民泊サービス「Airbnb」は、東京五輪以降のオリンピック最上位スポンサーとなる。
撮影:西山里緒
民泊仲介サイトAirbnbは11月18日(日本時間)、国際オリンピック委員会(IOC)とのパートナーシップを締結し、2028年までの五輪の最上位スポンサー(TOP)となったことを発表した。フィナンシャル・タイムズの報道によると、契約金は5億ドル(約540億円)にのぼるという。
9年間、5大会のスポンサー契約
記者会見に登壇した、Airbnb Japan代表取締役の田邉泰之氏(右)とレスリング女子五輪3連覇の吉田沙保里さん。
撮影:西山里緒
「Airbnbでは、もしかしたら一生に一度になるかもしれないホスト国として、五輪への新しい参加方法を提案したい。五輪が終わった後も交流や観光が続くという、ポジティブなレガシーを残せれば」
11月19日、都内で開かれた会見に登壇したAirbnb Japan代表取締役の田邉泰之氏は、誇らしげにそう宣言した。
会見では同時に、IOCとAirbnbが共同で提供する新たな体験カテゴリ「オリンピアンによる体験」プログラムも発表された。オリンピアン(五輪出場経験者)や他のアスリートやスポーツコミュニティらがホストとなってスポーツ体験を提供する。
ともに登壇したレスリング女子五輪3連覇の吉田沙保里さんもこう盛り上げた。
「私の知り合いや後輩でも、競技が終わった後のセカンドキャリアに悩んでいる人をよく見てきました。(このプログラムがあることで)彼らの活躍の場も広がりますし、オリンピアンに限らずアスリート全体として、さまざまな人に触れ合うすごくいい機会になると思います」
最高位スポンサーは、11月18日時点でコカ・コーラ、アリババ、インテルなど計14社。日本企業は、トヨタ、ブリヂストン、パナソニックの3社だ。名だたる世界的な大企業の中に、未上場のベンチャーAirbnbが新たに名を連ねた格好だ。
Airbnbがスポンサーとして支援する大会は今後も含めて、2020年東京五輪、2022年北京冬季五輪、2024年パリ五輪、2026年ミラノ・ コルティナダンペッツォ冬季五輪、2028年ロサンゼルス五輪の5大会で、開催都市は、いずれもAirbnbがすでに普及している都市だ。
会見では、五輪におけるAirbnbが提供できる価値として、ファミリー向け、長期滞在者向けなど、宿泊者のさまざまなニーズに対応できる点が強調された。これにより、需要逼迫への対応、大会主催者によるコスト低減や宿泊施設の新築抑制、地元ホストへの直接収入などを見込んでいるという。
Airbnbが五輪に力を入れる背景には、前大会・リオデジャネイロ五輪の際のAirbnbの大きな躍進がある。
創業11年で“異例”の抜擢
2019年11月18日時点での、五輪最上位スポンサーの一覧。
画像:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
Airbnbは2008年創業で、未上場のベンチャーだ。他の最上位スポンサーのほとんどが数十年の歴史を持つ企業であることからも、今回の提携の“異例さ”が伺える。
一方でここ数年、IOCはスポンサーに関して苦難に直面している。
CNNの報道によると、2016年のリオデジャネイロ五輪後、AT&T、シティグループ、ヒルトンの各社がUSOC(米オリンピック委員会)のスポンサーを降板。2017年にはバドワイザーとTDアメリトレードも契約更新を見送っている。
さらに2017年には、30年以上にわたってスポンサーを務めてきたマクドナルドが契約期間の満了を待たず、IOCとの契約を打ち切るなど、大手スポンサーの降板が相次ぐ。Airbnbのような新興産業の五輪への関わりは、「五輪離れ」に苦しむIOCの“頼みの綱”である背景も透けて見える。
公式発表によると、会期中にリオでAirbnbのサービスを利用した人は8万5000人に達し、宿泊施設のホストが得た収益は約30億円となった見通し。ホストの大半が初めてAirbnbを利用した人で、ブラジル国内におけるAirbnbの物件数はリオ五輪の1年間だけで10万件に倍増したという。
国際的なスポーツの祭典とAirbnbの親和性の高さは、11月2日に閉幕したラグビーワールドカップ2019でも証明されている。開催期間中に全国での宿泊者数が前年同期比約1.5倍の65万人となり、12開催地でAirbnbを利用した宿泊者数が同じく前年同期比で2倍以上となる110%増の37万人であったことを発表している。
(文・写真、西山里緒)