。

連日の衝突で、MTRの終電時刻が日々変化している。

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撮影:吉田博史

香港のMTRは衝突の激化をうけて、運営時間を短縮している。日によって、最終列車の時刻が異なるので香港市民はその都度確認しないといけない。この写真を撮影した11月8日金曜日はMTRの最終列車は午後11時半だったが、翌9日土曜日は事前に大規模デモの実施がわかっていたためか、午後10時が終電だった。

11月24日には香港区議会選挙の投票日

11月11日午前には、デモ隊参加者が警察に銃で打たれて重体となる事態が発生し、SNSでまたたく間にその瞬間の動画が拡散した。それ以降、香港各地でデモ隊と警察の衝突は、今まで以上に厳しくなっている。20代の香港人女性は「安全な場所? 今の香港にそんな場所があるの?」と嘆いた。

セントラル(中環)といったオフィス街でも、日中から催涙ガスが飛ぶ日がある。モンコックはほぼ毎日、日が暮れ始める頃から、火炎瓶、催涙ガス、レンガ、ゴム弾が飛び交うという危険なエリアになった。

また、香港中文大学では学生と警察がぶつかり合い、学生がバリケードを築いて大学に「籠城」し、警察が攻めてくるという構図になってしまっている。

中国の習近平国家主席も香港政府トップのキャリー・ラム(林鄭月娥)行政長官も、香港のデモ隊を厳しく非難しており、お互いに歩み寄る姿勢は全く見えてこない。

11月24日には香港区議会選挙の投票日が控えている。まだ、この混乱は続きそうだ。

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11月24日には選挙を控えるが……。

撮影:吉田博史

(文・吉田博史)

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