銃犯罪を減らすにはどうしたらいい?…成果を上げたアメリカ以外の銃規制

銃規制が効果を上げた国

David Gray/Reuters

  • アメリカでは、2019年に入ってから300件以上の銃乱射事件が発生。銃規制をめぐる議論が続いている。
  • 2019年11月14日には、ロサンゼルスの高校で起きた乱射事件で生徒2人が死亡した。8月には、同じ週末に2件の乱射事件が立て続けに発生。テキサス州エルパソのウォルマートで22人が死亡し、オハイオ州デイトンで9人が死亡した。
  • いくつかの国では、的を絞った戦略により、銃による暴力を食い止めるための対策がとられている。
  • 日本、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェー、イギリスの取り組みは、いずれもヒントになるかもしれない。

カリフォルニア州サンタ・クラリタにあるソーガス高校で11月14日、16歳の男子生徒が銃を乱射し、生徒2人が死亡、3人が負傷した。死傷者の5人はいずれも、14歳から16歳までの生徒だった。ロサンゼルス郡保安局のケント・ウェゲナー(Kent Wegener)警部によれば、犯行には45口径の半自動式拳銃が使われ、容疑者は自身を撃って重傷を負ったという。

2019年に入ってから、アメリカで起きた銃乱射事件は360件以上。つまり、1日に1件を超える乱射事件が起きているということだ。

8月には2件の銃乱射事件が続けて起きた。8月3日、テキサス州エルパソのウォルマートに銃を持った21歳の男が侵入し、22人が死亡、26人以上が負傷した。そのわずか13時間後には、オハイオ州デイトンでも、9人が死亡し27人が負傷する銃乱射事件があった。

こうした乱射事件が相次ぐなかで、銃規制をめぐる論争も起こっている。自分の住む街が次の乱射現場になるかもしれないと恐れるアメリカ人たちは、銃による暴力を減らすために、国としてどんな戦略をとればいいのかを考えている。

銃に関して、アメリカと同じ制度や歴史を持つ国はないが、それぞれの国がそれぞれの事情に合った有効な対策をとっている。この記事では、銃による暴力を減らす方法について、アメリカ以外の国から得られるヒントを紹介しよう。

オーストラリア:銃を政府が買い取った

オーストラリアのニューサウスウェールズ州警察の銃器改革プロジェクトマネージャーであるミック・ローランツ(Mick Roelandts)と、1997年7月のオーストラリアの銃買い取り計画で集まった4500丁の銃器の山。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州警察の銃器改革プロジェクトマネージャーであるミック・ローランツ(Mick Roelandts)と、1997年7月のオーストラリアの銃買い取り計画で集まった4500丁の銃器の山。

David Gray/Reuters

オーストラリアでは、1980年代と90年代に銃による暴力事件が相次ぎ、1996年には35人が死亡する事件が起きるに至った。それを受けて、ジョン・ハワード首相(当時)は、銃規制戦略を考案するための会議を招集した。

この会議で決定されたのが、大規模な買い取りプログラムだ。このプログラムにより、60万丁を超える自動式および半自動式銃とポンプアクション式散弾銃が買い取られ、破棄された。数億ドルにのぼる費用は、一時的な増税により補われた。

プログラム実施後の数年間で、銃による死者は半減した。銃による自殺者は、1995年には10万人あたり2.2人だったが、2006年には0.8人に減少した。銃による殺人は、1995年には10万人あたり0.37人だったのに対し、2006年には0.15人にまで減少した。

アメリカ全体で買い取りが実施されれば、4000万丁を超える銃が破棄されると考えられる。だが、州レベルで実施する場合は、それほど大規模にはならないだろう。

日本:とても厳しい審査が必要

日本では、とても厳しい審査が必要

Eric Talmadge/AP Images

銃の所持が法律で厳しく規制されている日本では、1億2700万人の人口がありながら、銃撃による死者が年間10人を超えることはほとんどない。

日本国民が銃を所持しようと思ったら、丸1日ほどかかる講習会を受講し、筆記試験を通過し、射撃試験でかなり高い精度を達成しなければならない。その後、病院での精神衛生検査と身元調査にパスする必要がある。身元調査では、犯罪歴や犯罪とのつながりが調べられ、友人や家族の聞き取り調査もおこなわれる。そして、購入できるのは、基本的に散弾銃か空気銃のみで、拳銃は購入できない。さらに、3年ごとに講習会を再受講し、所持許可を更新する必要がある。

