Airbnb Japan代表取締役の田邉泰之氏は11月19日、Business Insider Japanの単独インタビューに答えた。
撮影:西山里緒
「(Airbnb共同創業者兼CEOの)ブライアン(・チェスキー)に五輪の関係者が話を持っていった時、彼は『こんなん考えんでもやらなあかんよ(This is no brainer)』と言ったそうなんですよ」
Business Insider Japanの単独インタビューで、Airbnb Japan代表取締役の田邉泰之氏は関西弁を飛ばしながら、そう豪快に笑った。
民泊仲介サイトAirbnbは11月18日(日本時間)、国際オリンピック委員会(IOC)とのパートナーシップを締結し、2028年までの五輪の最上位(TOP)スポンサーとなったことを正式発表した。
田邉氏の話から見えてくるのは、一般の人による「民泊」というビジネスを復権させたい、というAirbnbの悲願だ。
「安く泊まれる」からの転換
11月19日の会見では、レスリング女子五輪3連覇の吉田沙保里さんらも登壇した。
2008年にサンフランシスコで創業したAirbnbは、シェアリングエコノミーの潮流に乗り、日本でもその市場を拡大させていった。
しかし日本では、2018年6月15日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行。民泊ホストになるためには政府への届け出が必要となり、その手続きの煩雑さから、一時期は物件数が激減。報道によると8割方の物件数がサイトから削除されたという。
こうした背景から、Airbnbは日本戦略の転換を余儀なくされた。ソフトバンクなどの国内企業らと「Airbnb Partners」と名付けたプラットフォームを立ち上げ、企業をホストにすることで物件数の拡大を狙った。
同時に、グローバルでは体験やラグジュアリーといったキーワードに焦点を定め「テクノロジーを駆使して安く手軽に泊まれる」から「特別でユニークな体験ができる」というイメージへ、Airbnbの打ち出し方をシフトさせていった。
その結果、2019年6月時点では民泊新法による落ち込みから回復し、過去最高の室数をマークしているという。
さらに日本にとって追い風となったのは、営業許可がなくても一時的に宿泊サービスができる「イベント民泊」制度だ。
Airbnbと自治体が協力することで、ホストの届け出手続きを簡素化。11月2日に閉幕したラグビーワールドカップも各自治体がこの制度を活用したといい、開催期間中に全国での宿泊者数が前年同期比約1.5倍の65万人になったという。
活用方法は未知数か
オリンピックという、最高峰に有名な国際的なスポーツの祭典に「イベント民泊」を活用しない手はない —— 。
東京五輪まですでに1年を切ったタイミングでスポンサーを“ねじ込ませた”背景には、民泊新法の煽りでくじかれてしまった「気軽に誰でも民泊ビジネスができる」という本来のコンセプトを復活させたい、Airbnb Japanの思いも透けて見える。
プロの事業者でなくても、ホストとして民泊ビジネスの担い手になれる。それこそが、Airbnbのようなシェアリングエコノミーサービスの真髄だからだ。
一方で、どのように五輪と提携し、どのようにスポンサーとしての肩書きを活用していくのか?という質問に対しては、具体的な回答は得られなかった。「イベント民泊」を活用する自治体とも交渉が続いているというが、11月20日の時点で発表している自治体はまだゼロだ。
それでも、イベントを通じた“日本型民泊”への光明が見えた田邉氏は自信にあふれていた。
「スタートアップですからね、毎年、いや毎日、突貫工事ですよ(笑)」
(文・写真、西山里緒)