ノルウェー:社会的結束と信頼の力を証明した

ノルウェー:社会的つながりと信頼の手本を示す

Wolfgang Rattay/Reuters

ノルウェーにおける国民100人あたりの銃の数は、アメリカのおよそ3分の1だ。そして、国民10万人あたりの銃による死者数はアメリカの約10分の1にとどまっている。

ノルウェーのモデルを研究する社会学者の知見によれば、国民と政府を結ぶ社会的つながりが、(おおむね)平和な社会の確保に大きく貢献しているという。たとえば、2015年の分析では、ノルウェーの警察による過去9年間での射撃件数の合計は、アメリカの警察の1日の件数よりも少なかった。

ノーザンミシガン大学の比較文化社会学者グミ・オッドソン(Gummi Oddsson)は、ノルウェー政府が地方自治体での信頼関係構築にかなりの力を入れていることを明らかにした。オッドソンがBusiness Insiderに語ったところによれば、アメリカの州でも、コミュニティー・ポリシングのような、法執行機関とコミュニティの連携に重点を置いた取り組みにより、信頼感を強められる可能性があるという。つまり、警察に対する市民の安心感が強まれば、警察が管轄地域をより把握できるようになり、問題が起きる前に未然に対応できる、という考え方だ。

イギリス:多面的なアプローチ

イギリス:多面的なアプローチ

Reuters/Andrew Yates

イギリスは、ノルウェー、オーストラリア、日本の政策の要素を組み合わせたアプローチをとっている。

オーストラリアが銃規制を実施したのと同じころ、イギリス議会は民間人の拳銃所持を禁止する法律を成立させた。半自動式銃とポンプアクション式銃器の所持も全国的に禁止され、散弾銃の所有者には、銃器の登録が義務づけられた。また、2億ドル規模の買い取りプログラムでは、政府が国民から16万2000丁の銃と700トンの弾薬を買い取った。

世界の銃規制に関連したデータを公開しているサイト「ガンポリシー・オルグ(GunPolicy.org)」の推定によれば、2010年の時点で、イギリスには100人あたり3.78丁の銃が存在していた。それに対して、アメリカでは100人あたり101丁が存在していると見積もられている。

その結果、人口が合わせて5600万人のイングランドとウェールズでは、銃による死者数が年間50~60人ほどにとどまっている。それに対して、人口およそ6倍のアメリカでは、銃に関連する殺人はその160倍にものぼっている。

ニュージーランド:オーストラリアと同様の政策

クライストチャーチで起きた銃乱射事件後に記者会見を開くニュージーランドのジャシンダ・アーデーン首相。2019年3月。

クライストチャーチで起きた銃乱射事件後に記者会見を開くニュージーランドのジャシンダ・アーデーン首相。2019年3月。

Hagen Hopkins/Getty Images

ニュージーランドはつい最近になって、半自動式ライフルの禁止を制定した。きっかけになったのは、2019年3月にクライストチャートで起きた、死者51人、負傷者数十人に上る銃乱射事件だ。この事件では、白人至上主義者を自称する容疑者が、金曜礼拝中の2つのモスクを半自動式銃で襲撃した。

ニュージーランドのアーデーン首相は記者会見で、「3月15日に、われわれの歴史は永久に変わった。今度は、われわれの法律が変わる」と語った。

「すべてのニュージーランド国民の代表として、銃規制法を強化してわが国を安全な場所にするための対策をただちに発表する」

乱射事件から6日後、アーデーン首相は半自動式銃などを禁止する銃規制強化を発表した。ニュージーランド・ヘラルドによると、9月12日現在で、およそ10%にのぼる銃が回収されたという。

1万2000人を超える国民が、約2万丁の銃器と7万5000個の部品を提出し、およそ2300万米ドル相当が支払われた。AP通信によれば、11月10日現在で、3万6000丁の銃器と13万2000個の部品が回収されたという。

アメリカでは、銃規制に反対するロビー団体の影響力が強いため、殺傷力の高い武器を全国的に禁止する対策はうまくいかないだろうと専門家は指摘している。そうしたロビー団体は、これまで何度も銃規制法を頓挫させてきた

マイアミ大学で政治学を研究するグレゴリー・コーガー(Gregory Koger)教授はBusiness Insiderに対して、「ニュージーランドにはNRA(全米ライフル協会)はない。銃規制に対して、組織的かつ執拗に反対する、銃所持者と銃製造会社からなる組織は存在しない」と語った

ニュージーランドは11月11日、犯罪歴のある人物が、銃の置かれた場所(自宅、職場、自動車など)に近づくことを禁じる制度の導入も発表した。AP通信によれば、この制度が導入されれば、警察による令状なしの捜索が可能になり、人権に抵触する可能性があるという。

この案は、「結社の自由や推定無罪の権利など、ニュージーランドの法律で守られている別の人権をめぐる疑問を生んでいる」と、APのニック・ペリー(Nick Perry)は伝えている

[原文:Two students were killed in a school shooting in Los Angeles on Thursday — here are 5 countries that have taken radical steps to eliminate firearm deaths

(翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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